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その4
◇
結論から言おう。
あの後の夫は、凄かった。
重くなった身体では、うまく動けないのでは――
そんな心配をしていた自分が、馬鹿だったと思えるほどに。
彼は自分の身体をよく把握していた。
重さにきちんと気を配りながら、触れ合うことを忘れない。
さすがは騎士というべきか、基本的な体の使い方が違う。
器用に片腕で身体を支え、無理のない体勢を保ち続けていた。
一方の私はというと。
以前よりもずっと近く、彼の体温や存在を感じていて――
その安心感に、何度も意識が遠のきそうになった。
気が付いた頃には、すっかり力が抜け、そのまま眠ってしまっていた。
そして今。
彼の太い腕を枕にして、二人並んで眠っている。
――はず、だったのだが。
頭の下の感触が、少しずつ変わっていくのを感じた。
(……え?)
違和感に目を覚まし、そっと彼のほうへ身体を向ける。
そこにいたのは、
出立前と変わらない――
無駄な脂肪など、どこにも見当たらない夫の姿だった。
まじまじと、夫の姿を見つめる。
穏やかな寝息を立てている彼は、全く起きる素振りがない。
(――おかえりなさい)
それが夢ではないと、ようやく実感できて。
シエラは夫を起こさないよう、ゆっくりと身体を寄せる。
そうして、固い彼の身体をそっと抱き締め、再度目を閉じた。
◇
シエラが次に目を覚ましたとき、夫の姿はなかった。
(これは、間違いなく――)
夜着を纏ったまま、窓際へと歩み寄り、そっと外を覗く。
そこには、早速鍛錬を再開している夫の姿が見えた。
まったく。
本当なら、妻が起きるまで一緒に寝ているのが正解だろうに。
けれど、いかにも彼らしい行動に、思わずクスリと笑みがこぼれる。
鍛錬が終わったら、久しぶりに二人で朝食を取ろう――
おそらく夫は、自分が元の姿に戻ったことを、シエラがまだ知らないと思っているはずだ。
彼は、シエラを見て、どんな反応をするのだろう。
では、こちらはどんな顔で迎えてあげようか。
考えるだけで胸が高揚し、
同じ屋敷の中にいるというのに、早く夫に会いたくてたまらなかった。
シエラがちょうど身支度を終えた頃、鍛錬を終えたのだろうディーノが部屋へ戻ってきた。
「シエラ」
すでに着替えを済ませ、ディーノの帰りを待っていたシエラを見て、彼はその名を呼ぶ。
「おかえりなさい、ディーノ様」
結局、シエラが返した反応は至って普通のものだった。
けれど、その一言は、思った以上にディーノの胸に刺さったらしい。
(わ)
ディーノが、
シエラが今までに見たことのないほどの、満面の笑みを浮かべた。
「……ただいま」
噛みしめるように告げられたその声に、まだ早朝だというのに、身体がかっと熱くなる。
(平常心、平常心――)
目を閉じ、ふぅっと深く息を吐いて心を落ち着けていると、ディーノの筋肉質な腕がシエラの身体を絡め取った。
あ、と思う間もなく、ベッドへと押し倒される。
「あ、あの、私、支度を終えたんですが――」
「構わない」
いや、私が構う。
むしろ、手伝ってくれた侍女たちが泣く。
「朝食は、」
「あとでいい」
待て待て。私はお腹が空いているのだ。
何せ寝込んでいたせいで丸一日食べそびれている。
「旦那様、ご飯を先に――」
言い終える前に、彼の唇がそっと私の口を塞いだ。
さらに、逃げられないように両手をまとめて押さえられ、そのままベッドへと倒される。
気づけば、視界いっぱいにディーノの姿があった。
――昨日の気遣いは、いったいどこへ行ったのだろう。
言いたいことは山ほどある。
けれど、彼の慰労休暇が始まったばかりだったことを思い出し、
(……まあ、いいか)
結局、そう思ってしまうあたり、私も大概だと思いながら、流れに身を任せた。
◇
「明日で休暇も終わりか⋯⋯」
朝に目覚めてすぐ、夫が名残り惜しそうに呟く。
「結局、どこにも行けなかった⋯⋯」
「すまない、怒っているか?」
不貞腐れたようにいう私を、夫はそっと抱き締める。
「……これはこれで、新婚っぽいですし。悪くはありませんけど」
あれから二週間。
夫と私は、ほとんどすべての日を屋敷で過ごした。
――いや、正確には、ずっと寝室にいた気がする。
どれだけ溜め込んでいたんですか、と突っ込みたくもなるけれど、私自身も満更ではなかった。
会えなかった半年を埋めるかのように、互いを確かめ合ったこの二週間は、控えめに言っても――
とても、とても幸せな時間だったのだから。
しかも、その二週間の間になんと、
夫に呪いをかけた張本人である魔女が、屋敷まで様子を見に来たのだ。
突然、窓の外に現れた彼女の姿に、私は腰を抜かしそうになった。
魔女を見るのが初めてだった、という理由もある。
だがそれ以上に、私たちが――情事の真っ最中だったことが大きい。
そんな状況の私たちを一目見るなり、彼女は大きな声で喚き出した。
「はぁ~!? なんで元に戻ってんのよ!
