全力でフラグに気付かないうさぎ

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学園祭楽しもうさぎ 3

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「会長の模擬店でカレーうどんやってるんだって!ちょっと早いけど食べに行こうよ!」

 残念ながら会長の番はうさぎ達とかぶっており、この時間は模擬店にいなかった。残念に思いつつも、カレーうどんを買って食べる。他のクラスの模擬店では、たこ焼き、焼きそば、お好み焼き、ベビーカステラ、唐揚げ、チーズドッグ、おでん、チョリソーといった定番の屋台メニューが並んでいた。

「カレーうどん美味しいよ!顔寒かったから温まるね!」
「そうね、でも衣装汚さないように食べなきゃね。シミつけたら恥ずかしいもの」

 汚さないよう気をつけながら、みんなで立って食べる。他のも買い食いしてたら、勇者御一行が立ち寄った店、なんて宣伝されてしまってちょっと恥ずかしい。



 うさぎ達の当番の時間が近づいてきた。教室へ行って、改めて飲み物の種類とコップに入れる量を確認して待機する。どきどきしてきた。注文を聞いて飲み物を渡してお金もらうだけ。頭でシュミレーションしてると、院照くんと会長が入って来た。

「会長!院照くん!いらっしゃい!」
「こんにちは。格好いいナイト様や貴族様に魔法使い?それに、勇者様にシスターにメイドさんか。ここだけ冒険の世界に迷い込んだ気がするよ」
「そうだね、格好いいうさぎさんも見られたし、良かったらみんなで写真撮ってもいいかな?」
「うさぎ、生徒会長様からのご指名よ」
「うさぎさんだけじゃなくてみんなで、だよ」

 会長はそう言ってウインクすると、院照くんはクラスメイトにスマホを渡して写真を撮ってもらうよう頼んだ。

「僕らは端でいいから。ほら、勇者様方を前にしゃがんでもらって、君達は後ろに立ってもらっていいかな」
「だるまくん、うさぎさん、剣を抜いてポーズして、猫メイドさんは猫っぽく、シスターさんはお祈りのポーズで、貴族様と魔法使いさんはちょっと威張るようにお願いね」
「よし、それじゃ撮るよ!」


 撮った画像を見せてもらうとなかなか様になっていた。私だから女勇者ありって感じで似合ってるね!
 これを見ていた他の人達が自分達も写真撮りたいと撮影会が始まった。

「写真撮る人は必ず飲み物買ってくださーい」
「勇者様!あたしと撮ってください!」
「貴族様はあたくしとお願いするわ」
「メイドたんハァハァ…。僕ちんと撮ってほしいっす」

 結局、勇者御一行は喫茶店と写真撮影会で大盛り上がりとなった。



「コスプレ喫茶お疲れ様でしたー!」 
「衣装は置きっぱなしでいいそうだから、置いて帰りましょう」
「はーい、それじゃみんな、お疲れさまでした!また明日ー」




 次の日。見るからにゾンビな院照くんが嬉しそうに出迎えた。

「いらっしゃい。今日はパンデミックをテーマにしたホラーだよ。昨日とは全く雰囲気が違うから楽しんでいってね」

 にこにこ笑ってすすめるので、昨日と同じペアで入っていく。
 うさぎの精神がだいぶやられたので、端折って説明すると、とにかくゾンビに脅かされて捕まりそうになったり囓られそうになったりと言うものだった。

「寒くなってくるから逆に叫んで逃げてドキドキして温まろうってね」

 何が楽しくてそんな満面の笑みを浮かべられるのか。院照くんの好感度がダダ下がりであった。

 他のクラスで射的をした。うさぎは筋肉マンストラップをゲットし、だるまは兎の小さなぬいぐるみをゲットした。

「私たちに似てるね!」

 うさぎは嬉しそうに、でも少し照れくそうにそう言うと、コスプレ喫茶盛り上げるぞと言って走って先に行ってしまった。
 残されたイツメンで笑いあって教室に向かう。


「あたしのヒロイン!マイスイートバニー!お近付きにぜひお姫様抱っこしてください!」

 教室に戻ると小学生の女の子がうさぎに抱きかかえられていた。ほらおの妹である。

「お前、今日は来ないんじゃなかったのか?」
「お兄がコスプレするって言ってたから、天使のうさぎ様もコスプレすると思ってずっと待ってたの!」

 妹ちゃんはうさぎの首に腕を絡めると、うさぎの胸に頬ずりをしてだらしない顔で恍惚としていた。

「羨まギリィでござる……!!」

 キッ!とうさぎを睨んで妹ちゃんを熱い視線で見つめるのだった。
 昨日に続き、勇者御一行の撮影会は大盛り上がりを見せて終了した。



 それから昨日食べなかったメニューを模擬店で買って食べ、今日は会長もいたのでカレーうどんも食べた。その後、会長から午後四時から体育館のステージで閉会式をするけどみんなもぜひ来てほしいと言われる。本来参加は自由だが会長からの頼みなので、校内を見てから行くと答えた。

 閉会式なのにぜひ来てほしいって何があるんだろうか。みんなで体育館に行くと、学園の生徒半分くらいが集まっている。

「三日間、学園祭を盛り上げてくれてみんなありがとう。閉会式の前にステージイベントをやろうと決めててね、毎年何をするかその場で発表していたんだけど、今回は、学園の中心で告白をする、だよ。まずは僕から」

 そうして会長はスタンドからマイクを外してスタンドを片付けさせると、ステージ前側の真ん中に立った。

「僕はー!来年の生徒会にー!二年七組のー!院照めがねくんとー!二年八組のー!餅月うさぎさんをー!推薦することをー!ここに告白しまーーす!」
「「「「「「おおおー!」」」」」」

 座っていた生徒たちのざわめきが広がり、めがねとうさぎの二人が周りから囃し立てられて立たされた。

「返事をー!聞かせてくださーーい!」
「ヤイバ会長!俺は会長の跡を継ぎまーす!」

 きゃーー!みんな大盛り上がりである。そこに水を指すのは申し訳ないがうさぎは断った。

「ごめんなさーい!まだ部活とかやってみたい事たくさんあるのー!」

 うぇーーい!みんな小盛り上がりである。

「断られちゃったね。でも僕がいる間は何度でも誘うからね。それじゃあ他にも告白したい人はいるかい?」

 会長はうさぎにウインクを飛ばしてサラリと次を促した。
 その後、付き合ってくださいがちらほら出て、どれもお友達からお願いしますと返答されていた。

 そんな中、だるまも告白した。

「同じクラスの餅月うさぎさん!」
「「「「「おおぉお!!」」」」」

 生徒が待ってましたと言わんばかりに盛り上げてくる。
 だるまはずっと考えていた。初めてあった時からうさぎに一目惚れしていたのだと。
 可愛い女子とぶつかったと思って、心配しようとするより先に相手が走って行ってしまった。その後は同じクラスに転校してくるのがぶつかった生徒だと分かり、おまけに席が隣になった。運命だと思った。
 よく話すようになって、部活中もうさぎを守れる男にならねばと、稽古に身が入っていった。委員長としての仕事の手伝いもやってくれて嬉しかった。そして学園祭中に告白しようと考えていたが一歩を踏み出せなかった。
 そんな中、他の生徒が告白して玉砕していくのを見て怖くなったが、言わなければこの想いは伝わらない、と勇気をだして告げようと思う。うさぎ、好きだ、付き合ってほしいと。

「うさぎ、俺は!俺は!!!」



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