74 / 77
【第九章】この国の未来のためにできること
72.この国の未来のためにできること(4)
しおりを挟む
「ねぇ、金も銀も、装飾品もドレスもないの? 贅沢できないなんて、死んだほうがマシよ! 私は全てを抱えたまま死を選ぶわ!」
ソフィアは高らかに笑う。
「……貴方、本当に救いようのない馬鹿なのね。この国の宝石は全て借りもの。決して貴方のものになることはないのよ? 処刑台にはボロ布のような服を着てもらうし、貴方がドレスを着ることも宝石を抱えることも金輪際ないわよ?」
私は本当のことを告げる。
最初、ソフィアは冗談だと思っていたのだろう。
この小娘の姿であるアナスタシアが革命をするなんて、思いもしなかったのだろう。
「……さぁ、ソフィア。貴方はただのソフィア。王妃でも男爵令嬢でもなんでもない、ただの人として生きるか、それとも――」
私はにっこりと笑った。
「今のアーさん、ちょっと悪役令嬢っぽいです」
「ちょっと黙ってて。頑張って演技してるんだから」
ちゃちゃいれるカンパネラの頭をぺしっと叩く。
「私は――死ぬわ! 平民に落ちるなんてまっぴらごめん! ドレスが着れないのも、宝石をつけられないのも、固いパンを食べる生活をするのもまっぴらごめん! そんな生活をするなら、私は死を選ぶわぁ! あは、はは、ははははははははっははははははははっ――はぁっ……げほ、ぁ……はははっはははは!」
「そう。貴方はそういう人だったわね」
ソフィアは断頭台へ。
私は衛兵に頼んで、ソフィアを別の部屋に連行してもらった。
「さて、エドアルト。貴方はどうする?」
ソフィアの狂った笑い声を聞きながら、エドアルトは汗を垂らして床をじっと見ていた。
「……この床も、手入れをしてくれる者がいるから、この部屋は綺麗なんだな」
「ええ。そうよ」
「野菜を作ってくれる農民がいて、それを料理してくれる者がいるから、俺は美味しい食事を摂ることが出来た。服だってそうだ。布をつくる者、編む者がいて、縫うものがいて、仕立てられ、俺たちの元に届く。この国には働く民がたくさんいて、その民が王族の生活も支えてくれていたんだな」
「……ええ。貴方はそんな彼らにどんな仕打ちを与えた? 国税を上げて、飢餓で苦しむ者もいた。早期に薬を服用すれば治る些細な病気に罹って亡くなる人もいた。薬が高くて買えなかったからよ?」
私は今まで見てきた、ありのままの国の状況を彼に伝える。
「貴方がソフィアに送った金品で、何百人の国民が飢えずに済んだ。国王になって慢心して、国のことを全く見てなかったんじゃないの?」
その時、エドアルトの足元に、ぽたりと一滴の雫が落ちた。
「あぁ……そうだな。そうだ。俺は王になって、浮かれていた。王は偉いんだと慢心して、ソフィアと遊び歩いた。何もかもが思い通りになって楽しかったが――それは、俺とソフィアだけだったんだ。たくさんの民に、俺は目を向けなかった。民の期待を、俺は全て裏切り続けた」
雫は、涙だった。
エドアルトは歯を噛み締めて、ときに嗚咽をこぼしながら、涙を流していた。
「なぁ、どうすればいいんだ、アナスタシア。俺は死んだほうが良いのか? それとも生きて償ったほうがいいのか?」
エドアルドは涙でびしょ濡れになった顔を上げた。
――あぁ、この顔は幼い頃の彼の顔と同じだった。
兄と比べて剣がうまく振れなかったエドアルトは、いつも悔し泣きをしていた。
そして『俺は剣を習い続けてもいいのだろうか?』と私に聞いてきた。
私はその時と同じ言葉を返す。
「大切なことは、貴方が、貴方自身で決めなさい」
すると、彼の翡翠色の瞳が揺らいだ。
涙でびしょ濡れの顔で、彼は微笑んだ。
「……アナスタシア。あぁ、俺の好きだった、アナスタシアだ」
彼は独り言のように呟いた。
「……婚約破棄の件は悪かった。俺はどうかしていた。あんな公衆門前で傷つけて、本当に、酷い目に合わせてしまった。お前はいつも正しかったのに、俺はいつもなにもうまくいかない」
彼は嗚咽をこぼしながら、ゆっくりとゆっくりと語る。
「そんなことないわ。貴方は努力ができる人だもの。私はいつも言ったわよね。努力できる人は、きっといつか何かを成し遂げると」
