甘責めがつ子の惑溺愛へのナローパス

uca

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がつ子、初プレゼンに挑む

2.

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 料理上手で仕事もできてその上性格も顔も悪くない。悪くないどころか、美マッチョだ。結婚相手と考えるなら最の高とまではいわずともかなりよいほうではなかろうか。

――もったいない、ような気がする。

 樹子はまだ大学を卒業したばかりで結婚の予定もなければ相手もなく意識したことすらないので分からない。が、課内でマシな部類のマッチョ且つ信頼を寄せる直属の上司がどこの馬の骨とも知らぬ女に袖にされたとなると――出会う前のこととはいえ――癪に障る。
 翻って、樹子にしても広居主任の告白を真に受けるわけにいかない。

――エンジェルさんみたいな合法美ショタだったらむしろ前のめりで真に受けちゃうんだけどな。

 真に受けるどころか言質げんちをとって冗談だとしても真実にしてしまうだろう。
 残念ながら広居主任は樹子の癖からは外れる。

――でもなあ。

 好みではないが上司としての信頼はしっかりあるので「なかったことにしましょう」と斬り捨てるに忍びない。
 中折れ問題を何とかしてあげたほうがいいのではないかとも思う。気乗りはしないが。
 寝言で呼ぶくらい元カノに未練を残しているのだから当事者間で解決すればいいのに。
 未練たらたらの上にこれまでそんな素振りもまるで見せなかったのに偶然寝室まで送り届けた樹子にいきなり告白である。とってつけた感が否めない。

――いや、主任を責められない。火を点けちゃった私が悪い。

 酔っていても樹子の記憶にしっかり残っている。服ひん剥きに頭なでなで、挙げ句の果てに膝に載って樹子のほうからキスまでやらかした。

――乗りかかった舟だな。

 男として口にしづらい弱点を打ち明けたのだから、広居主任は樹子を信頼してくれている。まだ海のものとも山のものともつかない新入社員だというのに。その信頼に応えたい。中折れを解決すべく手助けをしよう。
 部下としての職掌を大幅に逸脱していることに樹子は気づいていない。

――問題はいかに解決するか、だ。

 主任がセカンド童貞なら樹子自身もセカンドバージンだ。いかに妄想逞しくイメージトレーニングに励んでいるとはいえ実践から離れて四年近く。中折れという未知の現象をどうにかするには知識も情報も不足している。ネットで検索してみようとは思うがおそらくは薬だのサプリだのの広告やらアフィリエイトブログの類いばかりがずらずら引っかかるに違いない。女友達との間でセックスの話がまったく出ないわけではないが、そもそも友人間で根掘り葉掘り聞き出したり聞き出されたりするトピックでもない。

――ひとりだけ、いた。

 友人というほど親しくないが門出千春、ゲートウェイ先輩は頼みもしないのに涼しい顔で微に入り細に入り童貞の扱いについて教えてくれた。中折れについて教えてくれたのもゲートウェイ先輩だ。

――連絡……はしたくないな。

 楚々とした美人なのに口を開けば妖女レベルの変態だ。社会人になってさすがに常識を身につけ童貞狩りから足を洗っていると信じたいが、むしろ元気にハンティングに精を出していそうで怖い。

――となれば、記憶を総浚そうざらいしてゲートウェイ先輩の教えを思い出さなければ。

 気がつけば、目の前の皿が空になっている。
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