Return to that forest

朱夏

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それは死者からのギフト

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ひとは どんなに哀しい時も 
 同時に2つのことは 考えられないと
その本に書いてあったので
誕生日の早朝 散歩に出た

 夏の終わり

今日 散る 芙蓉は
 純白の花弁を 気高く開く

まもなく消える 蝉時雨が
 ジンジンと 大樹の森を震わせている

実らぬ日陰の 苦瓜は
 わずかな朝日をつかまえようと 
  今朝も その細い蔓を伸ばした

われらが生きるのは
 いま この瞬間
 
一秒前に零れたミルクさえ取り戻せず
明日のパンを食べることもできない
 
哀しみは 去りゆく死者からの
 我を忘れ 今を生き
 さらに がむしゃらに進めという
生き残るものへのギフトだったのだ
 
届いたよ──
  ありがとう
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