私は彼の頬に触れた。涙でぐしゃぐしゃに濡れた頬に。
彼は翡翠色の瞳で、まっすぐ私を見つめて言った。
「そうだな。そんなことも言ってくれてた。アナスタシアはいつも、俺に厳しかった。でもそれは優しさから来ていたんだな。そんなお前が好きだったのに、お前にもっと好きになってほしくて、嫉妬してほしくて、ソフィアに手を出して……そうしたら……いや、もうこれは言い訳だな……。俺はお前、いや、貴方を、アナスタシアを幼い時より愛していた。それに気づくまでに、こんなに時間をかけてしまった……」
「……本当に、おばかさん」
私は彼の頬を撫でる。
けれどもう語らう時間は終わり。
彼の想いは十分に受け取った。
「……エドアルト、もう一度聞くわ。貴方は、王族というプライドを残したまま死ぬ? それとも、全てを剥奪され、ただの名のない人になってでも生きることを選ぶ?」
「俺は――私は――生きる!」
エドアルトは大きな声で、ハッキリと宣言した。
「私は今まで見てこなかった国民を見る。彼らの苦労を知る。そして、私は生きて、生きて、地獄のような罪悪感に苛まれながら、この国のために、民のために償っていく!」
彼の瞳は本気だった。
あぁ、エドアルト。
最後の最後に気づいてくれた。
一瞬でも好きだったエドアルト。
貴方が元の貴方に戻ってくれたことが、私はとても嬉しい。
人は変わることができる。エドアルトはこれから変わっていくだろう。
でも、その一方で変われない人、変わらない人もいる。――ソフィアのように。
「では。カンパネラ王。エドアルトからは身分を剥奪し、国外追放を。……ソフィア元王妃には残念ですが、斬首の用意のため、王族を罰するための塔へ暫く幽閉させていただきます」
カンパネラは頷いた。
この国の革命は始まったばかり。
さぁ、ここからは国民を納得させなければいけない。
まだまだやることは山積みだ。
でも、私は国に関われることが嬉しい。
今まで助けられなかった人を、助けることができるから。
私がカンパネラと国を治す。そして、治すだけじゃなく、良くする。
そのためにはどんな努力も惜しまない。
600年分の妃教育の結果を披露してあげましょう。
ソフィアは高らかに笑う。
「……貴方、本当に救いようのない馬鹿なのね。この国の宝石は全て借りもの。決して貴方のものになることはないのよ? 処刑台にはボロ布のような服を着てもらうし、貴方がドレスを着ることも宝石を抱えることも金輪際ないわよ?」
私は本当のことを告げる。
最初、ソフィアは冗談だと思っていたのだろう。
この小娘の姿であるアナスタシアが革命をするなんて、思いもしなかったのだろう。
「……さぁ、ソフィア。貴方はただのソフィア。王妃でも男爵令嬢でもなんでもない、ただの人として生きるか、それとも――」
私はにっこりと笑った。
「今のアーさん、ちょっと悪役令嬢っぽいです」
「ちょっと黙ってて。頑張って演技してるんだから」
ちゃちゃいれるカンパネラの頭をぺしっと叩く。
「私は――死ぬわ! 平民に落ちるなんてまっぴらごめん! ドレスが着れないのも、宝石をつけられないのも、固いパンを食べる生活をするのもまっぴらごめん! そんな生活をするなら、私は死を選ぶわぁ! あは、はは、ははははははははっははははははははっ――はぁっ……げほ、ぁ……はははっはははは!」
「そう。貴方はそういう人だったわね」
ソフィアは断頭台へ。
私は衛兵に頼んで、ソフィアを別の部屋に連行してもらった。
「さて、エドアルト。貴方はどうする?」
ソフィアの狂った笑い声を聞きながら、エドアルトは汗を垂らして床をじっと見ていた。
「……この床も、手入れをしてくれる者がいるから、この部屋は綺麗なんだな」
「ええ。そうよ」
「野菜を作ってくれる農民がいて、それを料理してくれる者がいるから、俺は美味しい食事を摂ることが出来た。服だってそうだ。布をつくる者、編む者がいて、縫うものがいて、仕立てられ、俺たちの元に届く。この国には働く民がたくさんいて、その民が王族の生活も支えてくれていたんだな」
「……ええ。貴方はそんな彼らにどんな仕打ちを与えた? 国税を上げて、飢餓で苦しむ者もいた。早期に薬を服用すれば治る些細な病気に罹って亡くなる人もいた。薬が高くて買えなかったからよ?」
