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第十二話『ダンジョンアタック』
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「思ったより綺麗なもんだな」
ダンジョン探索許可証を取得し、ダンジョンに入った俺達。
入り口から地下一階に降りてきたが、石壁と石畳で割と綺麗に整っていて、なんだか普通の建築物に感じる。
「恐らく探索の過程で、一部が軍によって整備されているのだろう」
ゴードンが辺りを見て、見解を述べる。
なるほど、ある程度人の手が入っているのか。
「それに、このダンジョンは多分、元は古代魔導文明の遺跡だと思います。ダンジョンと化しても、その基礎構造が残っているんでしょう」
「どういう事だ?カサンドラ」
「以前に本で読んだ事があるんです。そこに載っていたかつて滅んだ古代魔導文明の建造物の様式と、この通路や壁の様式がよく似ています」
よく分かるな、そんなもん……。
貴族令嬢の高い教養というものか……?
「でも、なんでその遺跡とやらがダンジョンに?」
「『魔素』の蓄積によって生じる変異した空間の総称というのがダンジョンの定義だ。魔素は基本的に大地から噴き出るものとされ、洞窟などの閉鎖空間、また魔素の噴出場所近くの森などがダンジョンと化しやすい場所とされている」
俺の疑問に答えたのはゴードン。
続いてヴィンセントも口を開く。
「古代魔導文明では、その優れた魔導技術で魔素を制御し、ダンジョンを人工的に造り出していたらしい。実際、帝国にもその人工ダンジョンだという場所が幾つかあって、その殆どが帝国魔導研究所の管理下にあるって話だ」
ま~た帝国を絡めてくるのか……。
「帝国の話はもういいって昨日言ったよな……また絞めるか?」
「か、勘弁してくれ、旦那……!」
指を鳴らしてヴィンセントを黙らせる。
これ以上国同士のゴタゴタなんかに巻き込まれて堪るか……!
気を取り直して奥へ進む――。
事前に少し仕入れた情報では、このダンジョンは現在地下10階層まで開拓されていて、それぞれの階層が迷路の様に入り組んだ道になっているらしい。
下に降りる階段も複数あるタイプで、結構複雑な構造の様だ。
しかも、ダンジョンは長い年月をかけて拡張したり、構造が変化したりするらしく、常にマップ情報の更新が続けられている。
そこの情報にも多少の報奨金が出るとか。
とはいっても、その情報を掴む為には最新の『ダンジョンマップ』が必要になる。
俺も念の為購入した……ダンジョンマップ1枚銀貨2枚……。
更に探索許可証の発行――冒険者の俺の分銀貨3枚、奴隷のゴードン・カサンドラの2人銀貨2枚、個人扱いのヴィンセントの分銀貨5枚……計金額1枚。
許可証はギルド証と同じようにタグ個別の紋様が刻まれ、紛失したらまた発行料金を支払って再度発行してもらわなければならない。
また奴隷は奴隷のみでの探索は禁止で、必ず所有者が一緒に潜らなければならず、奴隷を連れて潜るなら奴隷の分の許可証も取らなければならない。
入市税、宿代、飯代ときて今度はダンジョン探索許可証の発行費にダンジョンマップの購入費……稼ぐ前に出費が嵩んでいる不思議……。
くそぅ……必ず稼いで取り戻してやる。
こうなれば自重は無しだ――チートだろうが何だろうが、持てる力を総動員してダンジョン内の金になる物を狩りつくしてやる!
「いくぞお前ら!気合入れてけ!!」
「しょ、承知!」
「は、はい!」
「張り切ってるなぁ、旦那」
いざダンジョンの奥へ――!