くっそ、つまんない展開ね!
あんな姿だったのに受け入れてもらったなんて!
せっかく奥さんに拒絶されて落ち込むアンタを、わざわざ嘲笑いに来たっていうのに!」
一通り好き放題に愚痴を吐き出したあと、彼女はぷいっと顔を背けた。
「……私だって。
私を受け入れてくれる人が、この世界のどこかに、きっといるんだから……!」
そんな捨て台詞を残し、魔女は空の向こうへと消えていった。
率直に言って、嵐のような人物だった。
結局、夫の呪いは帰還した時点ではまだ解けていなかったのか――
それを聞く機会は、ついぞなかった。
けれど、彼女の話しぶりから察するに、まあ……そういうことなのだろう。
「悪くない、か。
俺は、四六時中シエラと一緒にいられて、最高に幸せだった」
夫のあまりにも真っ直ぐな告白に、私は思わず目を見開いた。
「え、そうなんですか?」
こんなにあからさまな言葉を口にする夫が珍しくて、驚きながら問い返す。
「……シエラは、そうではなかったのか?」
まるで叱られた犬のように不安げな表情をする夫が、たまらなく愛おしい。
私はそっと、彼の骨ばった頬に手を伸ばした。
「私も。最高でしたとも」
「!」
ぎゅっと、抱き締める腕に力がこもる。
そのまま、私はぽつりと言った。
「旦那様って、私が思っていたより……
私のこと、ずっと好きだったんですね」
すると夫は、驚いたように目を丸くし、私を抱いていた腕をゆっくりと離した。
そして、口元に手を当てる。
「……結婚当初から、ずっと愛情は示してきたつもりだったんだが……
伝わっていなかったのか?」
(え、いつ!?)
出掛けるときは、こちらから誘うことのほうが圧倒的に多かった。
むしろ、私が構ってもらいに行っていた記憶しかない。
けれど、今になって思い返してみれば――
出掛けた際は必ず向こうから手を繋いできて、
どんなに仕事で遅くなり疲れていても、私の話をきちんと聞いてくれて、
出張でない限り、三食のうちどれか一つは必ず一緒に食事をしてくれていた。
向こうが分かりにくかったのか、
それとも、私が致命的に鈍感だったのか。
どちらなのかは分からない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
「私たち……思っていたより、ずっと深く愛し合っていたんですね」
――なお、結局のところ。
最終日も、例によって寝室で過ごすことになった、とだけ伝えておく。
結論から言おう。
あの後の夫は、凄かった。
重くなった身体では、うまく動けないのでは――
そんな心配をしていた自分が、馬鹿だったと思えるほどに。
彼は自分の身体をよく把握していた。
重さにきちんと気を配りながら、触れ合うことを忘れない。
さすがは騎士というべきか、基本的な体の使い方が違う。
器用に片腕で身体を支え、無理のない体勢を保ち続けていた。
一方の私はというと。
以前よりもずっと近く、彼の体温や存在を感じていて――
その安心感に、何度も意識が遠のきそうになった。
気が付いた頃には、すっかり力が抜け、そのまま眠ってしまっていた。
そして今。
彼の太い腕を枕にして、二人並んで眠っている。
――はず、だったのだが。
頭の下の感触が、少しずつ変わっていくのを感じた。
(……え?)
違和感に目を覚まし、そっと彼のほうへ身体を向ける。
そこにいたのは、
出立前と変わらない――
無駄な脂肪など、どこにも見当たらない夫の姿だった。
まじまじと、夫の姿を見つめる。
穏やかな寝息を立てている彼は、全く起きる素振りがない。
(――おかえりなさい)
それが夢ではないと、ようやく実感できて。
シエラは夫を起こさないよう、ゆっくりと身体を寄せる。
そうして、固い彼の身体をそっと抱き締め、再度目を閉じた。
◇
シエラが次に目を覚ましたとき、夫の姿はなかった。
(これは、間違いなく――)
夜着を纏ったまま、窓際へと歩み寄り、そっと外を覗く。
そこには、早速鍛錬を再開している夫の姿が見えた。
まったく。
本当なら、妻が起きるまで一緒に寝ているのが正解だろうに。
けれど、いかにも彼らしい行動に、思わずクスリと笑みがこぼれる。
鍛錬が終わったら、久しぶりに二人で朝食を取ろう――
おそらく夫は、自分が元の姿に戻ったことを、シエラがまだ知らないと思っているはずだ。
彼は、シエラを見て、どんな反応をするのだろう。
では、こちらはどんな顔で迎えてあげようか。
考えるだけで胸が高揚し、
同じ屋敷の中にいるというのに、早く夫に会いたくてたまらなかった。
シエラがちょうど身支度を終えた頃、鍛錬を終えたのだろうディーノが部屋へ戻ってきた。
「シエラ」
すでに着替えを済ませ、ディーノの帰りを待っていたシエラを見て、彼はその名を呼ぶ。
「おかえりなさい、ディーノ様」
結局、シエラが返した反応は至って普通のものだった。
けれど、その一言は、思った以上にディーノの胸に刺さったらしい。
