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入学式
4 帝国騎士団団長ドミニク
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その頃エリックはというと。
(はぁ~だるいな~ 早く帰りたい。確か次で最後だっけ……… っは! 殺気?)
エリックは顔を動かさず、悟られないようにに辺りを窺う。この感覚、洞察力は並の兵士には決して出来ことのない芸当だ。この辺からエリックの優秀さが窺える。
(感じるにしても、これは俺に対してじゃねーな。どこのどいつだ、こんなめんどくさい日に仕事増やすような奴は)
視線を殺しながら辺りを探っていると、その主はすぐに見つかった。察するに、殺意を隠す気は無さそうだ。殺気の主を見つけると、エリックはすぐにその男を尾行する。
(アイツだ。何だってこんなに殺伐としてやがんだ?後を追うか)
コツコツ
歩いていると次の受験会場が見えてくる。
(あれか、大きいな。ってさっきのうるせぇカップルか。あ~あ、やる気失せるな~)
アリサとオルバのことだ。
対人試験の会場は、非常に盛り上がってきた。何故なら教師だけではなく、名のある騎士や冒険者も試験官を務めるからだ。
貴族の者たちは二次試験は免除される、つまりその時点で合格が確定しているので、観客席でゆったりと眺められるのだ。そもそもなぜ帰らずにそんなめんどくさいことをするのか、それは決まっている。自分の派閥に勧誘をするためだ。自分の派閥が大きければ大きいほど、卒業した時に莫大な利権を得ることができるからだ。手下に功績を挙げさせて、それを横取りしたりすれば良いのだから。そうでなくとも繋がりというものはとても便利なものである。
なのでそこでは、あれは使えない。そいつはいいな。などといった品定めがされていた。
その時、観客席で一際大きな歓声が上がる。
「精霊魔法の使い手だ!すげーすげー。エルフでもないのに。そして可愛いな、アイツ俺のペットにしてやるか。ハハハハハ」
取り巻きどもも同調する。
「そうですね。ゾルゲ様のペットにふさわしい者である思います」
「そうだろう、そうだろう。なんせこの俺様が目をつけた者なんだからな。では、頼んだぞ?」
「はっ。私にお任せ下さいませ」
まずいぞ、この俺が目をつけたモノにハエが群がりやがった。先手を打たねば!
「おいトリン」
「ハハッ。少し計画を早めて参ります」
「分かっていると思うが、奴らと対立するようなことには……」
「お任せ下さい。エルドール様のお立場が危うくなるようなことは無いように計らいますので」
そう言うとトリンはその場を後にする。
(流石はトリンだ。この俺の右腕にふさわしいだけの事はある。ただ、どのような手を使うのか気になるな)
ふてぶてしい二重あごを擦りながら、エルドールは対人試験を満足気眺めていた。
「じゅ、受験番号1225番アリサ。い、いきます!」
アリサの対人試験が始まった。相手は帝国騎士団団長ドミニクだった。今回の試験官としてはかなり部類だ。普通ならハズレを引いたと嘆いてしまうものだが、アリサは違った。自分の力がどこまで通じるのか、試せることに悦びを感じていた。
帝国騎士団団長ドミニク。彼は生きる伝説であった。彼はの生まれは平民の出であったが、少し裕福な商人の家庭であった為、貴族同様の英才教育受けた彼は、晴れてこの学院に入学。入学後もたゆまぬ努力と根性で、この学園で最優秀の成績を修めることができた。貴族優勢のこの社会で、それは極めて希なことであった。それだけでも民衆からは称賛に値した。卒業後は帝国騎士団に入団し、獅子のごとく出世コース這い上がっていった。それは平民出の彼にとっては辛い日々出会っただろう。
初めは罵られ、権力も暴力に屈したかもしれない。それでも彼は諦めなかった。
そして10年前ついにチャンスが訪れた。帝国軍は森の奥地潜む魔族たちを討ち滅ぼす計画を立てた。
現在の帝国にとって魔族は敵だ。有無を言わさず滅ぼすべき、諸悪の根源という認識だ。その様に受け継がれてきたし、教育している。故に誰も疑問を持たない。
10年前の戦いでドミニクは、敵の指揮官である魔族の頭領を倒した。それにより一級戦功を認められ、帝国騎士団団長に任命された。それは帝国軍最強の証である。貴族としてののし上がり、今の地位を確固たるものにした国の英雄だ。
民衆の希望の星である。
誰もが憧れる英雄の1人。そんなドミニクと模擬戦を交えられることに、アリサは心の底から悦びをあげていた。体は恐怖と悦びで震え剣を上手く持てない。
(落ち着け私!上手く出来なくて当たり前なんだ。だってあのドミニク団長だもの)
「アリサと言ったか、少し落ち着きなさい。それでは、調子が出ないだろう? 私は君に期待しているんだ。失望させないでくれよ」
言葉からは優しいのか、ただ戦闘が好きなのかは分からないだろう。だがアリサには感じられた、それは優しさからくるものだろうと。その厳つい顔に似合わず、穏やかで柔らかな笑みで迎えてくれたからだ。
ドミニクはこの娘から、才能の一端を感じ取ったのかもしれないが、その言葉に優しさが含まれていたのは間違いないだろう。
すぅー、はぁー……
「もう大丈夫。ありがとうございます、ドミニク団長」
審判員の先生が痺れを切らしたのか、
「あの~すいません。そろそろ始めていただけますか?」
「いや~すまんすまん。悪いね待たせて、もう大丈夫だから」
ドミニクのダンディーな頬笑みに試験官の女性は思わず見とれてしまう。だか、
「ハァッ!」
アリサが先に仕掛けた。試験管の女性はそちらへと意識を向ける。
(はぁ~だるいな~ 早く帰りたい。確か次で最後だっけ……… っは! 殺気?)
