1 / 9
〈一〉
しおりを挟むどいつもこいつも分かってない。まるで分かっていない。生体魔導機械ニョルンは膠着する戦況を打開する一手となり得るというのに。
今に見てろ! ニョルンくんの絶大な効果を見てあとで吠え面かくなよ。
かわいくもあざとく分厚い化粧に露出度がやたらに高くスカート丈の短いエプロンドレス、赤いフード付きのケープをまとい籠を携えた赤ずきんちゃんコスの女、ウルラトゥス国トーロデア砦裏の通用門で待機列に加わったシーラ・アーヴィンの鼻息は荒い。
シーラ・アーヴィンはウルラトゥス国と長年にわたり対立関係にあるアワグイラ国の人間だ。神童の誉れ高く学業成績優秀、軍の魔導機械研究所に入ってからも鬼才と呼ばれていたシーラだが、現在は謹慎処分を受けている。血を吐くような努力の末にやっとのことで開発した生体魔導機械ニョルンに倫理的な問題があると上層部に非難されたのだ。
嘆かわしい。
激化する魔法戦争に一石を投じるどころか、ニョルンくんは魔法戦術に変革をもたらすエポックメイキングな発明なのだ。上層部の連中はまるで分かってない。
だから、シーラはニョルンくんの有用性を実地で証明することにした。謹慎中の宿舎から脱け出し敵国へ乗り込んだ今日のシーラは娼婦である。大枚をはたき蔓薔薇館という娼館の女将の手ほどきでにわか娼婦となった。どうして赤ずきんちゃんコスなのか、コスプレして検問列に並んでいる今も腑に落ちないが蔓薔薇館の女将がこれで行けというからこれでいいのだろう。とにもかくにも敵国の砦に潜入し、一騎当千、魔狼と恐れられる魔法騎士ルシアン・ハームズワースをニョルンくんで戦闘不能にしてやるのだ。ニョルンくんはできる子。ニョルンくん、最高。
慰安事業団の娼婦たちとともに列を作り並んでいると検問の順番が回ってきた。
「手荷物を検める」
「どうぞ」
精いっぱい色っぽくしなをつくり、シーラは籠を差し出した。赤ずきんちゃんといえば、籠。おばあちゃんへのお見舞いの品をつめた籠である。
「中身は?」
「口紅、白粉、それとこちらは――」
ボトルを取り出す。きゅ、とキャップを外しシーラは細い指を一本、ボトルにひたした。
「ちょっとした潤滑剤ですの」
引き抜いた指に
ぬろ……。
粘液がまとわりつく。
「き、危険物ではあるまいな?」
「まさか」
シーラは粘液にまみれた指を
ちゅ、ぽ。
しゃぶって見せた。
「安全です」
「……」
とろとろの粘液であらぬところをぬるぬるにされるのを想像したのか、検問の兵士がごくんと喉を鳴らす。
「素敵でしょ?」
「おお……」
難なく検問を通過したシーラが娼婦たちの一団に加わろうとすると
「蔓薔薇館から来た新しい娼婦というのは――きみか」
大きな男がやってきた。身長だけではない。肩幅が広くがっしりしていて魔法など使わなくてもじゅうぶんに強そうに見えた。そのうえ金色の髪に明るい青い目をしていて顔立ちも整っている。まわりの娼婦たちの間に歓声混じりの溜め息が広がった。その強そうで上等そうな男――ウルラトゥス国の英雄がシーラの前に立っている。
「ヴォルフ隊隊長ルシアン・ハームズワースだ」
「シーラ・アーヴィンです」
つい差し出された手を握り、ほいほいと本名を名乗ってしまったが
――いけない、潜入中だった。
気づいても後の祭りである。
「そそそ、そういう名前でやってるんです、ええ」
「やってるって――赤ずきんちゃんを」
「そうです、赤ずきんちゃんの名前です」
「では行こうか、赤ずきんちゃん」
ルシアン・ハームズワースが肘を差し出した。
「はい、ハームズワース隊長」
にっこり微笑み腕を通す。
よし、潜入成功。ニョルンくんでこの大男をめっちょめちょにしてやる。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
惚れ薬を自作して敬愛する騎士団長に飲ませたら、なぜか天敵の副団長が一晩中私を口説いてきました
藤森瑠璃香
恋愛
宮廷魔術師の私には、密かに想いを寄せる騎士団長がいる。彼のために自作した惚れ薬を夜会の酒杯に忍ばせる…までは完璧な計画だったのに、その酒杯をぐいっと飲み干したのは、よりにもよって私の天敵である副団長のザカリー様だった! 普段は皮肉屋で私に意地悪ばかりしてくる彼が、「ずっと君だけを見ていた」なんて熱っぽい瞳で囁いてくる。薬の効果は明日の朝日が昇るまで。一晩だけの甘い悪夢だとわかっているのに、普段の彼からは想像もできない優しいキスに、私の心臓はうるさくて…。薬のせいだと割り切りたい一夜のドタバタラブコメディ。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる