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あの日――ひよりと中条が家に来た日、「私が好きなのは、みっくんだよ」とひよりに告げられた。
俺は、頭が真っ白になって、その後のことは、よく覚えていない。
その後食べた夕飯の味も、その時になにを話したのかも、記憶になかった。
それくらい、衝撃だったんだ。
ひよりが、俺を好きだなんて、なにかの間違いじゃないか?
何度も何度もそう自問して、でも結局本人から面と向かって言われたのだから、間違いないんだ、と自答する。
あの時――ひよりが俺に告白した時、俺の頭を過ぎったのは、中学時代のあの記憶。
一番仲良かった友だちの好きな子が俺を好きだった、っていうあれだ。
あの時の、足元がすくむような感覚に襲われて、俺は中条の顔を見れなかった。
俺のせいで、傷つけてしまったかもしれないから。そしてその顔を見るのが怖かった。
中条本人の口からひよりが好きだと聞いたわけではないけれど、好きじゃないという確証もどこにもない今、俺の中では中条がひよりを好きだという説は有力なことに変わりはない。
「おはよう」
「おはよー。尊がこの時間に登校って珍しいじゃん」
「うん、ちょっと……」
いつもより早い時間に登校すると、既に登校して本を読んでる太一が居た。さすが本の虫。今日も今日とて一番乗りなんだろう。
どうして時間を早めたのかというと、ひよりと顔を合わすのが気まずいという単純な理由だ。昨日の今日で二人きりになるのは避けたかった。
「あのさぁ……」
教室は、そこそこ人が居て賑やかだった。「ん?」と太一が振り返る。
「たとえばの話なんだけど……」
「うん」
「それまで恋愛対象として見てなかった相手から突然告白されたら、どうする……?」
「――お前さ、聞く相手間違えてるだろ。彼女いない歴=年齢の俺に聞くことじゃない」
たぶんそう言われるだろうな、と思った。
俺は「まぁ、そうなんだけども……」と続ける。
「だってさ、こんなこと聞ける相手お前以外いないじゃん」
コミュ障の地味メン舐めないでもらいたい。
伊達にじめじめしてないぞ、俺は。
ひよりには、すぐに返事しないでよく考えてほしい、と言われている。
ひよりのことを恋愛対象として見たことは一度もないから、正直なにをどう考えればいいのかわからない。
中学の時にあの事があって、今の今までずっと顔を隠して人ともあまり関わらないような生活をしてきたから、誰かのことをそもそもそういう目で見たこと自体がなかった。
仕方ない、コミュ障たる所以だ。
それでも、やっぱり中条のことを抜きにしても、ひよりのことはちゃんと真摯に向き合おうと思う。
太一は、うーんと唸った後、口を開いた。
「人間的に好きなら試しに付き合ってみたりもありなのかなー? んー、でもそれで上手くいかなかったら気まずくなるしな……断わっても気まずくなるんか? 悪い、ホント全然想像つかねぇ」
「だよなぁー、俺も全くだよ……」
「ところで」
「うん?」
「――美少女と美男子、どっちに告られたの?」
「……ん?」
ワンテンポおくれて太一が言わんとすることを理解した俺は固まった。
美少女=ひより、美男子=佑太朗ってことだろう。
冷や汗が背筋を流れた。
「な、なんの話?」
「正直に言ってみ」
これは……隠せないな……。
もう確信してる太一の顔を見て諦めた俺は、誰にも言うなよと念を押してから「美少女」と答える。
「つーか、美男子のほうはあり得ないだろ」
「え、なんで? 同性だからって恋愛対象にならないとは限らないじゃん」
太一が同性愛に肯定的なのが意外だった。いくらLGBTQが広がりつつある世の中でも、偏見の目を持つ人の方が多いような気がしていたから。
「それに、どちらかと言えば美男子の方が有力候補だったけど」
「えっ、だってアイツ彼女いるって……」
「ただの女除けって可能性もあるし?」