それから俺達は、ダンジョン探索に明け暮れた……。
俺はチートをフル活用した。
先ず俺の探知魔法でダンジョンの広範囲を探知する事で同業の探索者達と得物の位置を割り出す。
そして、魔物を見つけ出してはそれを狩り、素材と魔石を剥ぎ取る。
ある程度溜まったら、一定時間ごとに冒険者ギルドに換金に行き、目標金額に到達したらその日の探索は終了。
これを日々繰り返す――言ってしまえばこれだけだ。
同業者の位置を探るのは、帝国のスパイを警戒したのと、自重を捨ててチートを活用する俺の姿を見られない様にする為だ。
警戒もそうだが、俺は自分のやる事を他人に見られるのが好きじゃない。
子供の頃からの癖で特別な理由はない、見られるからと害がある訳じゃない事は頭では分かっているが、この癖はどうにも直らない。
そんな訳で人目を回避しつつ、ダンジョン内で換金できるものを根こそぎ採り尽す勢いで歩き回った。
1日の目標金額は金貨5枚――最初のダンジョンアタックで余裕を持って稼げた額が金貨5枚だったのでそう定めた。
金貨5枚の内、1枚は俺達の食事代・宿代等の生活費として確保、1枚はゴードン・カサンドラ・ヴィンセントの分け前というか基本給という感じで一括積み立て、残り3枚を解放税に回すという事にした。
「ジロウ殿、我らに給金など不要だ」
「そうです。食事代も宿代も出して貰っているのに!」
「俺も要らないぜ、旦那。ゴードン卿とカサンドラ嬢の解放税に回してくれよ」
3人はそう言ってきたが、俺は一蹴した。
「うっせえ。これは俺が決めた事だ。黙って従え」
日々の暮らしや身を削って稼ぐとか、今の俺には我慢ならない考えだ。
日本にいた頃の自分を思い出す……日々の食事を削り、進んで残業をして時間を削り、趣味や欲しい物を我慢して、給料明細の手取り額と通帳残高だけを増やす生活……。
ああ、思い出すだけで息が詰まりそうだ……許さん!
勿論、ゴードン達にしてみれば奴隷でいる方が息が詰まる事だろうし、帝国絡みの心配事もあるから急ぎたいというのは分かっている。
だが、焦って解放しても無一文では帝国への帰還もままならないだろう。
それで俺の見てないところでまた強盗でもやらかした日には、俺はブチ切れる確信がある……。
それに時間の事を考えても、解放税はゴードンが金貨20枚、カサンドラが金貨15枚だから、金貨3枚の稼ぎを維持できれば12日で2人を奴隷から解放できる計算――奴隷が自前で解放税を稼ぎ出すよりは、破格の早さだろう。
だから、これでいいんだ。
という訳で、1日金貨5枚を稼ぐため俺達はダンジョンを駆けまわった――。
その過程で知った事……不思議というか不気味というか迷うが、ダンジョン内で死んだ生物の死骸は2・3日もすると消失してしまうという。
ゴードン達が言うには、ダンジョンに吸収されてしまうのだとか……定説としては、ダンジョンも一種の生物であり、その活動の為に生物の死骸をエネルギーに還元しているのではないか、という事だ。
そして人間も生物……だから、ダンジョン内で命を落とした冒険者が、服や装備だけを残して消失するという割とホラーな事も珍しくない……。
事実、俺達もその現場に何度か遭遇した……。
冒険者が着ていただろう破れた服と鎧、欠けた剣、穴の開いたローブやマントが散乱したダンジョンの小部屋は、何とも言えない恐怖を演出していた……が、服の中に下着類まで残っていたので最終的には微妙な気持ちになった。
まあ、時間が経てばどこからともなく『スライム』が現れて、服もじわじわ溶かして食っていくから、発見が遅れればボロボロになっていつかは切れ端も無くなる。
ダンジョン内で何度か見かけたが、この世界のスライムもご多忙に漏れず弱小モンスター、踏んづければ死んでしまう。
極稀にとんでもなく厄介なスライムに進化する事もあるというが、頻繁に人間が出入りするこのダンジョンにはいなさそうだ。
閑話休題――ともかく俺達のダンジョンアタックは極めて順調だ。
多少の増減はあれど、コンスタントに金貨を稼げている。
これなら予定通り、ゴードン達を解放できるだろう。
そうして1週間が経ち、金貨も貯まって心に余裕が出来たある日――。
「む?」
いつもの様にダンジョンに潜っていた俺達――しかし、その日は少し様子が違った。
ダンジョン内が、何というかざわざわした空気になっていたのだ。
「妙だな……」
気になって探知魔法を広げてみると、下の階層の方で大量のモンスターが集まっているのを感知した。
「どうされた、ジロウ殿」
「……下の階層にモンスターが集まっている」
「っ!」
答えた途端、ゴードンの顔が強張る。
「……まさか、集団暴走の前兆では……!?」
「集団暴走?」
聞けば、集団暴走とはダンジョンに稀にある現象で、モンスターが何かしらの原因によってあり得ないほどの群れを成しダンジョンの外へ溢れ出そうとする緊急事態だという。
原因はその時によって違い、時には探索者が原因になる場合もある。
というのも……そのモンスターの気配の傍に人間の気配も1つあって、今まさに追われている様に気配達が一斉に移動を開始したからだ――!
