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第二章
第7話『眼帯』
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トリッシュと外に出たとき、ギルドの前に馬車が止まっていた。馬には一人の男性と幾人かの子どもたちが馬に野菜を与えている。そしてなんだかいい香りもしてくる。どうやら中には食料がたんとあるらしい。
「あっ、ボンゴレさんこんにちはー!」
トリッシュが馬を撫でる男性に挨拶をして近づくと、男性は振り向いて私達の方を向いた。
「おお、パトリシアちゃんじゃあないか。今日もご苦労様」
「おじさんもお疲れ様。今日は調達?」
「ああ、そうだ。今からギルドの人たちに運んでもらうんだよ」
二人は和やかに言葉を交わしていたが、男性は私に気づいてトリッシュに目配せをする。
「あぁレイン、この人はボンゴレって人でね、ギルドが世話になってる商人なんだ」
トリッシュが紹介するとボンゴレはどうも、と軽く片手を上げて挨拶をする。
「こんにちは。レインです」
「こんにちは、レインちゃん…ん?」
ボンゴレさんはじっと私を見た。
「パトリシアちゃん、この子はどういった?」
…ちょっとボンゴレの声色が変わったような気がした。声色だけじゃなくて、表情も変わったような…。
「今日からギルドメンバーになったんだよ。で、私が案内役をしてるの」
「そうかそうか、じゃあ早く行ってあげると良い。頑張ってね」
「うん!おじさんも頑張ってね!さっ、レイン、行こっか」
私とトリッシュは馬車を迂回して道に出ようとした。だけど先程ボンゴレが私を見たときの顔が妙に気になって、ちらっと彼を見た。彼もまだ私を見ていたが、私と目が合うと慌てて顔を背けた。
初めに来たのは扉がない店だった。修理中、というわけでもなく、元からそういう造りにしていそうだ。
「ここが武具屋。剣、盾、弓、なんでもあるよ」
中に入ると壁に綺麗に並べられている武器達が私を出迎えた。木製や石製のものが多いが剣に限っては刃が全て金属でできている。妙に威圧的だ。
「そういえばレインは魔法使いになるんだよね?杖がまだないなら今買っちゃおう」
トリッシュに言われ、私は杖のコーナーを見る。見た目が違うものが三種類あり、それが四、五本ずつ並んでいる。
木製の杖は私がイメージする魔法使いが使いそうなものだ。先端は渦巻きの模様をしており、持ち手の部分は滑らかに削られている。
石製の杖は随分と形が不格好だ。手触りは滑らかだが、デコボコしていてちょっと持ち方に困る。先端の部分も形がバラバラで、持ち手とほぼ変わらない大きさのものもあれば、瘤のように大きいものもある。いっそハンマーのように殴ったほうが威力がありそうだ。
鉄製のものは光沢が目立つ。先端もきれいに整えられており、持ってみるとひんやりとする。ただ木製や石製に比べて少し重く感じる。
さて、感触は木製のものが良さそうだが、実際の性質はどんなものか、確かめてみる必要がありそうだ。
【名称】ロッド
【成分】ケール
【属性】風
【破損】40%
【効果】属性強化
【名称】ストーンロッド
【成分】グレイストーン
【属性】地
【破損】30%
【効果】属性強化
【名称】アイアンロッド
【成分】鉄
【属性】火
【破損】20%
【効果】属性強化
うむむ。杖によって属性が変わるのか。そしてそれによって属性魔法の効果が高まる。一応どの属性魔法も使えるからどれを使っても損することはない。でも、だからこそ悩ましくなる。
そして聖水にもあった破損の項目。恐らく壊れやすさのことを指しているのだろう。木製に比べて鉄製のは壊れにくい…。そこだけなら武器として長持ちするから鉄がいいのか…?
