落ちこぼれ兵士の僕が女子高生の幽霊に助けてもらうのはダメですか?

エリーゼ

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国立魔法兵士学園編

第18話 終幕

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銀製の槍の火力は恐ろしく、レオナの一撃に匹敵する。決して余所見《よそみ》のできない激闘が一瞬の緩みも与えられずに繰り広げられていた。

「その無駄のない所作嫉妬してしまうほどに美しいですね。八体の子供達(ジャバウォック)の力を借りても尚隙を作らない胆力さには参ってしまいます」

 もはや自分よりも強者であることを認めてしまっている発言。本来ならばそれは負けを意味するものになるのだが、サガは至って自らのスタンスを変える姿勢を見せない。それはレオナが背後に控えているカナタとアカネを守るため、嵐のように迫り来る攻撃を防ぐ事で手詰まり状態だからだ。

 故に今行われている闘いはレオナの体力が底をつくまで行われる消耗戦。サガの狙いは明確だ。

 ————しかしレオナも1人の人間。長時間何重にも同じ動作を繰り返すことを強制されれば、いつしか綻んでしまう。放たれた強靭な刃は僅かに狙いが逸れ、コンクリートの壁に衝突すると。死線を免れた3匹のジャバウォック達がレオナの背後を掻い潜る。

「しまっ—————」

 急いで体を反転させて半月の斬撃を放とうとするも、残り5匹の黒狼とサガの猛攻は途切れることなくレオナに襲い掛かる。

「ようやく貴方から奪い取れた好機。逃しはしません」

 本能的にサガ達による攻撃を防ぐも、その間にジャバウォック達はカナタとアカネに向かって猛進する。



「——————アル・ウィンド」



 この場にいる全員が眩く光る白光に視界を遮られた瞬間、放たれたジャバウォック達は無惨な屍となってその姿を現した。

「なにが、起こって」

 光源の先に立っていたのは先ほどまで血反吐を撒き散らしながら、その醜態を晒していたカナタ本人だった。

「え—————君‥‥その体」

 青く痣になっていた腕も、顔中から爛《ただ》れていた血傷も。彼が今救世主としてここにきたと錯覚するほどに綺麗さっぱり消え失せていた。驚愕するレオナ、唖然とするサガに、呻めき声を鳴らすジャバウォック。しかしそれらの姿は捉えられても、声がカナタの耳に届くまではいかなかった。全身に熱を帯び、モスキート音のような耳鳴り、高速に刻まれる心臓。今カナタは自分自身の存在をこの身に感じ取るだけで精々なのだ。

 身体中が痛い、今この場に倒れ込んでしまえば確実に気絶する。頭痛も酷い、今まで味わったことのない苦痛だ。
 
 頭を抑え、心中で悶絶するカナタの頭に馴染みのある声が反響する。

—————気をしっかりもって

—————君の心がまだ加護の力を拒もうと反発してる。心を落ち着かせて、私に身体を委ねて。

 カナタは瞼を閉じて、忠告通り全ての意識を心の中に集中させる。すると鼓動は少しずつ微弱になり、燃え尽きそうな体も鎮火されていく。

 目の前の景色が、音が、カナタの意識が段々と覚醒していくと。新しい世界がカナタの前に広がった。

「カナタ、君?」

 そこには体が埃まみれになっているペンドラゴンさんがいた。先ほどまで神々しかった彼女が少しだけ、僕と同じく血を通わせる人間に見える。

「ご迷惑をお掛けしました。レオナちゃん」

「え?」

「あ」

 思わず口を手で抑える。極限の瀕死状態で頭が狂ったのか、ありえない言葉を口から走らせた。

「すみません。ペン‥‥ドッ‥‥レオナさん」

 何故だろう。思ったように喋ることができない。やっぱりこれも死にかけたからなのか?いや、アカネが言っていたなのかもしれない。

「君大丈夫なの?さっきまで大怪我してたんじゃ。いやそれよりもさっきの技—————」

「継承の儀式‥‥‥何故それを君が?いや、彼女が」

 今まで戦闘中においても冷静であったサガが珍しく動揺を見せていた。

「彼女の言っていた子とはではなくこの子だったのか?だとしても————」

—————放っちゃおう!

「え?あ————アル・ウィンド!」

 意図せず放たれた風刃はレオナの真横を通ってサガに直撃すると、握られた鉄槍が落ちるとともに、2本の片腕も千切れる。

「先ほどまで、あの少女にここまでの威力はなかった。なるほどつまり君が‥‥そうですか、尚更貴方を殺さなければなりませんね」

 サガは即座に2本の腕を複製すると、レオナを無視してこちらに突撃する。

「待って」

 しかしレオナも敵の自由勝手を許すわけもなく、鋭い斬撃をサガの背後目掛けてぶっ放した。

「—————ッ!」

「カナタ君、色々聞きたいことがあるけど。まずはこの化け物を始末しよっか。さっきの攻撃で狼たちは倒せられる?」

「は、はい!大丈夫ですっ!任せて下さい!」

 ちらりとだけこちらを振り返ると、かすかに微笑みながら顎を引いて頷いた。

「怪物”六手のサガ”。本気で、貴方を殺す」

 黄金の剣を天に掲げると、夜の月が彼女を祝福するかのように、月光がその身に集約される。

「————困りましたね。先ほどまで将棋で言う歩の駒にすらならなかった君が、いつのまにか金に匹敵する力を手に入れたことで。一気に詰みかけられてますよ」

 サガは一度沈黙を決めると、青白に光輝く彼女の剣を凝視する。

「やはり力を抑えていましたか、最初から私に勝ち目はなかった。君の登場が全てを狂わせましたよレオナ・ペンドラゴン。いつか、またいつか。貴方と巡り合う時が来たら————その時は必ず」

 極光が夜を一瞬にして世界を真昼に変えると同時に、大気が、地面が振動を帯びながら解き放たれる。

 その剣撃にサガは一切の抵抗を見せずに飲み込まれると、路地一帯を—————否、街全体を暴風が吹き荒れる。

 そしえたった今、永遠に思われた絶望は、雌雄を決してその幕を下ろす






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