「なんかヤバいぞ、モンスターの群れが人間を追って移動を開始した!」
「「「!!?」」」
教えたら、ゴードン達が揃って顔を青くした。
モンスターの大群がこの狭い通路で押し寄せてくる訳だ、当然だろう。
今度ばかりは俺も対応できるか分からない。
よって――撤退だ!
「逃げるぞ!!」
「おう!」
「はい!」
「勿論!」
俺達は即座にダンジョンを走り出す。
カサンドラを先にゴードン、ヴィンセントと続き、殿は俺だ。
全員、身体強化魔法を駆使してハイスピードで駆ける!
通路を抜け、階段を駆け上がり、途中邪魔な魔物を蹴散らし、とにかく出口を目指した。
そしてそう時間を掛けずに地下一階層に上がり、もう少しで出口だ――という所で!
ガコ
「んな!?」
俺の足元の地面が消失――落とし穴だと!?
「ジロウ殿!?」
「ジロウさん!?」
「旦那あ!?」
クソォ!
「先に行けえ!!」
落ちながら3人に指示を出し、俺は下の階層へ落下――かなり深く落とされてしまった。
「ぐおッ!?畜生がぁ!」
着地は失敗し、背中から落ちたが、チートボディの頑丈さと身体強化魔法で防御して無事だ。
すぐ起き上がって辺りを確認するが、残念、ここが何階層かなんて見た目じゃ分からない。
すぐさま感知魔法――モンスターの気配を探る。
「っ!?」
すぐそこの通路の先!
ってこっちに向かってきてんじゃねえか!?
「――いぃぃやぁぁぁ~~~!!??」
女の悲鳴――これ多分最初から追われてる探索者の声か!!
「ふざけんな!!こっち来んじゃねえ!!」
俺は聞こえてくる女の悲鳴と大量の魔物の足音に背を向けて全力で走る!
「よし!遠ざかったな!」
女の声も魔物の足音も大分遠ざかった。
と、思ったら――
「――たぁすけぇてぇぇぇ~~~!!??」
「なにぃ!!?」
引き離したと思ったさっきの女探索者の声が、別方向から近づいてくるだと!?
どうなってんだ!?
「くそぉ!」
俺も闇雲に逃げたのが悪かったか?!
とはいえ位置を見失っている今、マップは意味がないし、そもそも見ている暇がない!
クソッタレ!
こうなったら――!
「もうやるしかねえ!!」
逃げるのは止めだ!!
集団暴走の魔物の群れ、俺が粉砕してやるッ!!
ダンジョン探索許可証を取得し、ダンジョンに入った俺達。
入り口から地下一階に降りてきたが、石壁と石畳で割と綺麗に整っていて、なんだか普通の建築物に感じる。
「恐らく探索の過程で、一部が軍によって整備されているのだろう」
ゴードンが辺りを見て、見解を述べる。
なるほど、ある程度人の手が入っているのか。
「それに、このダンジョンは多分、元は古代魔導文明の遺跡だと思います。ダンジョンと化しても、その基礎構造が残っているんでしょう」
「どういう事だ?カサンドラ」
「以前に本で読んだ事があるんです。そこに載っていたかつて滅んだ古代魔導文明の建造物の様式と、この通路や壁の様式がよく似ています」
よく分かるな、そんなもん……。
貴族令嬢の高い教養というものか……?
「でも、なんでその遺跡とやらがダンジョンに?」
「『魔素』の蓄積によって生じる変異した空間の総称というのがダンジョンの定義だ。魔素は基本的に大地から噴き出るものとされ、洞窟などの閉鎖空間、また魔素の噴出場所近くの森などがダンジョンと化しやすい場所とされている」
俺の疑問に答えたのはゴードン。
続いてヴィンセントも口を開く。
「古代魔導文明では、その優れた魔導技術で魔素を制御し、ダンジョンを人工的に造り出していたらしい。実際、帝国にもその人工ダンジョンだという場所が幾つかあって、その殆どが帝国魔導研究所の管理下にあるって話だ」
ま~た帝国を絡めてくるのか……。
「帝国の話はもういいって昨日言ったよな……また絞めるか?」
「か、勘弁してくれ、旦那……!」
指を鳴らしてヴィンセントを黙らせる。
これ以上国同士のゴタゴタなんかに巻き込まれて堪るか……!