「初めて買うなら…この木製の杖とかいいんじゃない?」
うんうんと悩む私にトリッシュは木製の杖を手渡してきた。思わず私はそれを受け取ってしまった。
「そうなの?どうして?」
「どうしてって、一番安いからね」
そういえば値段を見ていなかった。木製は大銅貨3枚、石製は大銅貨6枚、鉄製は小銀貨2枚らしい。うーん、まだこの辺りの相場がどういうものかわからないのに、いきなり鉄製を買うのは危険か。石製もそこまで高くはなさそうだけど…やっぱり持ち手が気になる。
「そっか。じゃあこれにしようかな」
トリッシュから渡された木製の杖を持って武具屋の店主に話しかけた。マジックバッグから巾着を取り出し銀貨を1枚渡すと、店主はちょっと困りながら受け取りお釣りを数えて、私に小銀貨9枚と大銅貨7枚を手渡した。私の手に溢れそうだ。すぐに巾着にしまうと、先程よりも巾着が重く感じた。店主から、次からは小銀貨で頼むよ、と言われ、私は苦笑いするしかなかった。
武具屋から出た私達は、鍛冶屋、食材屋、インク屋、料理店、宿屋などを巡った。そうして繁華街を往復してギルドの隣の建物まで戻ってきた。
「最後にここが道具屋だね。ポーションとか、魔力瓶とか、あとは装飾品とかも売ってるよ。折角だから見てみる?」
トリッシュに言われて私はコクリと頷き、道具屋に入っていった。
冒険するとなればいつでも街に帰ってこられるとは限らない。魔物と連戦することも考えられるし、野宿の可能性もある。そうなったときにすぐに使える道具があれば心強い。
とりあえずポーション、魔力瓶、包帯を見つけた。これらは無くで困ることはない。他にも役に立ちそうなものはあったが、現状の私には必要としていないものばかりだった。
装飾品もあると言っていたから一応見てみると、メガネやネックレス、リボンや髪飾りなどがあった。どれも効果自体はなく、価格も一番安いものでも小銀貨1枚かかる。本当に装飾品なんだな、と思った。
とりあえずポーションとかのものだけ買えばいいか、と最後の装飾品を見ると、黒い眼帯があった。
「眼帯、かぁ」
それも他と同様になんの効果もない装飾品だった。価格も小銀貨2枚とまさかの鉄の杖と同価格である。こんなもの買う人はまずいないだろう。
だけどアポロンさんとかの反応を見ると、少しは自分の目がどう見られるか、周りを気にしたほうがいいんじゃないかとも考える。
いや、今は必要なものを揃えるだけだ。ある程度安定して稼げるようになってから、また考えよう。私はその場を離れてカウンターへ向かった。
「おー!早速ポーションと魔力瓶と包帯を五個ずつ買うなんて、やる気十分だね!」
支払い中にトリッシュが後ろから覗いてきた。ちょっと恥ずかしくなりつつ、買ったものを順々にマジックバッグへ入れる。よくよく考えると仲間がいるわけでもないのに、こんなに買う必要はなかったんじゃないかと反省した。
「いいのいいの。消耗品は多く買って損することないんだから。さて、一回ギルドに帰ろっか!」
…まぁ消耗品ならトリッシュの言う通りあればあるだけいいか。でも、お金の配分感覚をじっくり養わないといけないな。
そう思いながら、私とトリッシュは道具屋を出てギルドへ戻った。
「戻ったか」
ギルドへ戻るとアポロンが受付付近で待っていた。近付くとアポロンは私にカードを渡した。
「ギルドカードだ。これがあればギルドメンバーだという証明ができる」
そのカードの左側には私の名前や職業、発行場所が記され、右側には大きく「G」の文字が書かれていた。これが所謂ランクってやつなのだろう。
「ありがとう」
私が礼を言うとアポロンはすぐに奥の扉へ向かってしまった。
「くれぐれもギルドメンバーとして恥ずかしい振る舞いはしてくれるなよ」
アポロンは去り際にそう言って奥の部屋に入っていった。その扉が閉まると、私の耳元でトリッシュが囁いた。
「ごめんね。うちのギルドマスター、愛想無くって」
「ううん。むしろ、ギルドマスターって厳しそうなイメージしてたから、よかったよ」
