読めない彼女の心情

わらび餅

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10.不登校 後半

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着くとそこは、二階建ての一軒家だった

「あら、透のお友達?」

インターホンを押すとお母さんらしき人がでてきた

「はい、クラスメイトの如月 斗真と千東 秋です
テスト結果をもってきたんですが」

会ったこともないのによくも堂々と友達と言えるとかものだ

と秋は、無表情ながらに思った

「あらあら、まあまあ
お友達が来るのなんていつぶりかしら
どうぞあがって」

そう言うとすぐに黒塗りの扉が開く

(プリントだけ渡して帰るつもりだったのですが…)

そのまま、あれよあれよと言う間に二階の透くんの部屋という扉の前まで連れていかれた

「あの子ずっと、ここから出ようとしないの
テストとかがあると仕方がなくって感じで出て来るんだけど
でも、あなた達が呼び掛ければ反応するかもしれないわ
よろしくね」

そう言うとどこかへ行ってしまった

(なにを期待しているのか知りませんが私は、彼をここから出す気などもうとうありません)

そもそも、あかの他人である彼等にそんなことできるはずもなく

「おーい、蔵木
テストの答案もってきたぞ
ここ、開けろー」

(ああ、そうでした
この人は、そういう人でしたね)

どうやら斗真は、彼をここから引きずりだす気らしい

「誰だ、あんたら」

まあ、普通そうなるだろう

唐突に知らない人間が自宅まで押しかけてきているだから

「クラスメイトになった如月 斗真と千東 秋だ
よろしくな」

「なにが、よろしくだ
僕は、ここから出るつもりはない
さっさと帰れ」

ふむ、友好的とは、言えないな
まあ、いきなり家に押しかけたのだから無理はない

「どうせ、お前ら先生に言われてきたんだろ?
それとも母さんか?
本気で話しも聞かないくせに」

どうやら今までにもこんなことがあったらしい

「そう言わずにさ
来てみたら楽しいかもだろ、学校」

まあ、先生に言われてというのは事実なのだが

「そんなわけないだろ!
クラスの奴らだって僕のことなんて望んじゃいない」

「そんなことないって
お前を想っている奴だって」

「お前に、なにがわかる
僕は、誰にも必要とされない
存在すら認識されない」

透が声を張り上げる

「僕のことなんて誰も愛さない!」

…………………

「でしたら、なぜやめないのですか?」

数秒の静寂の後、最初に口を開いた他の誰でもない秋だった


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