私は今まで見てきた、ありのままの国の状況を彼に伝える。
「貴方がソフィアに送った金品で、何百人の国民が飢えずに済んだ。国王になって慢心して、国のことを全く見てなかったんじゃないの?」
その時、エドアルトの足元に、ぽたりと一滴の雫が落ちた。
「あぁ……そうだな。そうだ。俺は王になって、浮かれていた。王は偉いんだと慢心して、ソフィアと遊び歩いた。何もかもが思い通りになって楽しかったが――それは、俺とソフィアだけだったんだ。たくさんの民に、俺は目を向けなかった。民の期待を、俺は全て裏切り続けた」
雫は、涙だった。
エドアルトは歯を噛み締めて、ときに嗚咽をこぼしながら、涙を流していた。
「なぁ、どうすればいいんだ、アナスタシア。俺は死んだほうが良いのか? それとも生きて償ったほうがいいのか?」
エドアルドは涙でびしょ濡れになった顔を上げた。
――あぁ、この顔は幼い頃の彼の顔と同じだった。
兄と比べて剣がうまく振れなかったエドアルトは、いつも悔し泣きをしていた。
そして『俺は剣を習い続けてもいいのだろうか?』と私に聞いてきた。
私はその時と同じ言葉を返す。
「大切なことは、貴方が、貴方自身で決めなさい」
すると、彼の翡翠色の瞳が揺らいだ。
涙でびしょ濡れの顔で、彼は微笑んだ。
「……アナスタシア。あぁ、俺の好きだった、アナスタシアだ」
彼は独り言のように呟いた。
「……婚約破棄の件は悪かった。俺はどうかしていた。あんな公衆門前で傷つけて、本当に、酷い目に合わせてしまった。お前はいつも正しかったのに、俺はいつもなにもうまくいかない」
彼は嗚咽をこぼしながら、ゆっくりとゆっくりと語る。
「そんなことないわ。貴方は努力ができる人だもの。私はいつも言ったわよね。努力できる人は、きっといつか何かを成し遂げると」
私は彼の頬に触れた。涙でぐしゃぐしゃに濡れた頬に。
彼は翡翠色の瞳で、まっすぐ私を見つめて言った。
「そうだな。そんなことも言ってくれてた。アナスタシアはいつも、俺に厳しかった。でもそれは優しさから来ていたんだな。そんなお前が好きだったのに、お前にもっと好きになってほしくて、嫉妬してほしくて、ソフィアに手を出して……そうしたら……いや、もうこれは言い訳だな……。俺はお前、いや、貴方を、アナスタシアを幼い時より愛していた。それに気づくまでに、こんなに時間をかけてしまった……」
「……本当に、おばかさん」
私は彼の頬を撫でる。
けれどもう語らう時間は終わり。
彼の想いは十分に受け取った。
「……エドアルト、もう一度聞くわ。貴方は、王族というプライドを残したまま死ぬ? それとも、全てを剥奪され、ただの名のない人になってでも生きることを選ぶ?」
「俺は――私は――生きる!」
エドアルトは大きな声で、ハッキリと宣言した。
「私は今まで見てこなかった国民を見る。彼らの苦労を知る。そして、私は生きて、生きて、地獄のような罪悪感に苛まれながら、この国のために、民のために償っていく!」
彼の瞳は本気だった。
あぁ、エドアルト。
最後の最後に気づいてくれた。
一瞬でも好きだったエドアルト。
貴方が元の貴方に戻ってくれたことが、私はとても嬉しい。
人は変わることができる。エドアルトはこれから変わっていくだろう。
でも、その一方で変われない人、変わらない人もいる。――ソフィアのように。
「では。カンパネラ王。エドアルトからは身分を剥奪し、国外追放を。……ソフィア元王妃には残念ですが、斬首の用意のため、王族を罰するための塔へ暫く幽閉させていただきます」
カンパネラは頷いた。
この国の革命は始まったばかり。
さぁ、ここからは国民を納得させなければいけない。
まだまだやることは山積みだ。
でも、私は国に関われることが嬉しい。
今まで助けられなかった人を、助けることができるから。
私がカンパネラと国を治す。そして、治すだけじゃなく、良くする。
そのためにはどんな努力も惜しまない。
600年分の妃教育の結果を披露してあげましょう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる