女装男子は学校一のイケメンからの溺愛を拒めない

紀本明

文字の大きさ
31 / 37

23-2

しおりを挟む



 あの日――ひよりと中条が家に来た日、「私が好きなのは、みっくんだよ」とひよりに告げられた。
 俺は、頭が真っ白になって、その後のことは、よく覚えていない。

 その後食べた夕飯の味も、その時になにを話したのかも、記憶になかった。

 それくらい、衝撃だったんだ。
 ひよりが、俺を好きだなんて、なにかの間違いじゃないか?

 何度も何度もそう自問して、でも結局本人から面と向かって言われたのだから、間違いないんだ、と自答する。

 あの時――ひよりが俺に告白した時、俺の頭を過ぎったのは、中学時代のあの記憶。

 一番仲良かった友だちの好きな子が俺を好きだった、っていうあれだ。

 あの時の、足元がすくむような感覚に襲われて、俺は中条の顔を見れなかった。
 俺のせいで、傷つけてしまったかもしれないから。そしてその顔を見るのが怖かった。

 中条本人の口からひよりが好きだと聞いたわけではないけれど、好きじゃないという確証もどこにもない今、俺の中では中条がひよりを好きだという説は有力なことに変わりはない。

「おはよう」
「おはよー。尊がこの時間に登校って珍しいじゃん」
「うん、ちょっと……」

 いつもより早い時間に登校すると、既に登校して本を読んでる太一が居た。さすが本の虫。今日も今日とて一番乗りなんだろう。
 どうして時間を早めたのかというと、ひよりと顔を合わすのが気まずいという単純な理由だ。昨日の今日で二人きりになるのは避けたかった。

「あのさぁ……」

 教室は、そこそこ人が居て賑やかだった。「ん?」と太一が振り返る。

「たとえばの話なんだけど……」
「うん」
「それまで恋愛対象として見てなかった相手から突然告白されたら、どうする……?」
「――お前さ、聞く相手間違えてるだろ。彼女いない歴=年齢の俺に聞くことじゃない」

 たぶんそう言われるだろうな、と思った。
 俺は「まぁ、そうなんだけども……」と続ける。

「だってさ、こんなこと聞ける相手お前以外いないじゃん」

 コミュ障の地味メン舐めないでもらいたい。
 伊達にじめじめしてないぞ、俺は。


 ひよりには、すぐに返事しないでよく考えてほしい、と言われている。

 ひよりのことを恋愛対象として見たことは一度もないから、正直なにをどう考えればいいのかわからない。
 中学の時にあの事があって、今の今までずっと顔を隠して人ともあまり関わらないような生活をしてきたから、誰かのことをそもそもそういう目で見たこと自体がなかった。

 仕方ない、コミュ障たる所以だ。

 それでも、やっぱり中条のことを抜きにしても、ひよりのことはちゃんと真摯に向き合おうと思う。

 太一は、うーんと唸った後、口を開いた。

「人間的に好きなら試しに付き合ってみたりもありなのかなー? んー、でもそれで上手くいかなかったら気まずくなるしな……断わっても気まずくなるんか? 悪い、ホント全然想像つかねぇ」
「だよなぁー、俺も全くだよ……」
「ところで」
「うん?」
「――美少女と美男子、どっちに告られたの?」
「……ん?」

 ワンテンポおくれて太一が言わんとすることを理解した俺は固まった。
 美少女=ひより、美男子=佑太朗ってことだろう。
 冷や汗が背筋を流れた。

「な、なんの話?」
「正直に言ってみ」

 これは……隠せないな……。
 もう確信してる太一の顔を見て諦めた俺は、誰にも言うなよと念を押してから「美少女」と答える。

「つーか、美男子のほうはあり得ないだろ」
「え、なんで? 同性だからって恋愛対象にならないとは限らないじゃん」

 太一が同性愛に肯定的なのが意外だった。いくらLGBTQが広がりつつある世の中でも、偏見の目を持つ人の方が多いような気がしていたから。

「それに、どちらかと言えば美男子の方が有力候補だったけど」
「えっ、だってアイツ彼女いるって……」
「ただの女除けって可能性もあるし?」

 はたまた予想外の鋭さに俺は目を見開いた。けれども、どうして彼女がカムフラージュだからといって俺に気があることになるのか。そこが理解できない俺は、「ないない」と全否定する。

「美男子が好きなのは美少女って相場は決まってんだよ」
「そうか? じゃぁ逆もまた然りだよな? ってことは尊は美男子ってことになる」
「おま、揚げ足取るなよなー。ひよりは例外なんだよ、きっと」

 そうに違いない。こんな地味メンを好きになる物好きなんだから。

「幼馴染のフィルターがかかってるんだよ。言うじゃん、ブスは三日で慣れるって」
「いやお前な……、そもそも人を好きになるって見た目だけじゃないだろ」
「あーまぁなー」
「で、どーすんの」
「……わかんない」

 考えてと言われたし、考えようとも思っているけど、なにをどう考えれば良いのか、全く分からない。コミュ障と言われてきた俺だけど、それで特段困ったことはなかった(はず)なんだが……。
 ここにきて初めて自分がコミュ障なのを恨んだ。

 ひよりは確かに俺にとって、大切な存在であることは間違いないのだ。
 だから、傷つけたくないのが本音。
 いい加減な対応だけはしたくなかった。

 太一は、俺がそれ以上話す気がないと踏んだのか、「だよな」と言って前に向き直って本を開いた。それをなんとなく眺めつつ、俺は窓の外に目をやる。

 校門からぞくぞくと登校する生徒たちの中に、なんという偶然か、ひよりと中条を見つけてしまった。
 本当になんとなく見ただけなのに、目立ちすぎなんだよな、アイツら。相変わらず二人とも仏頂面をかまして言い合っているようなのが遠目でもわかるほど。周りもなんとなく二人と距離を取って歩いてる感満載だし。

 どっからどう見てもお似合いの美男美女カップルなのに。なんであんなに喧嘩ばっかするんだ……。

 ――中条は、昨日、俺に告白するひよりを目の当たりにして、どう思ったんだろうか。

 傷つけてしまっただろうか……。
 きっとそうだよな……。

 ひよりの隣で眉間に皺を寄せる中条を見て、胸が痛んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー

夏目碧央
BL
 強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。  一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...