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6話 王子視点
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カムルがリリカのいるリードラ伯爵家の屋敷に向かう前日、カムルは自室で思案していた。
レゾニス国の第三王子カムルは、リリカが婚約破棄されたと知って驚くしかなかった。
最初は国内で有名な魔法士イリスの娘なのに、水魔法しか使えないと噂を耳にする。
水魔法の実力は高いようで会ってみたけど、リリカは自らの実力を隠しているようだった。
婚約者がいるのに2人で会うべきではないと、カムルはリリカの婚約者ラフルと一緒に会っている。
リリカが魔法を説明する際のラルフの反応から、優秀と思われないよう振る舞わせているとわかってしまう。
力を隠すのなら会うこともないと考えていた時、リリカが急に語り出した。
その物語は実在している人物の話ではないが内容に惹かれて、カムルは頻繁にラルフに会うようにしている。
実際は婚約者であるリリカに会うためだったが、ラルフに会うという形にしなければならない。
用意してくれた水はリリカが魔法で出したようで美味しく、頻繁に来ているから徐々に強くなっていることがわかる。
この時までカムルは、ラルフがリリカの力を知られて奪われることを危惧していると推測していた。
だからこそ婚約を破棄したことが信じられず、ラルフの元に行くとリリカとは婚約を破棄したと聞き、しばらくの間は様子をみることにした。
ラルフはサーシャと婚約が決まったようで、何が起きているのかわからない。
何故サーシャなのか……性格的に合うとは思えないが、カムルにとってはどうでもいいことだ。
自分の部屋で現状を整理して、カムルはリリカに会いたくなっていた。
「リリカは伯爵家の令嬢だ。俺が父上に頼めば婚約できるはず……リリカが、俺のことを好きなのかが問題だな」
彼女の頼みは全て聞くつもりで、困らせることはしない。
カムルはできることをするが、それでもリリカ次第で諦めるしかないだろう。
「それはわかっているし、婚約破棄されたばかりでショックを受けているかもしれない……それでも、俺は今すぐリリカと婚約したいんだ」
リリカには婚約者がいたから、異性ではなく友人として接していた。
婚約破棄されたことでこれから会えなくなるのが嫌で、その気持ちがなんなのかわからない。
――とにかくすぐにリリカの元へ行き、彼女の気持ちを確認しよう。
別の相手とラルフが婚約しているのなら問題ないと考えたカムルは、これからリリカのいるリードラ伯爵家に向かおうとしていた。
◇◆◇
カムルはリリカとの婚約が決まり、力を見せると父の国王は納得してくれた。
強くなっていたゴブリンの群れを一瞬で倒せた辺り、今まで鍛えてきたのがわかる。
元婚約者ラルフは実力を隠すよう命令していたのは、力の差を理解したくなかったかもしれない。
報告を終えてから、リリカはカムルの部屋で今日の出来事を話している。
強力な水魔法が使える理由をリリカから詳しく聞くことにしても、カムルにはよくわからなかった。
「リリカが空気中の水蒸気?について理解しているから強力な水魔法が使えるというのは、よくわかった……それとは別に、気になることがある」
「なんでしょうか?」
「リリカの膨大な魔力だ。普通では身につかないだろう」
とんでもない威力の水魔法を繰り出したリリカだけど、大量のゴブリンを一掃するためには膨大な魔力が必要となる。
リリカの魔力は常識外で、水に関する知識で魔法が強くなったり飲む用の水による強化だとしても、飲む用の水で同じぐらい強化されているはずのラルフよりも魔法士として遥かに優れていた。
気になって尋ねてしまうが、リリカ本人もわからないのかもしれない。
そんなことを考えてしまうと、カムルは予想外の返答を聞くことになる。
「それは魔力回復水を使った修行をしたからです」
「……修行?」
「魔力回復水が作れるようになってから私は限界まで魔力回復水を作りました」
詳しく説明を聞くに、魔力回復水は作った際の魔力によって回復量が変わるらしい。
コップ一杯ぐらいの水を作る際に使った魔力の2割が、飲めば回復する魔力となるようで、それがどう修行になるのだろうか?
