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がつ子、はしゃぎ過ぎの代償を払う
4.
朝礼のあと「手伝ってほしいことがあるんです」とかなんとか理由をつけて、樹子は広居主任を「倉庫」と課で呼んでいる棚やキャビネットの並ぶエリアへいざなった。倉庫はパーティションとドアで仕切られて人目につきにくい。ただ、同じフロアの営業一課や二課と共有のスペースでもあり、いつ誰が入ってくるか分からない。
「どうかしたか」
高いところにものを載せるか下ろすか、いずれにしろ脚立代わりを務める気でついてきた広居主任に小さなジッパー袋を渡した。
「ばんそー、こ?」
「はい。ポケットに入れてもかさばらないよう、紙箱からこちらに中身を移しました。ここ、違和感があったら絆創膏貼っておくと少しはましかな――って」
「……っ」
紺色の上着の中へ手を忍ばせ、シャツを押し上げるぽっちりをそっと撫でる。
「痛みますか」
「い、たみはしないがその」
互いの囁きを聞き取るために棚の影で寄り添う。大きな掌が背中から腰を這う。
「気持ちよく、なっちゃいます?」
「いわせないで、くれ……。もしかして目立つ、か?」
「それよりも違和感が問題です。どんな具合ですか」
「見てもらって、も……?」
樹子はほんの少し、躊躇った。
気配をうかがう。
打ち合わせをする者。外出の準備をする者。前の週から残した仕事に渋々取りかかる者。パーティションの向こう、始業直後のオフィスは月曜の朝ということもあってほんの少しだけ週末の余韻を残しがやがやと賑わっている。
「拝見します」
手早く済ませよう。
紺色のネクタイの先を肩へ跳ね上げ二つ、三つ。さらにもうひとつ、広居主任がシャツのボタンを外す。中は樹子が贈った下着だった。
――早速着てきちゃうなんて、かわいいが過ぎるのでは。
きゅ。
心臓のあたりが捩れ胸が高鳴る。しかしここで時間を喰うわけに行かない。ベージュ色の目立たないTシャツをまくりあげ胸を露わにした。
「……っ」
自分から見てほしいなどといっておきながら、主任が息を呑む。
ぷく。
小さな乳首が勃ちあがっている。淡い色だったはずなのに赤みを帯びていた。最後にこの乳首を愛撫してからまだ半日も経っていない。見つめ続けていたら口づけたくなってしまう。いろいろな意味でノーガードで放置しておいていい乳首ではない。
「このままだとそのうち痛みはじめるかもしれません。絆創膏、貼りましょう」
ジッパー袋から絆創膏を取り出す。包装紙とセパレーターを剥がし、絆創膏を片方の乳首に貼った。
「すみません。私が加減を忘れてしまったばかりに」
「いや、ねだったのはその、俺だから」
シャツの前をくつろげ立派な胸板を露わにしたしどけない姿で頬を染められると困る。前夜までを思い出してしまって困る。目の前の巨漢が羞じらう姿がかわいくてとても困る。
樹子は次の絆創膏の包装紙とセパレーターを剥がすのに集中するふりをした。
「ほんとうはニプレスが手に入ればよかったんですけど」
「絆創膏と違うのか」
「あまり違いません。でも、夏場は絆創膏だと剥がれやすくなると聞きます。替えを多めに用意しておきました。このあと外出の予定、ありますよね」
「ああ」
「剥がれたりずれたりしたら交換してください」
「そうする」
もう片方の乳首にも絆創膏を貼る。これでしばらくは刺激から守られるはずだ。包装紙やセパレーターをポケットにつっこみ、手早く服を整えた広居主任にジッパー袋を渡す。
「予備の絆創膏と軟膏も買いました。後でお席に置いておきます」
「何から何まで、すまない。予備のほうは席でなくその、仕事の後、――うちに持ってきてほしい」
至近距離で見つめ合う。
「分かりました」
同時に体を離した。
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