聖騎士と眠りの魔女 ―ダブルワーク女子は抱き枕の身代わり―

uca

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宿場街グロムで迷子になりました

6.

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「まじない素材ってあれかね? 渋実柑とか、螺旋爽草とか?」
「そうです」

 八百屋を営むイロナの母親は腕組みをして溜め息をついた。がっしりと厳つい体格に彫りの深い気難しげな顔つきだが灰青色の目や人がよく親切なところは娘とよく似ている。

「近ごろ入ってこないんだよねえ」

 まじない素材の中でも稀少なものの多くは、砦近くのピネッキ魔境、中でもシーララ山に棲息する動植物からつくられる。シーララ野猪や碧杖鹿のまじない素材にする部位を除いた肉、螺旋爽草などは食用にされる。
 まじない素材になるものは薬効もあって乱獲されてしまう。だから保護地域でもあるピネッキ魔境の保全は第三聖騎士団のだいじな業務のひとつだ。狩猟や保全の実務を担当する狩人の組合もピネッキ砦にある。

「首都ではまじない素材が手に入らなくて困っていたんですけど、こちらでも同じなんですね」
「狩人組合は閑古鳥かんこどりが鳴いてるっていうね。魔物がとれなくなってるんだとか」
「そうなると……」

 砦を出てサルケ市場までまじない素材を探しに来たが、稀少素材については砦に戻って魔物狩人組合に問い合わせをするのがよさそうだ。エステルは徒足むだあしを踏んだことになる。

「残念だったね。必要なのは珍しい素材だけかい? 枕っていうとほら、綿とかも要るだろ?」
「そうなんですけど、今のところ顧客がおひとりだけなので小口で注文するのが憚られます」
「うちは冬場はラホンダとか首都近くから野菜や果物を仕入れる。出入りの商人についでに持ってこられないか、聞いてみようか」
「助かります」
「いいんだよ。第三聖騎士団のおかげで魔境近くに住んでいてもあたしたちゃ、枕を高くして眠れるんだからね。この前の呪いの暴走は酷かったよ。あたしらに手伝えることがあったら遠慮なくいっておくれ」
「ありがとうございます」
――団長がしっかり眠れるように補佐しなければ。

 エステルは決意を新たにした。


 遅くなりすぎないうちに、と暇を告げると

「肉! 今切ってやるから」
「このパンに挟みな」
「チーズも」
「野菜も」
「夜中に腹が減るといかん。持っていきな」

 夜食にしてはいささか大きすぎる包みを渡された。その上、

「砦まで送るよー」

 サイニとイロナが道案内を買って出てくれるという。

「よき眠りに恵まれますよう」
「あんたもね。またおいで」

 挨拶を交わし、中庭の宴を後にした。
 店じまいがとっくに済んでいる裏通りは閑散としていたが、通り筋へ抜けると人々が行き交っている。サルケ市場は賑わっていた。
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