(わ)
ディーノが、
シエラが今までに見たことのないほどの、満面の笑みを浮かべた。
「……ただいま」
噛みしめるように告げられたその声に、まだ早朝だというのに、身体がかっと熱くなる。
(平常心、平常心――)
目を閉じ、ふぅっと深く息を吐いて心を落ち着けていると、ディーノの筋肉質な腕がシエラの身体を絡め取った。
あ、と思う間もなく、ベッドへと押し倒される。
「あ、あの、私、支度を終えたんですが――」
「構わない」
いや、私が構う。
むしろ、手伝ってくれた侍女たちが泣く。
「朝食は、」
「あとでいい」
待て待て。私はお腹が空いているのだ。
何せ寝込んでいたせいで丸一日食べそびれている。
「旦那様、ご飯を先に――」
言い終える前に、彼の唇がそっと私の口を塞いだ。
さらに、逃げられないように両手をまとめて押さえられ、そのままベッドへと倒される。
気づけば、視界いっぱいにディーノの姿があった。
――昨日の気遣いは、いったいどこへ行ったのだろう。
言いたいことは山ほどある。
けれど、彼の慰労休暇が始まったばかりだったことを思い出し、
(……まあ、いいか)
結局、そう思ってしまうあたり、私も大概だと思いながら、流れに身を任せた。
◇
「明日で休暇も終わりか⋯⋯」
朝に目覚めてすぐ、夫が名残り惜しそうに呟く。
「結局、どこにも行けなかった⋯⋯」
「すまない、怒っているか?」
不貞腐れたようにいう私を、夫はそっと抱き締める。
「……これはこれで、新婚っぽいですし。悪くはありませんけど」
あれから二週間。
夫と私は、ほとんどすべての日を屋敷で過ごした。
――いや、正確には、ずっと寝室にいた気がする。
どれだけ溜め込んでいたんですか、と突っ込みたくもなるけれど、私自身も満更ではなかった。
会えなかった半年を埋めるかのように、互いを確かめ合ったこの二週間は、控えめに言っても――
とても、とても幸せな時間だったのだから。
しかも、その二週間の間になんと、
夫に呪いをかけた張本人である魔女が、屋敷まで様子を見に来たのだ。
突然、窓の外に現れた彼女の姿に、私は腰を抜かしそうになった。
魔女を見るのが初めてだった、という理由もある。
だがそれ以上に、私たちが――情事の真っ最中だったことが大きい。
そんな状況の私たちを一目見るなり、彼女は大きな声で喚き出した。
「はぁ~!? なんで元に戻ってんのよ!
くっそ、つまんない展開ね!
あんな姿だったのに受け入れてもらったなんて!
せっかく奥さんに拒絶されて落ち込むアンタを、わざわざ嘲笑いに来たっていうのに!」
一通り好き放題に愚痴を吐き出したあと、彼女はぷいっと顔を背けた。
「……私だって。
私を受け入れてくれる人が、この世界のどこかに、きっといるんだから……!」
そんな捨て台詞を残し、魔女は空の向こうへと消えていった。
率直に言って、嵐のような人物だった。
結局、夫の呪いは帰還した時点ではまだ解けていなかったのか――
それを聞く機会は、ついぞなかった。
けれど、彼女の話しぶりから察するに、まあ……そういうことなのだろう。
「悪くない、か。
俺は、四六時中シエラと一緒にいられて、最高に幸せだった」
夫のあまりにも真っ直ぐな告白に、私は思わず目を見開いた。
「え、そうなんですか?」
こんなにあからさまな言葉を口にする夫が珍しくて、驚きながら問い返す。
「……シエラは、そうではなかったのか?」
まるで叱られた犬のように不安げな表情をする夫が、たまらなく愛おしい。
私はそっと、彼の骨ばった頬に手を伸ばした。
「私も。最高でしたとも」
「!」
ぎゅっと、抱き締める腕に力がこもる。
そのまま、私はぽつりと言った。
「旦那様って、私が思っていたより……
私のこと、ずっと好きだったんですね」
すると夫は、驚いたように目を丸くし、私を抱いていた腕をゆっくりと離した。
そして、口元に手を当てる。
「……結婚当初から、ずっと愛情は示してきたつもりだったんだが……
伝わっていなかったのか?」
(え、いつ!?)
出掛けるときは、こちらから誘うことのほうが圧倒的に多かった。
むしろ、私が構ってもらいに行っていた記憶しかない。
けれど、今になって思い返してみれば――
出掛けた際は必ず向こうから手を繋いできて、
どんなに仕事で遅くなり疲れていても、私の話をきちんと聞いてくれて、
出張でない限り、三食のうちどれか一つは必ず一緒に食事をしてくれていた。
向こうが分かりにくかったのか、
それとも、私が致命的に鈍感だったのか。
どちらなのかは分からない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
「私たち……思っていたより、ずっと深く愛し合っていたんですね」
――なお、結局のところ。
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