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冬、色づく
閑話 立花さんの怒り
しおりを挟む推しCP冬春の専属壁(自称)こと私、立花芽衣子は、冴木くんの秘密の恋を知り、RINEのIDを交換してからこの方、冴木くんの“よき友人”のポジションをゲットしました。
幸運なことに、ゴールデンウィーク明けの席替えでも冴木くんの隣になれたおかげで、私たちの距離はぐんと近づいた気がする。
私のおすすめのゲイカップルのインフルエンサーを教えたり、おすすめのBL漫画を貸してあげたりしていたら、冴木くんも少しずつ慣れてきてくれたのか、小林くんとの出来事や悩み事を話してくれるようになって、私の高校生活はこれ以上ないくらい充実している。
さらに調子に乗って頼んだ絵のモデルも、冴木くんは快く引き受けてくれた。
冴木くんの持つ、独特な造形美は、私の創作意欲をたまらなく刺激するのだ。美術の授業で似顔絵を描かせてもらってからというもの、むくむくとアイデアが浮かんできて……文化祭に出す課題ももはや冴木くん以外の題材が全く浮かんで来なくてこまっていたところダメもとでお願いしたらすんなりOKもらえてもうハッピー。
これがミューズというやつか……と、私にとって冴木くんは神さま枠に上り詰めていると言っても過言ではない。
昼休みや放課後に時間を見つけては私たちは美術室に籠っているけれど、必ずしも冴木くんにモデルをしてもらっているわけでもなかった。
モデルが必要ないときやお昼休みのほとんどは、冴木くんと専らお喋りタイム。まぁ、モデルしながらもお喋りは途絶えないんだけど。
ここ最近の話題は、小林くんへの告白急増問題。スポーツ大会での活躍で小林くんの株が高騰して、同学年の女子からの告白が後を絶たなかった。
今のところ、告白に成功した女子は一人もいないのだけど、冴木くんは気が気じゃない。
――そりゃぁ、好きな人が誰かのものになるのを見るのはツラいもんね……。
再会した初日に、恋愛対象から外されてしまった冴木くんは、小林くんとの恋をあきらめていると言っているけれど、そう簡単に割り切れるものでもないわけで……。
小林くんが呼び出しを受けて教室を出ていく姿を目にする度に、冴木くんはしょんぼりしてしまうのだ。
それを見たくない、というのもあって、最近は昼休みに美術室に逃げているんだと思う。
「ふゆくんに彼女ができたら、俺、おめでとうって言える自信ない……」
お弁当を食べながら、今にも泣きそうに冴木くんが言う。
でも、私には、小林くんが彼女を作るとは到底思えなかった。
「小林くん、彼女は作らないと思うけどなぁ」
「どうしてそう思うの?」
「小林くん、冴木くんのことしか見てないもん」
私の言葉に、冴木くんは「えぇ? そんなことないよ……」と顔を赤くする。すぐ照れちゃう初心なところも可愛いのだ、この受けは。
きゅんきゅんする胸に落ち着け、と指令を下しながら、私は思ったままを言った。
「だってね! 席替えしてから、めちゃめちゃ視線感じるんだよ! で、ちらっと後ろ見ると、小林くんがこっちっていうか、冴木くんを見つめてるの!」
「気のせいじゃ、」
「ない! 絶対ない! 私は壁だからわかるの!」
「だとしても、ふゆくんが彼女を作らない理由にはならないと思う。第一俺は対象外だし……」
でも、あの視線は、友だちとかただの幼なじみに向けるようなものじゃない気がするのよ。壁の勘でしかないのだけど、いうなれば好きな人に向けるような、熱いまなざし。
ついちらちら見ちゃう、気になって気になって仕方がないあの感じ……。
えー、あれが恋愛感情じゃなかったらなんなの?
「ふゆくんに彼女ができたときに、笑っておめでとうって言えるように、今から覚悟を決めないとだよね……」
目を潤ませた美少年の姿にぐさりと胸を貫かれ、私は人知れず「ぐはっ」と血を吐いた。
――この受け、健気すぎる……! なんていじらしいの……!
うぬぬぬぬ……。
小林くんてば、一体なにを考えて恋愛対象じゃないなんて言ったの?
可愛い受けが自信を無くして、こんなにも悲しんでしまっているというのに!
恋愛の好きじゃないなら、あの視線はなんなの?
と今すぐ小林くんの胸ぐらをつかんで問い詰めたい衝動に駆られた。
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