気を取り直して奥へ進む――。
事前に少し仕入れた情報では、このダンジョンは現在地下10階層まで開拓されていて、それぞれの階層が迷路の様に入り組んだ道になっているらしい。
下に降りる階段も複数あるタイプで、結構複雑な構造の様だ。
しかも、ダンジョンは長い年月をかけて拡張したり、構造が変化したりするらしく、常にマップ情報の更新が続けられている。
そこの情報にも多少の報奨金が出るとか。
とはいっても、その情報を掴む為には最新の『ダンジョンマップ』が必要になる。
俺も念の為購入した……ダンジョンマップ1枚銀貨2枚……。
更に探索許可証の発行――冒険者の俺の分銀貨3枚、奴隷のゴードン・カサンドラの2人銀貨2枚、個人扱いのヴィンセントの分銀貨5枚……計金額1枚。
許可証はギルド証と同じようにタグ個別の紋様が刻まれ、紛失したらまた発行料金を支払って再度発行してもらわなければならない。
また奴隷は奴隷のみでの探索は禁止で、必ず所有者が一緒に潜らなければならず、奴隷を連れて潜るなら奴隷の分の許可証も取らなければならない。
入市税、宿代、飯代ときて今度はダンジョン探索許可証の発行費にダンジョンマップの購入費……稼ぐ前に出費が嵩んでいる不思議……。
くそぅ……必ず稼いで取り戻してやる。
こうなれば自重は無しだ――チートだろうが何だろうが、持てる力を総動員してダンジョン内の金になる物を狩りつくしてやる!
「いくぞお前ら!気合入れてけ!!」
「しょ、承知!」
「は、はい!」
「張り切ってるなぁ、旦那」
いざダンジョンの奥へ――!
それから俺達は、ダンジョン探索に明け暮れた……。
俺はチートをフル活用した。
先ず俺の探知魔法でダンジョンの広範囲を探知する事で同業の探索者達と得物の位置を割り出す。
そして、魔物を見つけ出してはそれを狩り、素材と魔石を剥ぎ取る。
ある程度溜まったら、一定時間ごとに冒険者ギルドに換金に行き、目標金額に到達したらその日の探索は終了。
これを日々繰り返す――言ってしまえばこれだけだ。
同業者の位置を探るのは、帝国のスパイを警戒したのと、自重を捨ててチートを活用する俺の姿を見られない様にする為だ。
警戒もそうだが、俺は自分のやる事を他人に見られるのが好きじゃない。
子供の頃からの癖で特別な理由はない、見られるからと害がある訳じゃない事は頭では分かっているが、この癖はどうにも直らない。
そんな訳で人目を回避しつつ、ダンジョン内で換金できるものを根こそぎ採り尽す勢いで歩き回った。
1日の目標金額は金貨5枚――最初のダンジョンアタックで余裕を持って稼げた額が金貨5枚だったのでそう定めた。
金貨5枚の内、1枚は俺達の食事代・宿代等の生活費として確保、1枚はゴードン・カサンドラ・ヴィンセントの分け前というか基本給という感じで一括積み立て、残り3枚を解放税に回すという事にした。
「ジロウ殿、我らに給金など不要だ」
「そうです。食事代も宿代も出して貰っているのに!」
「俺も要らないぜ、旦那。ゴードン卿とカサンドラ嬢の解放税に回してくれよ」
3人はそう言ってきたが、俺は一蹴した。
「うっせえ。これは俺が決めた事だ。黙って従え」
日々の暮らしや身を削って稼ぐとか、今の俺には我慢ならない考えだ。
日本にいた頃の自分を思い出す……日々の食事を削り、進んで残業をして時間を削り、趣味や欲しい物を我慢して、給料明細の手取り額と通帳残高だけを増やす生活……。
ああ、思い出すだけで息が詰まりそうだ……許さん!