はたまた予想外の鋭さに俺は目を見開いた。けれども、どうして彼女がカムフラージュだからといって俺に気があることになるのか。そこが理解できない俺は、「ないない」と全否定する。
「美男子が好きなのは美少女って相場は決まってんだよ」
「そうか? じゃぁ逆もまた然りだよな? ってことは尊は美男子ってことになる」
「おま、揚げ足取るなよなー。ひよりは例外なんだよ、きっと」
そうに違いない。こんな地味メンを好きになる物好きなんだから。
「幼馴染のフィルターがかかってるんだよ。言うじゃん、ブスは三日で慣れるって」
「いやお前な……、そもそも人を好きになるって見た目だけじゃないだろ」
「あーまぁなー」
「で、どーすんの」
「……わかんない」
考えてと言われたし、考えようとも思っているけど、なにをどう考えれば良いのか、全く分からない。コミュ障と言われてきた俺だけど、それで特段困ったことはなかった(はず)なんだが……。
ここにきて初めて自分がコミュ障なのを恨んだ。
ひよりは確かに俺にとって、大切な存在であることは間違いないのだ。
だから、傷つけたくないのが本音。
いい加減な対応だけはしたくなかった。
太一は、俺がそれ以上話す気がないと踏んだのか、「だよな」と言って前に向き直って本を開いた。それをなんとなく眺めつつ、俺は窓の外に目をやる。
校門からぞくぞくと登校する生徒たちの中に、なんという偶然か、ひよりと中条を見つけてしまった。
本当になんとなく見ただけなのに、目立ちすぎなんだよな、アイツら。相変わらず二人とも仏頂面をかまして言い合っているようなのが遠目でもわかるほど。周りもなんとなく二人と距離を取って歩いてる感満載だし。
どっからどう見てもお似合いの美男美女カップルなのに。なんであんなに喧嘩ばっかするんだ……。
――中条は、昨日、俺に告白するひよりを目の当たりにして、どう思ったんだろうか。
傷つけてしまっただろうか……。
きっとそうだよな……。
ひよりの隣で眉間に皺を寄せる中条を見て、胸が痛んだ。
あの日――ひよりと中条が家に来た日、「私が好きなのは、みっくんだよ」とひよりに告げられた。
俺は、頭が真っ白になって、その後のことは、よく覚えていない。
その後食べた夕飯の味も、その時になにを話したのかも、記憶になかった。
それくらい、衝撃だったんだ。
ひよりが、俺を好きだなんて、なにかの間違いじゃないか?
何度も何度もそう自問して、でも結局本人から面と向かって言われたのだから、間違いないんだ、と自答する。
あの時――ひよりが俺に告白した時、俺の頭を過ぎったのは、中学時代のあの記憶。
一番仲良かった友だちの好きな子が俺を好きだった、っていうあれだ。
あの時の、足元がすくむような感覚に襲われて、俺は中条の顔を見れなかった。
俺のせいで、傷つけてしまったかもしれないから。そしてその顔を見るのが怖かった。
中条本人の口からひよりが好きだと聞いたわけではないけれど、好きじゃないという確証もどこにもない今、俺の中では中条がひよりを好きだという説は有力なことに変わりはない。
「おはよう」
「おはよー。尊がこの時間に登校って珍しいじゃん」
「うん、ちょっと……」
いつもより早い時間に登校すると、既に登校して本を読んでる太一が居た。さすが本の虫。今日も今日とて一番乗りなんだろう。
どうして時間を早めたのかというと、ひよりと顔を合わすのが気まずいという単純な理由だ。昨日の今日で二人きりになるのは避けたかった。
「あのさぁ……」
教室は、そこそこ人が居て賑やかだった。「ん?」と太一が振り返る。
「たとえばの話なんだけど……」
「うん」
「それまで恋愛対象として見てなかった相手から突然告白されたら、どうする……?」
「――お前さ、聞く相手間違えてるだろ。彼女いない歴=年齢の俺に聞くことじゃない」
たぶんそう言われるだろうな、と思った。
俺は「まぁ、そうなんだけども……」と続ける。
「だってさ、こんなこと聞ける相手お前以外いないじゃん」
コミュ障の地味メン舐めないでもらいたい。
伊達にじめじめしてないぞ、俺は。