アポロンは一見冷たそうに見えて、すごい気遣い上手な人だと思う。実際、初めは私を魔物の手下だと疑っていたものの、いざ人間だとわかれば初心者の私がしっかりギルドで仕事ができるように、トリッシュを付き添わせたわけだから。
「面白いこと教えてあげる。アポロン、ギルドじゃああだけど、奥さんには頭が上がらないんだよ」
トリッシュが意地悪な笑みを浮かべて扉に指差している。アポロンとその奥さんとのやりとりを見たことありそうな言い方だ。しかしそれを聞いてから先程の彼の後ろ姿を思い返すと、街のためだけでなく奥さんのために働いていると見れば、ちょっと微笑ましいように思えた。
ただ、帰る場所があると見れば、羨ましく、寂しい気持ちになった。
「あっ、ボンゴレさんこんにちはー!」
トリッシュが馬を撫でる男性に挨拶をして近づくと、男性は振り向いて私達の方を向いた。
「おお、パトリシアちゃんじゃあないか。今日もご苦労様」
「おじさんもお疲れ様。今日は調達?」
「ああ、そうだ。今からギルドの人たちに運んでもらうんだよ」
二人は和やかに言葉を交わしていたが、男性は私に気づいてトリッシュに目配せをする。
「あぁレイン、この人はボンゴレって人でね、ギルドが世話になってる商人なんだ」
トリッシュが紹介するとボンゴレはどうも、と軽く片手を上げて挨拶をする。
「こんにちは。レインです」
「こんにちは、レインちゃん…ん?」
ボンゴレさんはじっと私を見た。
「パトリシアちゃん、この子はどういった?」
…ちょっとボンゴレの声色が変わったような気がした。声色だけじゃなくて、表情も変わったような…。
「今日からギルドメンバーになったんだよ。で、私が案内役をしてるの」
「そうかそうか、じゃあ早く行ってあげると良い。頑張ってね」
「うん!おじさんも頑張ってね!さっ、レイン、行こっか」
私とトリッシュは馬車を迂回して道に出ようとした。だけど先程ボンゴレが私を見たときの顔が妙に気になって、ちらっと彼を見た。彼もまだ私を見ていたが、私と目が合うと慌てて顔を背けた。
初めに来たのは扉がない店だった。修理中、というわけでもなく、元からそういう造りにしていそうだ。
「ここが武具屋。剣、盾、弓、なんでもあるよ」
中に入ると壁に綺麗に並べられている武器達が私を出迎えた。木製や石製のものが多いが剣に限っては刃が全て金属でできている。妙に威圧的だ。
「そういえばレインは魔法使いになるんだよね?杖がまだないなら今買っちゃおう」
トリッシュに言われ、私は杖のコーナーを見る。見た目が違うものが三種類あり、それが四、五本ずつ並んでいる。
木製の杖は私がイメージする魔法使いが使いそうなものだ。先端は渦巻きの模様をしており、持ち手の部分は滑らかに削られている。
石製の杖は随分と形が不格好だ。手触りは滑らかだが、デコボコしていてちょっと持ち方に困る。先端の部分も形がバラバラで、持ち手とほぼ変わらない大きさのものもあれば、瘤のように大きいものもある。いっそハンマーのように殴ったほうが威力がありそうだ。
鉄製のものは光沢が目立つ。先端もきれいに整えられており、持ってみるとひんやりとする。ただ木製や石製に比べて少し重く感じる。
さて、感触は木製のものが良さそうだが、実際の性質はどんなものか、確かめてみる必要がありそうだ。
【名称】ロッド
【成分】ケール
【属性】風
【破損】40%
【効果】属性強化
【名称】ストーンロッド
【成分】グレイストーン
【属性】地
【破損】30%
【効果】属性強化
【名称】アイアンロッド
【成分】鉄
【属性】火
【破損】20%
【効果】属性強化
うむむ。杖によって属性が変わるのか。そしてそれによって属性魔法の効果が高まる。一応どの属性魔法も使えるからどれを使っても損することはない。でも、だからこそ悩ましくなる。
そして聖水にもあった破損の項目。恐らく壊れやすさのことを指しているのだろう。木製に比べて鉄製のは壊れにくい…。そこだけなら武器として長持ちするから鉄がいいのか…?
