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入学式
5 模擬戦
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「ハァッ!」
アリサが攻撃を仕掛けたのに気づき、意識を戻す。自分の仕事を忘れていないあたり、さすが最難関の学院で教師をしているだけの事はある。
アリサは魔法試験で見せたエナジーボールを放つ。
『大地に宿る精霊たちの唄。この身を糧に、緑の唄を紡ぐ
エナジーボール』
(恐らく躱すか防いだ時に隙ができる。そこを逃さずに攻めるわ!)
アリサは正面からではなく左から回り込んだ。
(ほう、なかなかやるではないか。普通ならもうこの時点で合格なんだが)
「ぬん」
ドワァーン
ドミニクはエナジーボールを盾で防いだ。盾で防がれたエナジーボールが爆発を起こし、衝撃とともに砂煙が舞う。視界が悪くなってしまった。だが大体の位置は予想がついている。アリサは迷わず砂埃の中へ飛び込んだ。
(貰った!)
ガキィン
耳障りな金属音が響いた。ドミニクを捉えたと思ったアリサは、不意にも吹き飛ばされてしまう。
「何でっ! ………… くっ」
「まだ少し甘いな。だがまぁ~悪くはない。本当ならここで終わってもいいんだが、これで終わりじゃないよな?」
「はい、まだやれます」
(だけど、私のエナジーボールでは、体制を全く崩してい無かったわ。それどころか反撃を喰らってしまった、なんて重い一撃なの。今の私に何が出来るの? もう勝ち筋なんて……)
「諦めるなー! アリサらしくも無いぞ、思いっきりいけー!」
遠くなる意識の中、オルバの声援が聞こてた。気持ちで負けてしまったアリサを、幼なじみのオルバが励ます。そのお陰で、アリサは自分を鼓舞することが出来た。
(そうだわ、私らしくもない。攻撃の手段は考えるものじゃなくて)
『大地に宿る精霊たちの唄。この身を糧に、緑の唄を紡ぐ
エナジーボール』
(感じるものよ!)
オルバの声援で目を覚ましたアリサは、展開したエナジーボールとともに走り出す。だが先程と違うのは、同時に5つも展開していることだ。
(いい顔になったな、この娘は伸びる。本気を出す気は無かったが……)
「悪いな、ちょっとやる気になってしまった」
それがアリサの、薄れゆく意識の中聞いた最後の言葉だ。
「なん… でぇ……」
アリサのエナジーボールがドミニクに当たる瞬間、ドミニクが消えた。否、消えるほど速く移動したのだ。そしてアリサの頭上に現れ、アリサの首筋へと刃を下ろす。それは手刀と言う、真心がこもった刃だった。
ドサッ
気を失い、倒れるメリッサをドミニクが支えた。
(この娘は目の前の高い壁を直に、肌で体感した。半端な強さではなく、本当の強さを知ることが出来たはずだ。これで強くなれなければそれまでということ。ただ単に俺の目が曇っていたというだけだ。でも大丈夫、この娘はきっと強くなる。そして、再び合間見えることがあるだろう。その時が来るまで、今やろうとした君の手を楽しみにしているよ。今ここで君の手を知るのはフェアじゃない気がしたからね)
「本当に悪かったね」
そこに試験官の先生が駆け寄った。心配そうにこちらを見つめていた。
「ドミニクさん! やり過ぎです。」
先生はアリサを医務室に運ぶよう支持をした。慣れているだけあって手際がよかった。
「ドミニクさん。説明の時にあれほど申し上げましたよね? ここいにる子達はこれから学院生になる可能性のある子たちなんです。そうでなくてもまだ子供なんです。後遺症が残ったりしたら………」
この職員、レベッカもドミニクに憧れる1人だ。だがそれでも、言わなければならないこともある。職員として、試験官として対等の立場で。それには勇気がいることだった。並の職員では、軽く注意することさえしないだろう。それくらいの相手なのだ。
この女性は出世するだろうな。それがドミニクの感想だった。
そうではない。ふるふると首を振り、ドミニクは我に返る。
「申し訳ありません。この娘の可能性を感じ、教育する喜びを思い出してしまいました。つい本気を出してしまい、申し訳ない」
ドミニクは申し訳なさそうに謝罪をした。
隣ではオルバが心配そうに介抱していた。
「君はアリサ君の連れかな? やってしまった私が言うのもなんだが、気絶しているだけだ。安静にしていれば問題ないよ」
オルバはそうですかと呟き、他の職員と共に闘技場を後にした。
「いいなぁ」
レベッカは思わず呟いてしまった。思っていたよりも人当たりがよく、貴族特有の他を見下す自尊心がなくて、この教師は本当にファンになってしまった。そしてそんなドミニク団長に認められたアリサに嫉妬してしまったのだ。
単に認められたからなのから、その羨ましさで嫉妬したのかは分からなかった。ただ、レベッカの頬は真っ赤に染まっていた。
アリサが攻撃を仕掛けたのに気づき、意識を戻す。自分の仕事を忘れていないあたり、さすが最難関の学院で教師をしているだけの事はある。
アリサは魔法試験で見せたエナジーボールを放つ。
『大地に宿る精霊たちの唄。この身を糧に、緑の唄を紡ぐ
エナジーボール』
(恐らく躱すか防いだ時に隙ができる。そこを逃さずに攻めるわ!)
