甘責めがつ子の惑溺愛へのナローパス

uca

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がつ子、初プレゼンに挑む

3.

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「ご馳走さまでした。とってもおいしかったです。洗いもの、しますね」

 樹子は先に食べ終えていた広居主任の分も合わせふたり分の食器をキッチンへ運んだ。ブラウスの袖をまくり上げようと伸ばした左腕がとられる。後ろからまわってきた大きな手が袖のボタンを外し、丁寧にカフスを折った。あたたかい指が樹子の腕の内側に触れる。

「反対の腕も」

 背後から抱かれたまま、右腕の袖も丁寧に捲り上げられた。

「しゅに、ん……」
「ん?」

 耳に口づけられて、息が上がる。食べ終えた皿や箸、保存容器をじゃばばと下洗いした広居主任は洗剤を含ませたスポンジをもこもこに泡立たせててきぱきと洗い物を続ける。抱かれたままおろおろと落ち着かない樹子の手を取り、スポンジを握らせた。

「いっしょに、しよう」
「は、い……」

 泡の中で手が添えられる。スポンジが皿をこすり、絡む指、ぬめる肌の上で泡がちりちりと弾け緩んでいく。
 ただ皿を洗うだけなのに目がくらむ。
 皿や保存容器のすすぎまですべて終えた広居主任は、ろくに手伝いもできなかった樹子の手も洗った。手首から指の腹、爪先まで丁寧にすすがれる。水は冷たいはずなのに互いの肌が熱い。

「主任の、えっち」
「皿を洗っただけだ」

 手指がゆっくりとタオルで拭われる。腰に硬いものが押しつけられた。

「えっとその、セックス、したいですか? 私と」
「したい」

 即答だった。

――好き、っていわれたけど。

 寝言の件もある。別れた恋人に大いに未練を残しているらしい広居主任の言葉を真に受けるわけにいかない。きっと口が滑って告白してしまったのだろう。元の鞘に収まるまでの間だけ樹子に一過性の関係を求めていると考えるのがよさそうだ。

――セフレ、かあ。

 気が進まない。

「俺、――俺、その、中折れしちゃう、けど。したい」
「そう、ですか」

 背後から抱かれたままの樹子の心がすん、とめた。しかし頭の奥で生まれた熱が
 ぼう。
 理性のたがをちりちりとあぶる。
 どうせ一過性の関係しか望まれないのなら、こちらも好きにやっていいのではないか。
 いつかリアル美少年を甘責めする機会を掴んだときのために、実践の経験を積んでおくべきではないか。見込みは激薄だが可能性はゼロではない。備えは必要だ。

 ゲートウェイ先輩は中折れに遭遇したとき、その原因を取り除けと教えてくれた。中折れの原因が疲労や多量のアルコール摂取であれば疲労や酔いが抜けるのを待てばよい。心因から発するのであれば原因となる感情が起きないようにすればよい。広居主任の場合は、セカンド童貞のくせに女をリードしようなどと焦るからいけない。焦りに次も上手くいかないかもしれないというおそれ――恐怖よりひるみに近い感情が加わりますます中折れに追い込まれている。
 それであれば、樹子が手綱を取ればよい。
 自分もセカンドバージンの身でありながらぺろんとそれを棚に上げ樹子は心の中で拳を握った。

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