「初めて買うなら…この木製の杖とかいいんじゃない?」
うんうんと悩む私にトリッシュは木製の杖を手渡してきた。思わず私はそれを受け取ってしまった。
「そうなの?どうして?」
「どうしてって、一番安いからね」
そういえば値段を見ていなかった。木製は大銅貨3枚、石製は大銅貨6枚、鉄製は小銀貨2枚らしい。うーん、まだこの辺りの相場がどういうものかわからないのに、いきなり鉄製を買うのは危険か。石製もそこまで高くはなさそうだけど…やっぱり持ち手が気になる。
「そっか。じゃあこれにしようかな」
トリッシュから渡された木製の杖を持って武具屋の店主に話しかけた。マジックバッグから巾着を取り出し銀貨を1枚渡すと、店主はちょっと困りながら受け取りお釣りを数えて、私に小銀貨9枚と大銅貨7枚を手渡した。私の手に溢れそうだ。すぐに巾着にしまうと、先程よりも巾着が重く感じた。店主から、次からは小銀貨で頼むよ、と言われ、私は苦笑いするしかなかった。
武具屋から出た私達は、鍛冶屋、食材屋、インク屋、料理店、宿屋などを巡った。そうして繁華街を往復してギルドの隣の建物まで戻ってきた。
「最後にここが道具屋だね。ポーションとか、魔力瓶とか、あとは装飾品とかも売ってるよ。折角だから見てみる?」
トリッシュに言われて私はコクリと頷き、道具屋に入っていった。
冒険するとなればいつでも街に帰ってこられるとは限らない。魔物と連戦することも考えられるし、野宿の可能性もある。そうなったときにすぐに使える道具があれば心強い。
とりあえずポーション、魔力瓶、包帯を見つけた。これらは無くで困ることはない。他にも役に立ちそうなものはあったが、現状の私には必要としていないものばかりだった。
装飾品もあると言っていたから一応見てみると、メガネやネックレス、リボンや髪飾りなどがあった。どれも効果自体はなく、価格も一番安いものでも小銀貨1枚かかる。本当に装飾品なんだな、と思った。
とりあえずポーションとかのものだけ買えばいいか、と最後の装飾品を見ると、黒い眼帯があった。
「眼帯、かぁ」
それも他と同様になんの効果もない装飾品だった。価格も小銀貨2枚とまさかの鉄の杖と同価格である。こんなもの買う人はまずいないだろう。
だけどアポロンさんとかの反応を見ると、少しは自分の目がどう見られるか、周りを気にしたほうがいいんじゃないかとも考える。
いや、今は必要なものを揃えるだけだ。ある程度安定して稼げるようになってから、また考えよう。私はその場を離れてカウンターへ向かった。
「おー!早速ポーションと魔力瓶と包帯を五個ずつ買うなんて、やる気十分だね!」
支払い中にトリッシュが後ろから覗いてきた。ちょっと恥ずかしくなりつつ、買ったものを順々にマジックバッグへ入れる。よくよく考えると仲間がいるわけでもないのに、こんなに買う必要はなかったんじゃないかと反省した。
「いいのいいの。消耗品は多く買って損することないんだから。さて、一回ギルドに帰ろっか!」
…まぁ消耗品ならトリッシュの言う通りあればあるだけいいか。でも、お金の配分感覚をじっくり養わないといけないな。
そう思いながら、私とトリッシュは道具屋を出てギルドへ戻った。
「戻ったか」
ギルドへ戻るとアポロンが受付付近で待っていた。近付くとアポロンは私にカードを渡した。
「ギルドカードだ。これがあればギルドメンバーだという証明ができる」
そのカードの左側には私の名前や職業、発行場所が記され、右側には大きく「G」の文字が書かれていた。これが所謂ランクってやつなのだろう。
「ありがとう」
私が礼を言うとアポロンはすぐに奥の扉へ向かってしまった。
「くれぐれもギルドメンバーとして恥ずかしい振る舞いはしてくれるなよ」
アポロンは去り際にそう言って奥の部屋に入っていった。その扉が閉まると、私の耳元でトリッシュが囁いた。
「ごめんね。うちのギルドマスター、愛想無くって」
「ううん。むしろ、ギルドマスターって厳しそうなイメージしてたから、よかったよ」
アポロンは一見冷たそうに見えて、すごい気遣い上手な人だと思う。実際、初めは私を魔物の手下だと疑っていたものの、いざ人間だとわかれば初心者の私がしっかりギルドで仕事ができるように、トリッシュを付き添わせたわけだから。
「面白いこと教えてあげる。アポロン、ギルドじゃああだけど、奥さんには頭が上がらないんだよ」
トリッシュが意地悪な笑みを浮かべて扉に指差している。アポロンとその奥さんとのやりとりを見たことありそうな言い方だ。しかしそれを聞いてから先程の彼の後ろ姿を思い返すと、街のためだけでなく奥さんのために働いていると見れば、ちょっと微笑ましいように思えた。
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