勿論、ゴードン達にしてみれば奴隷でいる方が息が詰まる事だろうし、帝国絡みの心配事もあるから急ぎたいというのは分かっている。
だが、焦って解放しても無一文では帝国への帰還もままならないだろう。
それで俺の見てないところでまた強盗でもやらかした日には、俺はブチ切れる確信がある……。
それに時間の事を考えても、解放税はゴードンが金貨20枚、カサンドラが金貨15枚だから、金貨3枚の稼ぎを維持できれば12日で2人を奴隷から解放できる計算――奴隷が自前で解放税を稼ぎ出すよりは、破格の早さだろう。
だから、これでいいんだ。
という訳で、1日金貨5枚を稼ぐため俺達はダンジョンを駆けまわった――。
その過程で知った事……不思議というか不気味というか迷うが、ダンジョン内で死んだ生物の死骸は2・3日もすると消失してしまうという。
ゴードン達が言うには、ダンジョンに吸収されてしまうのだとか……定説としては、ダンジョンも一種の生物であり、その活動の為に生物の死骸をエネルギーに還元しているのではないか、という事だ。
そして人間も生物……だから、ダンジョン内で命を落とした冒険者が、服や装備だけを残して消失するという割とホラーな事も珍しくない……。
事実、俺達もその現場に何度か遭遇した……。
冒険者が着ていただろう破れた服と鎧、欠けた剣、穴の開いたローブやマントが散乱したダンジョンの小部屋は、何とも言えない恐怖を演出していた……が、服の中に下着類まで残っていたので最終的には微妙な気持ちになった。
まあ、時間が経てばどこからともなく『スライム』が現れて、服もじわじわ溶かして食っていくから、発見が遅れればボロボロになっていつかは切れ端も無くなる。
ダンジョン内で何度か見かけたが、この世界のスライムもご多忙に漏れず弱小モンスター、踏んづければ死んでしまう。
極稀にとんでもなく厄介なスライムに進化する事もあるというが、頻繁に人間が出入りするこのダンジョンにはいなさそうだ。
閑話休題――ともかく俺達のダンジョンアタックは極めて順調だ。
多少の増減はあれど、コンスタントに金貨を稼げている。
これなら予定通り、ゴードン達を解放できるだろう。
そうして1週間が経ち、金貨も貯まって心に余裕が出来たある日――。
「む?」
いつもの様にダンジョンに潜っていた俺達――しかし、その日は少し様子が違った。
ダンジョン内が、何というかざわざわした空気になっていたのだ。
「妙だな……」
気になって探知魔法を広げてみると、下の階層の方で大量のモンスターが集まっているのを感知した。
「どうされた、ジロウ殿」
「……下の階層にモンスターが集まっている」
「っ!」
答えた途端、ゴードンの顔が強張る。
「……まさか、集団暴走の前兆では……!?」
「集団暴走?」
聞けば、集団暴走とはダンジョンに稀にある現象で、モンスターが何かしらの原因によってあり得ないほどの群れを成しダンジョンの外へ溢れ出そうとする緊急事態だという。
原因はその時によって違い、時には探索者が原因になる場合もある。
というのも……そのモンスターの気配の傍に人間の気配も1つあって、今まさに追われている様に気配達が一斉に移動を開始したからだ――!
「なんかヤバいぞ、モンスターの群れが人間を追って移動を開始した!」
「「「!!?」」」
教えたら、ゴードン達が揃って顔を青くした。
モンスターの大群がこの狭い通路で押し寄せてくる訳だ、当然だろう。
今度ばかりは俺も対応できるか分からない。
よって――撤退だ!
「逃げるぞ!!」
「おう!」
「はい!」
「勿論!」
俺達は即座にダンジョンを走り出す。
カサンドラを先にゴードン、ヴィンセントと続き、殿は俺だ。
全員、身体強化魔法を駆使してハイスピードで駆ける!
通路を抜け、階段を駆け上がり、途中邪魔な魔物を蹴散らし、とにかく出口を目指した。
そしてそう時間を掛けずに地下一階層に上がり、もう少しで出口だ――という所で!
ガコ
「んな!?」
俺の足元の地面が消失――落とし穴だと!?
「ジロウ殿!?」
「ジロウさん!?」
「旦那あ!?」
クソォ!
「先に行けえ!!」
落ちながら3人に指示を出し、俺は下の階層へ落下――かなり深く落とされてしまった。
「ぐおッ!?畜生がぁ!」
着地は失敗し、背中から落ちたが、チートボディの頑丈さと身体強化魔法で防御して無事だ。
すぐ起き上がって辺りを確認するが、残念、ここが何階層かなんて見た目じゃ分からない。
すぐさま感知魔法――モンスターの気配を探る。
「っ!?」
すぐそこの通路の先!
ってこっちに向かってきてんじゃねえか!?
「――いぃぃやぁぁぁ~~~!!??」
女の悲鳴――これ多分最初から追われてる探索者の声か!!
「ふざけんな!!こっち来んじゃねえ!!」
俺は聞こえてくる女の悲鳴と大量の魔物の足音に背を向けて全力で走る!
「よし!遠ざかったな!」
女の声も魔物の足音も大分遠ざかった。
と、思ったら――
「――たぁすけぇてぇぇぇ~~~!!??」
「なにぃ!!?」
引き離したと思ったさっきの女探索者の声が、別方向から近づいてくるだと!?
どうなってんだ!?
「くそぉ!」
俺も闇雲に逃げたのが悪かったか?!
とはいえ位置を見失っている今、マップは意味がないし、そもそも見ている暇がない!
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