エリックは顔を動かさず、悟られないようにに辺りを窺う。この感覚、洞察力は並の兵士には決して出来ことのない芸当だ。この辺からエリックの優秀さが窺える。
(感じるにしても、これは俺に対してじゃねーな。どこのどいつだ、こんなめんどくさい日に仕事増やすような奴は)
視線を殺しながら辺りを探っていると、その主はすぐに見つかった。察するに、殺意を隠す気は無さそうだ。殺気の主を見つけると、エリックはすぐにその男を尾行する。
(アイツだ。何だってこんなに殺伐としてやがんだ?後を追うか)
コツコツ
歩いていると次の受験会場が見えてくる。
(あれか、大きいな。ってさっきのうるせぇカップルか。あ~あ、やる気失せるな~)
アリサとオルバのことだ。
対人試験の会場は、非常に盛り上がってきた。何故なら教師だけではなく、名のある騎士や冒険者も試験官を務めるからだ。
貴族の者たちは二次試験は免除される、つまりその時点で合格が確定しているので、観客席でゆったりと眺められるのだ。そもそもなぜ帰らずにそんなめんどくさいことをするのか、それは決まっている。自分の派閥に勧誘をするためだ。自分の派閥が大きければ大きいほど、卒業した時に莫大な利権を得ることができるからだ。手下に功績を挙げさせて、それを横取りしたりすれば良いのだから。そうでなくとも繋がりというものはとても便利なものである。
なのでそこでは、あれは使えない。そいつはいいな。などといった品定めがされていた。
その時、観客席で一際大きな歓声が上がる。
「精霊魔法の使い手だ!すげーすげー。エルフでもないのに。そして可愛いな、アイツ俺のペットにしてやるか。ハハハハハ」
取り巻きどもも同調する。
「そうですね。ゾルゲ様のペットにふさわしい者である思います」
「そうだろう、そうだろう。なんせこの俺様が目をつけた者なんだからな。では、頼んだぞ?」
「はっ。私にお任せ下さいませ」
まずいぞ、この俺が目をつけたモノにハエが群がりやがった。先手を打たねば!
「おいトリン」
「ハハッ。少し計画を早めて参ります」
「分かっていると思うが、奴らと対立するようなことには……」
「お任せ下さい。エルドール様のお立場が危うくなるようなことは無いように計らいますので」
そう言うとトリンはその場を後にする。
(流石はトリンだ。この俺の右腕にふさわしいだけの事はある。ただ、どのような手を使うのか気になるな)
ふてぶてしい二重あごを擦りながら、エルドールは対人試験を満足気眺めていた。
「じゅ、受験番号1225番アリサ。い、いきます!」
アリサの対人試験が始まった。相手は帝国騎士団団長ドミニクだった。今回の試験官としてはかなり部類だ。普通ならハズレを引いたと嘆いてしまうものだが、アリサは違った。自分の力がどこまで通じるのか、試せることに悦びを感じていた。
帝国騎士団団長ドミニク。彼は生きる伝説であった。彼はの生まれは平民の出であったが、少し裕福な商人の家庭であった為、貴族同様の英才教育受けた彼は、晴れてこの学院に入学。入学後もたゆまぬ努力と根性で、この学園で最優秀の成績を修めることができた。貴族優勢のこの社会で、それは極めて希なことであった。それだけでも民衆からは称賛に値した。卒業後は帝国騎士団に入団し、獅子のごとく出世コース這い上がっていった。それは平民出の彼にとっては辛い日々出会っただろう。
初めは罵られ、権力も暴力に屈したかもしれない。それでも彼は諦めなかった。
そして10年前ついにチャンスが訪れた。帝国軍は森の奥地潜む魔族たちを討ち滅ぼす計画を立てた。
現在の帝国にとって魔族は敵だ。有無を言わさず滅ぼすべき、諸悪の根源という認識だ。その様に受け継がれてきたし、教育している。故に誰も疑問を持たない。
10年前の戦いでドミニクは、敵の指揮官である魔族の頭領を倒した。それにより一級戦功を認められ、帝国騎士団団長に任命された。それは帝国軍最強の証である。貴族としてののし上がり、今の地位を確固たるものにした国の英雄だ。
民衆の希望の星である。
誰もが憧れる英雄の1人。そんなドミニクと模擬戦を交えられることに、アリサは心の底から悦びをあげていた。体は恐怖と悦びで震え剣を上手く持てない。
(落ち着け私!上手く出来なくて当たり前なんだ。だってあのドミニク団長だもの)
「アリサと言ったか、少し落ち着きなさい。それでは、調子が出ないだろう? 私は君に期待しているんだ。失望させないでくれよ」
言葉からは優しいのか、ただ戦闘が好きなのかは分からないだろう。だがアリサには感じられた、それは優しさからくるものだろうと。その厳つい顔に似合わず、穏やかで柔らかな笑みで迎えてくれたからだ。
ドミニクはこの娘から、才能の一端を感じ取ったのかもしれないが、その言葉に優しさが含まれていたのは間違いないだろう。
すぅー、はぁー……
「もう大丈夫。ありがとうございます、ドミニク団長」
審判員の先生が痺れを切らしたのか、
「あの~すいません。そろそろ始めていただけますか?」
「いや~すまんすまん。悪いね待たせて、もう大丈夫だから」
ドミニクのダンディーな頬笑みに試験官の女性は思わず見とれてしまう。だか、
「ハァッ!」
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