分析能力で旅をする ~転生した理由を探すためにレインは世界を回る

しき

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第一章

第2話『少女の名前はレイン』

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部屋の扉を開けるとすぐ下にリビングが見えた。どうやら吹き抜けになっているようだ。そこにはかまから何かを取り出すシェーラの姿がある。

「あっ、落ち着いた?」

私に気づいたシェーラは笑顔で手招きをした。私は壁伝いの廊下を渡り、階段を下りた。

「あの、助けてくれて、ありがとう」

さっき言い忘れたことをまずは伝えた。ここで言わないと、また機会を失ってしまいそうだからだ。

「どういたしまして。さっ、そこの椅子に座ってて」

シェーラは顔を少しこちらに向けて爽やかな声で応じる。

言われた通りに椅子に座ったはいいものの、どうにも落ち着かない。目のやり場に困り、シェーラを見たり、窓の外を見たりしてしまう。田舎者が都会に来てそわそわしてしまう気持ちというのはこんな感じなのだろうか。…ここはどちらかというより田舎っぽいけれど。

キョロキョロしていると、その拍子にシェーラと目が合った。シェーラはニコッと笑い、私もそれに釣られて笑う。

「ふふっ。可愛い顔するじゃない」

そう言われて、次第に恥ずかしくなる。無意識に目を逸らしてしまった。

「はい、出来たわ」

シェーラは皿に盛られた二つのパンと紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。パンの方は焼き立てのクロワッサンである。空腹ではなかったが、出来立てのクロワッサンの匂いは食欲をそそる。一個手に取り、千切ってみると、そこからまたバターの香りがする。口へ運ぶとその甘さが口内に広がる。

「…美味しい」

そんな言葉を洩らすと、よかった、とシェーラが小声で呟き、反対側の椅子に座る。

あっという間にパンを食べ終えて、紅茶を一口飲む。するとすっきりとした味とは別に、身体がみなぎるような感覚を覚える。

「さて、改めて自己紹介しましょうか。私はシェーラ。貴方は?」

「私は…」

すぐに名乗ろうとしたけれど、そこで初めて気づく。自分の名前がわからないのだ。

「…ごめんなさい。名前を覚えてない」

「じゃあ、他に覚えていることは?」

そう言われて自分が何者なのか、じっくり思い出そうとする。しかし、出身、年齢は勿論、親の存在すら分からない

「何も思い出せない…」

そうシェーラに伝えると、彼女は腕を組んで考え込む仕草をした。

「…あなたの名前が分かる方法を知ってるけど、正直に話すって約束してね」

シェーラは優しい顔をしてそう言った。ただ、私のことを私よりも知っていそうな言い方だった。それが少しいぶかしいものの、今頼れるのは目の前にいる彼女だけだ。

「わかった。どうするの?」

「目を瞑って、手を胸に添えて、自分を視るの」

「自分を視る?」

「まぁ、とりあえずやってみて」

念能力みたいなものなのか?まず目を瞑り、手を胸に添えた。自分を視る、というのがよくわからないけれど…。とりあえず自分を俯瞰するイメージを持ってみた。



【名称】レイン
【種族】転生者
【性別】女
【年齢】13
【職業】-
【体力】100/100
【魔力】50/50
【属性】水
【弱点】無
【スキル】分析Lv8・暗視Lv1
【異常】-



「…!」

脳に電流が流れるような感覚がきた。記憶はなくとも、こんな感覚は初めてだと身体が言っている。そして同時に入ってきた情報は想像以上のもので、予想外すぎるものだった。

とりあえず名前は【レイン】。多少の違和感があったが、心の中で復唱すると、段々そんな名前だったような気がしてきた。

鏡で見た通り性別は女、年齢も13。職業がないのも、まぁ理解はできる。

問題はそれ以外。転生者?体力?スキル?ゲームや漫画でしか知らない言葉だ。ここはそんな世界なのか?ぐるぐると思考を回すが、理解が追いつかない。

「…わかった?」

シェーラの掛け声ではっとする。

「えっと、名前は、レイン」

「レインね。他には?」

明白あからさまな探りを入れてきている。性別や年齢はともかく、転生者と言って信じてもらえるのだろうか。いや、そもそも私自身が信じられない。

シェーラはじっと私を見つめる。私を待っている。『正直に話すって約束してね』。彼女の言葉を思い出すと、いままで見ていた微笑みが急に怖くなってきた。

「なんか、転生者…らしい」

遂に言ってしまった。シェーラの目を見るのが耐えられずに下を向く。だけどシェーラがまだ私を見つめているのは分かる。

「正直者ね。あなた」

返ってきた言葉は思いもよらないものだった。それに吃驚びっくりしてシェーラの顔を見ると、怪訝そうな顔すらせず、穏やかな表情だった。

「…信じるの?」

「まぁ、ね」

自分自身でも信じられないのに、どうして簡単に信じるのか。シェーラの態度に困惑してしまう。

「じゃあ正直者のあなたにもう一ついいことを教える。私を視て、さっきみたいに私のことを知ってみて」

さっきみたいって…。まだよくわかってないけど、同じようにすればいいのかな。

自分を視た時と同じように、シェーラの事を静かに視た。



【名称】シェーラ・トロニカル
【種族】魔女
【性別】女
【年齢】130
【職業】魔法使い
【体力】10,000/10,000
【魔力】50,000/50,000
【属性】火・幻
【弱点】水
【スキル】地魔術Lv9・水魔術Lv9・火魔術Lv10・風魔術Lv9・雷魔術Lv8・氷魔術Lv9・光魔術Lv10・闇魔術Lv7・無魔術Lv6・幻術Lv9・治癒術Lv5・分析Lv3・浮遊Lv2・危険予知Lv3・転移Lv3・剣技Lv2・弓技Lv3・結界Lv6
【異常】-



「…」

暫く呼吸が出来なかった。

魔女といえば御伽噺やゲームに出てくるあの魔女?グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』で子供を食べようとした?それが目の前にいることが信じられなかった。

「…イン。レイン?」

シェーラに呼ばれ、ようやく我に返った。だが目の前の人間が、実は魔女だと再認識するとじわじわと怖くなってきた。顔が青ざめているのが自分でもわかる。

「どう?」

対して魔女は、敢えて私に情報を見せて試しているように見えた。何を期待しているのか。これは正直に答えたほうがいいのか。もし、スキルというものが本物ならば、嘘をついた瞬間に私は跡形もなく消されてしまうだろう。だが、本当のことを言ってしまえば、それはそれで私の存在を消されてしまいそうでもある。

「ま…魔女…?」

どうすればいいか考えていたものの、結局らしい嘘も思いつかずに答えてしまった。絞り出すような細い声だった。

ところが魔女は腹を抱えて笑い出した。私は口をあけて呆然としてしまった。

「あははは!そんな怖がらないでよ。別に何かしようってわけじゃないから」

私のイメージしていた魔女と全然違う。フランクすぎる。恐怖は消え去ったが、それを通り越して拍子抜けしてしまった。

「正直に答えてくれたから、この世界のこと色々教えてあげる。転生者ちゃん」
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