「2、3日休むと魔力が全快するので、そこから数日前に作った魔力回復水を全部飲みます」
「リリカは何を言っている?」
「魔力が全快の時に魔力回復水を飲むと魔力が覚醒するみたいです。試して正解でした」
「今とんでもないことを言ったな。魔力の覚醒? はじめて聞くぞ?」
魔法を教えてくれた先生から聞いたことがなくて、カムルは全身を震わせる。
まだ未知の力が魔力にはあるのかと、リリカの話は興味が尽きない。
「魔力が覚醒した状態で最高質の魔力回復水をとにかく作り、全快したらそれを飲むを繰り返すと魔力量が凄いことになっていました」
貴重とされている魔力を回復させる聖水だが、リリカなら作り出せる。
それによる修行はリリカしかやろうと思わず、誰にも真似できないだろう。
「無茶苦茶だ……リリカは、どうしてそんな発想ができる?」
「ゲームでは全快の状態で回復アイテムを使うと、最大値が増えるものもあったから……えっと、なんとなくです!」
説明したと思えば慌てて誤魔化しているけど、カムルはそれで納得するしかない。
リリカが話す際に時々でてくる「異世界ファンタジー」や「ゲーム」という発言の意味が、カムルにはわからないからだ。
発言にわからないことが幾つあっても、カムルの婚約者がリリカということはわかる。
これからはリリカが言った通り、レゾニス国が更に繁栄するのは間違いない。
気になることがあるとすれば……最近は優秀な魔法士として活躍できているラルフと、一緒に行動する時がくるかもしれないということぐらいだ。
リリカの水魔法の力で強くなっただけだから、今後はラルフの力が弱まっていくのは間違いない。
それでも急激に弱まるわけではないから、今までのようにカムルや他の魔法士と一緒に行動することになりそうだ。
その時がくれば間違いなく、元婚約者ラルフはリリカと婚約破棄したことを後悔するだろう。
レゾニス国の第三王子カムルは、リリカが婚約破棄されたと知って驚くしかなかった。
最初は国内で有名な魔法士イリスの娘なのに、水魔法しか使えないと噂を耳にする。
水魔法の実力は高いようで会ってみたけど、リリカは自らの実力を隠しているようだった。
婚約者がいるのに2人で会うべきではないと、カムルはリリカの婚約者ラフルと一緒に会っている。
リリカが魔法を説明する際のラルフの反応から、優秀と思われないよう振る舞わせているとわかってしまう。
力を隠すのなら会うこともないと考えていた時、リリカが急に語り出した。
その物語は実在している人物の話ではないが内容に惹かれて、カムルは頻繁にラルフに会うようにしている。
実際は婚約者であるリリカに会うためだったが、ラルフに会うという形にしなければならない。
用意してくれた水はリリカが魔法で出したようで美味しく、頻繁に来ているから徐々に強くなっていることがわかる。
この時までカムルは、ラルフがリリカの力を知られて奪われることを危惧していると推測していた。
だからこそ婚約を破棄したことが信じられず、ラルフの元に行くとリリカとは婚約を破棄したと聞き、しばらくの間は様子をみることにした。
ラルフはサーシャと婚約が決まったようで、何が起きているのかわからない。
何故サーシャなのか……性格的に合うとは思えないが、カムルにとってはどうでもいいことだ。
自分の部屋で現状を整理して、カムルはリリカに会いたくなっていた。
「リリカは伯爵家の令嬢だ。俺が父上に頼めば婚約できるはず……リリカが、俺のことを好きなのかが問題だな」
彼女の頼みは全て聞くつもりで、困らせることはしない。
カムルはできることをするが、それでもリリカ次第で諦めるしかないだろう。
「それはわかっているし、婚約破棄されたばかりでショックを受けているかもしれない……それでも、俺は今すぐリリカと婚約したいんだ」
リリカには婚約者がいたから、異性ではなく友人として接していた。
婚約破棄されたことでこれから会えなくなるのが嫌で、その気持ちがなんなのかわからない。
――とにかくすぐにリリカの元へ行き、彼女の気持ちを確認しよう。
別の相手とラルフが婚約しているのなら問題ないと考えたカムルは、これからリリカのいるリードラ伯爵家に向かおうとしていた。
◇◆◇
カムルはリリカとの婚約が決まり、力を見せると父の国王は納得してくれた。
強くなっていたゴブリンの群れを一瞬で倒せた辺り、今まで鍛えてきたのがわかる。
元婚約者ラルフは実力を隠すよう命令していたのは、力の差を理解したくなかったかもしれない。
報告を終えてから、リリカはカムルの部屋で今日の出来事を話している。
強力な水魔法が使える理由をリリカから詳しく聞くことにしても、カムルにはよくわからなかった。
「リリカが空気中の水蒸気?について理解しているから強力な水魔法が使えるというのは、よくわかった……それとは別に、気になることがある」
「なんでしょうか?」
「リリカの膨大な魔力だ。普通では身につかないだろう」
とんでもない威力の水魔法を繰り出したリリカだけど、大量のゴブリンを一掃するためには膨大な魔力が必要となる。
リリカの魔力は常識外で、水に関する知識で魔法が強くなったり飲む用の水による強化だとしても、飲む用の水で同じぐらい強化されているはずのラルフよりも魔法士として遥かに優れていた。
気になって尋ねてしまうが、リリカ本人もわからないのかもしれない。
そんなことを考えてしまうと、カムルは予想外の返答を聞くことになる。
「それは魔力回復水を使った修行をしたからです」
「……修行?」
「魔力回復水が作れるようになってから私は限界まで魔力回復水を作りました」
詳しく説明を聞くに、魔力回復水は作った際の魔力によって回復量が変わるらしい。
コップ一杯ぐらいの水を作る際に使った魔力の2割が、飲めば回復する魔力となるようで、それがどう修行になるのだろうか?
「2、3日休むと魔力が全快するので、そこから数日前に作った魔力回復水を全部飲みます」
「リリカは何を言っている?」
「魔力が全快の時に魔力回復水を飲むと魔力が覚醒するみたいです。試して正解でした」
「今とんでもないことを言ったな。魔力の覚醒? はじめて聞くぞ?」
魔法を教えてくれた先生から聞いたことがなくて、カムルは全身を震わせる。
まだ未知の力が魔力にはあるのかと、リリカの話は興味が尽きない。
「魔力が覚醒した状態で最高質の魔力回復水をとにかく作り、全快したらそれを飲むを繰り返すと魔力量が凄いことになっていました」
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