女装男子は学校一のイケメンからの溺愛を拒めない

紀本明

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 今、なんつった?
 可愛いとか言った?

「お、おま……、男に可愛いとか……変だろ」
「なんで? 可愛いに男も女も関係なくない? 可愛いもんは可愛いんだよ。んでもって、尊はめちゃくちゃ可愛い」
「なっ……!」

 イケメンに可愛いと言われて絶句する俺に、中条は上機嫌に顔を覗き込んできた。

「なぁ、もしかして俺のこと、意識してくれてんの?」
「ち、ちが……」
「じゃぁなに? 俺に触られてなんでそんななってんの?」
「それは……、き、キスが……」
「キス?」

 あーっ、もう言葉にするのも恥ずかしいのに!
 もうどうにでもなれっ!

「お、お前とのキスが、頭から離れないんだよっ!」

 やけくそになった俺は、恥も外聞も捨ててそう言い切って涙目になってヤツの胸を拳で叩く。けれど、ぜんぜんびくともしない。

「なにそれ――」

 あーもうっ、絶対頭おかしいって思われた……!

 中条にしてみれば、キスなんて慣れっこで、それこそ俺をからかって楽しんでるだけなのに。それを俺は真に受けて、欲情して、忘れられずにこんなにも中条にどきどきして……。きっと、バカなヤツって思われたに違いない。

 だけど、言ってしまったことを早くも後悔している俺の耳に飛び込んだのは、俺の予想を裏切るものだった。

「嬉しすぎるんんだけど」
「――はぁ? そこ、喜ぶとこ?」

 想像と違う答えが返ってきて、俺はぽかんと中条を見上げた。

「そりゃ喜ぶでしょ。だって、俺もずっと忘れられなかったもん。尊とのキス」

 ――ずきゅん。

 胸が……、胸がぁーーーー!

 キューピッドの矢に心臓が射抜かれたかと思うほど、胸が痛い。

 だって、言葉の通り、本当に嬉しそうな笑顔で、そんなことを言われて、ときめかない方が無理。絶対無理。

 この場に中条ファンの女子が居たら気絶してる。

「めちゃめちゃ気持ちよかったし。尊も同じ気持ちでいてくれたならいいなぁーって思ってた」
「で、でも……俺……キス初めてだし、慣れてないから……上手くないだろ……?」

 中条にされるがままで、中条を満足させることなんてきっと俺にはできない。

「下手とか上手いとか、そんなの関係ない。俺は、尊とのキスが好きなんだから」

 ――ばきゅんっ

 ぐはっ……!

 また……、キューピッドの矢が……!

 きすがすき 下から読んでも きすがすき(字余り)

 って違う!

 詠んでる場合じゃない。

「マジで、嬉しい――」

 胸の痛みに悶えていた俺は、中条の近づく気配に気づくのに遅れを取った。

 あ……――――
 
「んぅ……っ」

 唇を押し当てられ、反射的にのけぞる俺を阻むように手が後頭部に回された。
 でもそれも、無理やりとかじゃない。

 優しく、支えるような手つきに、俺はそのまま身をゆだねてしまう。

 というか、気持ちよすぎてもうなにも考えられなかった。

「……はぁ……んんっ」

 ねっとりとした中条の舌に俺の舌が何度も何度も絡め取られる。その度にぞくぞくと体が喜ぶのを感じながら、俺は必死で中条に縋りついていた。

「んー……、もう行かなきゃだな……鐘鳴っちゃった……」

 名残惜しそうに放たれたその言葉で俺は我に返る。
 鐘が鳴ったのにも気づかないくらい、夢中になってた……。

「尊、大丈夫か? そんなんで授業受けれる?」

 ぼうっとする俺を心配そうに覗き込むイケメンが憎らしい。
 おれを”そんなん”にしたのは、お前だろ!

「な……、なんで、お前は、そんなに平気でいられるんだよっ」
「なんでって……、そりゃ、慣れてるからとしか……」
「うぅ……」

 くそ……。そうだよな。

 国宝級イケメンと地味男の経験値なんか天と地ほどの差だよな……。

 ちくりと胸が痛んで、俺はそれ以上考えるのをやめた。
 彼女だからとは言われたけど、それは所詮ただの名ばかりで暇つぶし相手にしかすぎないんだ。そんなことは、わかってる。

「でも、こんなに気持ちいいキスは尊が初めてだから安心して」
「なんだよ、安心って。俺はそんな不安になんかなってない!」
「ツンデレな所も可愛いな」

 ちゅっとリップ音をわざと立ててキスが降ってきて、俺はまた固まる。そんな俺の反応を中条はふ、と笑った。



「慣れるように、いっぱいキスしような」
「――ば、ばかか! 誰がっ」
「え、しないの? 忘れられないくらい良かったのに?」
「あーもう、言うな! 忘れろ!」

 腰に絡みつく腕を押しやって中条から逃れた俺は、外階段からのドアから校舎内に入った。幸い予鈴が鳴った後のため、人気はほとんどなく怪しまれることもなくほっとする。

 でも、俺の心臓は全然鎮まらない。

「尊」
「……なに」

 今度はなんだ、と思えば、中条は耳を寄せて「今週末、デートしよ」と小さく言った。

「やだ」
「なんで」
「いやなものはやだ」

 だって、絶対俺のことをからかって楽しむに決まってる。

 俺の拒絶に、中条は大げさに傷ついた顔をするが無視だ。

「えー! 久しぶりに二人っきりでデートしたいなぁー」
「ばっ、お前、声でかい!」

 しー、っとジェスチャーでねめつける。

 この前の学校でのキスといい、さっきといい、人目を気にするってことを知らないんじゃないかと神経を疑いたくなる。

 だけど、中条はにたにたと無邪気な笑顔を浮かべてて、俺はその可愛さにまた胸が打ちぬかれてしまう。

 あー、もー、無理無理無理。

 こいつといると、俺の心臓がもたない。

 なのにこいつは、

「してくれないなら、教室で付きまとうよ?」

 それでもいいの? と言ってきた。

 ひ、卑怯だ……!
 そんなことされたら、今度こそ俺の平穏なスクールライフが脅かされるじゃないか……!

 うううう……。

「――……わかったよ。付き合えばいいんだろ」

 唸った挙句、俺は仕方なく負けを認めるしかなかった。

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