異世界創治〜女神がやられて崩壊した治世をMMOシステムで治します~

KAN

文字の大きさ
7 / 7

第6話「小金井彰人Ⅴ」

しおりを挟む
 スライム討伐と薬草採取のクエストを終え、俺とシルクはギルドへと帰還を果たした。ギルドの扉を開けると、相変わらずの喧騒がVR空間だというのに耳につんざく黄色い声は否応に貫いてくる。ここだけはあまり慣れる気にはなれない。受注したとこの受付嬢......女将さんの前に着いてクエスト完了の報告をする。
 「クエスト達成おめでとう!これが報酬のアイテムと報酬金だよ」
 目の前にタスクの完了が表示され、アイテムとそれに応じた報酬金が表示された。アイテム自体は薬草のクエストで手に入れた薬草を煎じたポーションを3つもらった。スライム水が貰えなかったってことはそういうことなんだろうな。そういうことっていうのは俺が想定する中でもそれもチュートリアルだっていうことでな......。初めてのクエストが終わったということで俺とシルクはギルド内の酒場で飯をとることにした。未成年という設定はしていてお酒を勧められることはないが、それに近しいジュースを提供された。こどもの酒といった感じか。乾杯の合図と共に俺とシルクはジョッキを飲む......前にとあるアイテムを奥歯の隙間に詰めてから飲み始める。結構苦味を感じさせるジュースは確かに大人の味わいを感じさせるように再現されている。鼻の下に泡を付けたのを互いが見やり、笑いあう。提供された料理に舌鼓を打ちつつ、料金を支払ってギルドを後にした。
 「へへ......お気楽なことだ。」
 と、新人が外に出るのを確認するのと同時に席を離れる影が3つ。離席すると同時にちゃんと支払い分を置いているところを見ると素行が悪いようには見られないが、果たして...。

 ギルドを離れて少し、そこでシルクと俺に異変が起こった。微弱ではあるが手足が震える状態異常、麻痺(微)とステータスに表記された。人通りの少ない道に進んでしまったが運の尽き。俺らを囲むようにゴロツキA~Cが現れた。
「悪く思うんじゃねぇぞ?これもギルドの洗礼だと思って...」
 と、突発クエストで語る常套句じょうとうくを無視してシルクが先制を仕掛ける。セリフを言っていたゴロツキはシルクのツヴァイヘンダーの腹で吹き飛ばされて口をアグアグさせていた。
「なっ!どうなってやがる!?」
 残りのゴロツキ2人も持っていた得物で殴りかかるが、俺とシルクの大剣の前では児戯であった。
「ふんっ!」
「ぐぇ!」
 ギルドの先輩になるであろうゴロツキ先輩方を軽く倒してしまったが、これでよかったのか微妙だがやられてペナルティもらうよりかはマシだ。と、心の中で呟いていたら、肩をワナワナと震わせながらシルクが俺に近付く。
「アキは...こうなることわかってたのか!?」
「いや...単純に新人イビリはどの世界でもあるだろうし、こういった毒とか簡単に取り扱える世界なら初心者狩りで料理に麻痺らせる毒物とか入れてもおかしくないからさ」
「まさかスライム水と麻痺草を調合したらこんなのが出来るとはな!」

 ▼麻痺治しグミ
 スライム水と麻痺草を調合したグミ。より新鮮な素材で調合すると麻痺が治る確率が上がる(50%)