ひよりには、すぐに返事しないでよく考えてほしい、と言われている。
ひよりのことを恋愛対象として見たことは一度もないから、正直なにをどう考えればいいのかわからない。
中学の時にあの事があって、今の今までずっと顔を隠して人ともあまり関わらないような生活をしてきたから、誰かのことをそもそもそういう目で見たこと自体がなかった。
仕方ない、コミュ障たる所以だ。
それでも、やっぱり中条のことを抜きにしても、ひよりのことはちゃんと真摯に向き合おうと思う。
太一は、うーんと唸った後、口を開いた。
「人間的に好きなら試しに付き合ってみたりもありなのかなー? んー、でもそれで上手くいかなかったら気まずくなるしな……断わっても気まずくなるんか? 悪い、ホント全然想像つかねぇ」
「だよなぁー、俺も全くだよ……」
「ところで」
「うん?」
「――美少女と美男子、どっちに告られたの?」
「……ん?」
ワンテンポおくれて太一が言わんとすることを理解した俺は固まった。
美少女=ひより、美男子=佑太朗ってことだろう。
冷や汗が背筋を流れた。
「な、なんの話?」
「正直に言ってみ」
これは……隠せないな……。
もう確信してる太一の顔を見て諦めた俺は、誰にも言うなよと念を押してから「美少女」と答える。
「つーか、美男子のほうはあり得ないだろ」
「え、なんで? 同性だからって恋愛対象にならないとは限らないじゃん」
太一が同性愛に肯定的なのが意外だった。いくらLGBTQが広がりつつある世の中でも、偏見の目を持つ人の方が多いような気がしていたから。
「それに、どちらかと言えば美男子の方が有力候補だったけど」
「えっ、だってアイツ彼女いるって……」
「ただの女除けって可能性もあるし?」
はたまた予想外の鋭さに俺は目を見開いた。けれども、どうして彼女がカムフラージュだからといって俺に気があることになるのか。そこが理解できない俺は、「ないない」と全否定する。
「美男子が好きなのは美少女って相場は決まってんだよ」
「そうか? じゃぁ逆もまた然りだよな? ってことは尊は美男子ってことになる」
「おま、揚げ足取るなよなー。ひよりは例外なんだよ、きっと」
そうに違いない。こんな地味メンを好きになる物好きなんだから。
「幼馴染のフィルターがかかってるんだよ。言うじゃん、ブスは三日で慣れるって」
「いやお前な……、そもそも人を好きになるって見た目だけじゃないだろ」
「あーまぁなー」
「で、どーすんの」
「……わかんない」
考えてと言われたし、考えようとも思っているけど、なにをどう考えれば良いのか、全く分からない。コミュ障と言われてきた俺だけど、それで特段困ったことはなかった(はず)なんだが……。
ここにきて初めて自分がコミュ障なのを恨んだ。
ひよりは確かに俺にとって、大切な存在であることは間違いないのだ。
だから、傷つけたくないのが本音。
いい加減な対応だけはしたくなかった。
太一は、俺がそれ以上話す気がないと踏んだのか、「だよな」と言って前に向き直って本を開いた。それをなんとなく眺めつつ、俺は窓の外に目をやる。
校門からぞくぞくと登校する生徒たちの中に、なんという偶然か、ひよりと中条を見つけてしまった。
本当になんとなく見ただけなのに、目立ちすぎなんだよな、アイツら。相変わらず二人とも仏頂面をかまして言い合っているようなのが遠目でもわかるほど。周りもなんとなく二人と距離を取って歩いてる感満載だし。
どっからどう見てもお似合いの美男美女カップルなのに。なんであんなに喧嘩ばっかするんだ……。
――中条は、昨日、俺に告白するひよりを目の当たりにして、どう思ったんだろうか。
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きっとそうだよな……。
ひよりの隣で眉間に皺を寄せる中条を見て、胸が痛んだ。
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