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宿場街グロムで迷子になりました
7.
「もっとゆっくりしていけばよかったのにー」
「そういうわけにも」
食事をともにするだけでもじゅうぶんに楽しかった。祖母の工房に住んでいたころを思い出す。祖母の弟子や職人たちが近所に住んでいて、いっしょに夕飯を食べたものだ。
「エステル、今度またおいでよ」
「待ってるからねー。――おやや?」
ピネッキ砦に向かい通りを半分ほど進んだところでサイニが目を丸くした。
「だんちょーさんじゃない?」
「ほんとだ。こんなところで何してるんだろ」
イロナも、エステルもすぐに気づいた。辺境にやってくる男たちは皆それぞれ屈強だがヴェーメル団長はひときわ体が大きくて目立つ。
「なんかきょろきょろしてるねー」
「探しものかな」
団長の青い目が三人のところで止まった。
ずい、ずずい。
人混みを器用にすり抜け大きな体が近づいてくる。
「ランキラ殿、よかった」
「はい?」
「戻りが遅いので、道に迷ったのではないかと」
「や、その、――ま、迷いました」
「やはり」
ヴェーメル団長はむ、と眉間に皺を寄せていたが、エステルの隣のサイニとイロナに視線を向け表情を緩めた。
「きみたちは、確か――」
「はい。管理部の者です」
「おお、ランキラ殿を送ってくれたのか。ありがとう」
「どういたしましてですー。だんちょーさんがいっしょだったらあとは平気だねー」
「エステル、また休み明けに。おふたりとも、よき眠りに恵まれますように」
「きみたち、送っていかなくてよいのか」
「お気遣いありがとうございまーす」
「わたしたちは平気です。この辺りは庭のようなものですから」
手を振り合い、サイニとイロナと別れた。連れだって歩く。
「その荷物を、こちらに」
「ありがとうございます」
エステルは隣の大男を見上げた。
私服の外套の乱れた襟もとから隊服のシャツと首筋がちらりと覗く。急いで着替えようとして、中は隊服のままなのだろう。まだ新しい任地に慣れない部下を心配してくれたのだと分かる。申し訳ない気持ちといっしょにむくむくと
――嬉しい。
団長の気遣いを喜ぶ気持ちがふくらんできた。しかし団長とエステルは上司と部下の間柄であり、外国の貴族と平民である。一度ならず求婚を断ってもいる。手放しに喜んでいい立場ではない。それなのに目を逸らそうとしてもできなかった。
「ん」
目が合った。団長の眉がへにょ、と下がる。
「余計なことをしてしまった、――んだろうな」
「そんなことは、ないですけど」
子どもでもなし、ひとりで何とかできただろうし、すべきだった。気まずさに目を逸らす。
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