 運にも左右される確率2分1を引いたのは嬉しいが、今回食らった麻痺が(微)っていうのが功を奏したと思う。何せ手足の震えだけならまだ得物を持ててただろうし、歯に忍ばせたグミも重度の麻痺だったら噛み切れなかっただろう。
 タスク画面が表示される。そこには突発クエストで達成した報酬などが箇条書きで表示されており、画面の下にTips:という項目があった。内容は気絶したゴロツキを騎士団かギルドに報告することで治安を向上させる糸口にもなるそうと書いてある。ふむふむ、治安向上するならプレイヤーが変にカモられる心配が無くなるだけじゃなくNPCにも影響があるのだろう。これは報告したほうが良さそうだ。ただ...。
「この騎士団とギルドどちらかに報告するってのどうする?」
「ん?」
「いやな。変に勘ぐるならどちらかが正しくてどちらかがグルって訳じゃん。さっきのゴロツキもギルドの洗礼とか言ってたし」
「確かに!でもギルドは関与する隙はないと思うぞ?」
「騎士団は騎士団でよく貴族特級とかで騎士団に貴族がいて揉み消しとかな」
「あるあるだな!ならギルドのお局様に報告するか!」
「ああ」
 流石にあのお局様がグルだったらどうしようと思ったが、杞憂だったようで報告するや否や、ゴロツキ達を職員達が担ぎ出してランクカードなどを剥奪し、乗合馬車の手配を済ませて外へと放り出した。あの3人組は素行が悪かったようで、事件性のある事情でも扱う毒が微弱なために直ぐに身体の中で分解されるので手をこまねいていたようだ。今回俺らが無事に帰還と事件内容を告げることでこれまで被害にあったプレイヤーやNPCへの見舞い品というものが配布されるようだ。というか、これを解決したプレイヤーがいないこと自体不思議だ。さっき言ってた騎士団に報告してたら揉み消しとかがあったのかもしれないから拭いきれない不安が過ぎる。
「あんたらもよく頑張ったね。お見舞い品はこれだよ」
 と、お局様は薄い紙切れを渡した。

 ▼ギルド優遇チケット
 ギルドのあらゆるお願いを優先して受ける事ができるとんでもチケット。尚、回数は1回きり。

 いや何このチートアイテム。 ってこと!?
 思わず心で叫んでしまったが、これ相当だぞ?
「アキ何に使うんだ~あだだだ!!」
「バカ!静かにしろ!」
 大声で用途を説明するバカがどこにいる!...目の前にいるわ。兎も角、このアイテムに手放した方が良い。俺の心の安寧を得るためにも!
 聞き耳を立てるプレイヤーだっているんだ。今ここで使おう。じゃあ今何に使うのが効率的で稀少性になり得るのか...プレイヤーの主観で考えるなら立ち入り禁止エリアに潜入するハラハラ感を楽しむ一部のコア層を一蹴する提案もできる。NPCの主観で考えるなら...そうだな、目上の人に拝見するチャンスがあれば出世とか考えられるか。我ながらしめしめと悪だくみをしてるようで何か楽しい。よし、決めた。前にお局様がギルドカードの対応をした時に紙の提出で宙を舞ったのが気になった。お局様はギルドマスターに向かっていると言ったからな。であればだ。少なくともを見たことあるプレイヤーは少ないはず。
「チケットを使用!」
 チケット使用と言うと専用画面みたいのが目の前に現れた。シルクには事前にボイチャで打ち合わせしたので目的がずれることはないだろう。いや、マジでずれないで?
 入力する項目にはギルドマスターに会うといった目的を記して決定をする。すると手元にあったチケットはするりと抜けて宙に舞って消えてしまった。恐らくギルドカードのくだりと同じか。
 しばらくしてお局様が俺らを呼んでいるので近付くと、耳を近付けてとサインを送ってきた。まぁ聞き耳を立てよう。
「ギルドマスターがあんたらを呼んでこいって言ってたらしいんだけど何かしたのかい?」
 心配してくれたのか声音が優しめだ。確かにチケットはギルドマスターに届いたんだな。なら、行くしかない。
「心配しなくてもいいですよ。で、どこに行けばいいですか」
「んん...心配ないならいいんだがね。カウンターを抜けて階段を上がりな」
 お局様の横のカウンターが開かれる。近くで黄色い声が聴こえたが気にしないで進んでいこう。階段を上ってた段階でプレイヤー達が詰め掛けてきたのか、カウンターを強く閉じる音とお局様が怒鳴っている声が響き渡った。をもらったならチケットだってあるだろうに。と、階段を上がって左右に広がる通路を見やる。左の通路は暗がりで灯りが役に立っていない。右の通路は何故かドライアイスを転がしたように煙が立ち上っている。どちらも怪しいが何とか理論で右に行くことにしよう。俺とシルクは右の通路へと歩み始めた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...