アリサは正面からではなく左から回り込んだ。
(ほう、なかなかやるではないか。普通ならもうこの時点で合格なんだが)
「ぬん」
ドワァーン
ドミニクはエナジーボールを盾で防いだ。盾で防がれたエナジーボールが爆発を起こし、衝撃とともに砂煙が舞う。視界が悪くなってしまった。だが大体の位置は予想がついている。アリサは迷わず砂埃の中へ飛び込んだ。
(貰った!)
ガキィン
耳障りな金属音が響いた。ドミニクを捉えたと思ったアリサは、不意にも吹き飛ばされてしまう。
「何でっ! ………… くっ」
「まだ少し甘いな。だがまぁ~悪くはない。本当ならここで終わってもいいんだが、これで終わりじゃないよな?」
「はい、まだやれます」
(だけど、私のエナジーボールでは、体制を全く崩してい無かったわ。それどころか反撃を喰らってしまった、なんて重い一撃なの。今の私に何が出来るの? もう勝ち筋なんて……)
「諦めるなー! アリサらしくも無いぞ、思いっきりいけー!」
遠くなる意識の中、オルバの声援が聞こてた。気持ちで負けてしまったアリサを、幼なじみのオルバが励ます。そのお陰で、アリサは自分を鼓舞することが出来た。
(そうだわ、私らしくもない。攻撃の手段は考えるものじゃなくて)
『大地に宿る精霊たちの唄。この身を糧に、緑の唄を紡ぐ
エナジーボール』
(感じるものよ!)
オルバの声援で目を覚ましたアリサは、展開したエナジーボールとともに走り出す。だが先程と違うのは、同時に5つも展開していることだ。
(いい顔になったな、この娘は伸びる。本気を出す気は無かったが……)
「悪いな、ちょっとやる気になってしまった」
それがアリサの、薄れゆく意識の中聞いた最後の言葉だ。
「なん… でぇ……」
アリサのエナジーボールがドミニクに当たる瞬間、ドミニクが消えた。否、消えるほど速く移動したのだ。そしてアリサの頭上に現れ、アリサの首筋へと刃を下ろす。それは手刀と言う、真心がこもった刃だった。
ドサッ
気を失い、倒れるメリッサをドミニクが支えた。
(この娘は目の前の高い壁を直に、肌で体感した。半端な強さではなく、本当の強さを知ることが出来たはずだ。これで強くなれなければそれまでということ。ただ単に俺の目が曇っていたというだけだ。でも大丈夫、この娘はきっと強くなる。そして、再び合間見えることがあるだろう。その時が来るまで、今やろうとした君の手を楽しみにしているよ。今ここで君の手を知るのはフェアじゃない気がしたからね)
「本当に悪かったね」
そこに試験官の先生が駆け寄った。心配そうにこちらを見つめていた。
「ドミニクさん! やり過ぎです。」
先生はアリサを医務室に運ぶよう支持をした。慣れているだけあって手際がよかった。
「ドミニクさん。説明の時にあれほど申し上げましたよね? ここいにる子達はこれから学院生になる可能性のある子たちなんです。そうでなくてもまだ子供なんです。後遺症が残ったりしたら………」
この職員、レベッカもドミニクに憧れる1人だ。だがそれでも、言わなければならないこともある。職員として、試験官として対等の立場で。それには勇気がいることだった。並の職員では、軽く注意することさえしないだろう。それくらいの相手なのだ。
この女性は出世するだろうな。それがドミニクの感想だった。
そうではない。ふるふると首を振り、ドミニクは我に返る。
「申し訳ありません。この娘の可能性を感じ、教育する喜びを思い出してしまいました。つい本気を出してしまい、申し訳ない」
ドミニクは申し訳なさそうに謝罪をした。
隣ではオルバが心配そうに介抱していた。
「君はアリサ君の連れかな? やってしまった私が言うのもなんだが、気絶しているだけだ。安静にしていれば問題ないよ」
オルバはそうですかと呟き、他の職員と共に闘技場を後にした。
「いいなぁ」
レベッカは思わず呟いてしまった。思っていたよりも人当たりがよく、貴族特有の他を見下す自尊心がなくて、この教師は本当にファンになってしまった。そしてそんなドミニク団長に認められたアリサに嫉妬してしまったのだ。
単に認められたからなのから、その羨ましさで嫉妬したのかは分からなかった。ただ、レベッカの頬は真っ赤に染まっていた。
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