早見さん家の異世界姉妹飯

凛音

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怪鳥たまごのふわとろオムライス②

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☆材料(1人分)
・白飯    茶碗1杯分
・ケチャップ 大さじ3杯
・玉ねぎ      1/2個
・にんじん    1/2本
・謎の卵      1個
・牛乳    大さじ1杯
・バター     10g


 卵を台所に置き、必要な調理器具を揃えた。今回作るのは、子供の喜ぶ王道のオムライスだ。材料がすこしばかり足りないが、即席で作れるのでこんな時に最適解といえよう。

 まずはチキンライスだが、細かく刻んだ玉ねぎとにんじんを温めたフライパンに入れる。野菜が苦手かもしれないので、今回は2つとも5mmほどにカットした。肉類は使わず、炒める時間は玉ねぎが半透明になるくらいが目安だ。
 玉ねぎに火が通ったら、塩・コショウを加えて軽く味付けを済ませる。ポイントは、ここでご飯を入れる前に先にケチャップを少々加えて野菜と絡めておくこと。これをするだけで、ご飯がべちゃべちゃになりにくい。
 程よくケチャップが混ざったところで、最後にご飯を投入。全体にケチャップが馴染むまで優しく混ぜれば、チキンライス(肉なし)の完成だ。

「ん……悪くないかな」

 軽く味見してから皿に盛り、次はメインの卵に移った。チキンライスが冷めないうちに、手早く行わなくては。
 
「……………………」

「もうすぐ出来るから、ちょっと待っててね」

 香ばしい匂いに釣られたのか、少女が台所の様子を柱の陰からじっと眺めていた。
 鋭い視線を感じながら、紫音はカウンターにズシリと置かれた色鮮やかな卵を見下ろした。通常の卵とは違い、軽く拳で叩いても割れる気配がない。硬い殻に楕円形の形から察するに、鳥類の卵なのだろうか。

「仕方ないか」

 紫音は物置部屋を漁り、用具入れから木製のハンマーを引っ張り出した。そして卵の頂点に狙いを定め、勢いよくハンマーを振り下ろした。
 手荒いやり方だがハンマーは卵に穴をあけ、ひっくり返すと中から新鮮な黄身が大量に溢れ出てきた。予想はしていたが、これだけでも市販の卵の20個分はある。今回の使用分以外は予備のボウルに移して冷蔵庫にしまい、残した分を熱したフライパンに流し込んだ。

 お店で出てくるようなオムライス作りのコツは、必要以上にかき混ぜない事。
 火は強火ではなく中火程度で、卵が焦げ付かないように注意する。流し込んだ卵は菜箸で円を描くように、半熟になるまでかき混ぜるのがおすすめだ。
 半熟になったところで火を止め、フライパンを傾けて卵の手前をひっくり返し、奥の方へと慎重に包んでいく。こうすることで、半熟の面を中に包み込める。
 だが完全に閉じるようなことはせず、奥の方からも同様に卵を閉じ、最後にフライパンの縁とヘラを使ってひっくり返せば、あとは余熱で自然と繋ぎ目にも火が通りオムライスの完成だ。

「よし。できたよ」

 完成したオムライスとお冷を机に並べ、紫音は少女に手招きした。少女ははじめ、警戒するようにこちらを眺めていたが、空腹には勝てなかったのだろう。椅子にちょこんと座ると、机の上を見て初めて表情に変化を見せた。
 水面に輝く星空が映るような、そんな輝かしい目をしていた。かなりお気に召した事は確かだった。

「ごめん、1人暮らしだから子供用のナイフとかないんだよね。今日は私がやるけど怒らないでよ」

 通じていないと思うが念のため断りを入れ、紫音はオムライスにそっとナイフを当てて引いた。
 裂け目からとろりとあふれる半熟卵に釣られ、少女の小さな口からも涎があふれそうになっていた。卵が部屋の明かりを反射し黄金に輝くさまは、なかなかに食欲がそそられる。

「食べていいよ」

 差し出されたスプーンを受け取ると、少女は控えめに掬い、おずおずと口に運んだ。食器を使う習慣がないのか、その握り方や食べ方は豪快だった。

「…………っ!」

「どう?結構うまくいったと思うんだけど」

 少女の顔に、花が咲いた。
 ずっとこわばっていた表情がとろけ、机の下で足を小さくばたつかせている。

――美味しそうに食べるなぁ

 紫音が誰かに料理を振る舞ったのはこれが初めてだった。今までは自分のためだけに作っていたが、他人が食べて喜んでくれるこの感覚は案外悪くないものだ。
 少女はあまりの美味しさに、口周りがケチャップで赤くなっても気にすることなくガツガツ食べ進めていく。よっぽど腹を空かせていたのだろう、水を飲むのも忘れているようだった。
 だが慌てすぎたのか、すぐにむせてせき込んでしまった。

「ほら。お水飲んだほうが――……」

 そこで水を差しだした紫音の手が、ピタリと止まった。目の前の少女が、瞳に大粒の涙を浮かべていたからだ。
 むせて苦しくなったせいではないだろう。瞳に溜まった雫はやがて決壊し、少女の頬をボロボロと零れ落ちていく。止めたくても、少女にはどうすることも出来ないようだった。
 まるでずっと怯えていた心が、安心して溢れ出た涙。その様子に紫音は何も言わず、静かに食事をする少女を眺めていた。


  
 
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