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# 6ー友情ー
しおりを挟むその看護師と医者の部屋には、それぞれの机とベッドが配置されている。
当直の際にはここで仮眠をとることもできるようになっており、シャワールームやロッカールームも完備されている。要は、まるでマンションの一室のような雰囲気だ。
「な、なぁ……もう昼だし、飯にしねぇ?」
「あ、ああー、もうそんな時間だったのか!?」
望は驚いたように言い、自分の愛用の腕時計を見つめた。確かに和也の言う通り、時計はお昼を指している。
「ああ、確かに、そうみたいだな」
和也は軽く答え、望は椅子から立ち上がった。
この病院には職員用の食堂がある。男性ばかりの職場で、忙しくて食事を作る暇がない職員が多いからだろう。だから職員用に食堂が完備されているのだ。
歩きながら、望は和也に気になっていたことを尋ねてみる。
「なぁ、和也……俺って、そんなに女っぽいか?」
「え? あ、うーん……」
少し考え込み、本当に望に言っていいのか悩む和也。
さっき望はその言葉を聞いただけで怒っていたのだから、余計に言いにくいのも当然だ。しかし、望が自らそのことを聞いてきた以上、怒る理由はない。
「あー……そのことなぁ?
確かに俺的にも言いにくいところだけど……あー、そうだなぁ……少なくとも俺はそう思うかな?」
和也は素直に言うが、言いにくそうなのは変わらない。
「あー……やっぱり、そうなんだよな?」
半ば諦めたように、望も認める。
ある意味、和也の答え方で納得できたのかもしれない。
二人は会話を続けながら食堂へ向かい、カウンターでご飯を受け取り、お盆に載せて空いている席に座った。
この食堂は広く、大学の食堂のような雰囲気がある。カウンターで自分の食べたい料理を頼み、セルフで席まで運ぶスタイルだ。
病院では多くの職員が働いている。医者、看護師はもちろん、清掃員や薬剤師など、様々な職種のスタッフがこの食堂で休憩できるように工夫されている。
時間はお昼丁度。外来はまだ終わっていないようで、混雑する時間帯に比べると人は少なめだ。
入口側に窓はないが、反対側には病院の中庭を見渡せるカウンター席があり、木々や草花が植えられている。緑豊かで、ちょっとした癒しの空間だ。
「ん? まだ、さっき桜井さんが言ってたこと、気にしてんのか?」
和也は興味深そうに望に尋ねる。
「あ、ああ……まぁ、ちょっとな。
だってさ、俺を見てあんなこと言うんだぜ?
普通、初めて会う人に向かって言える言葉だと思うか?」
「もしかして、あの患者さん……望に気があるんじゃねぇの?」
半分ふざけつつも、和也は本気でそう思っている。
実は、和也も知らず知らずのうちに望のことを好きになっていた。
相手は男性。
もし女性なら、きっとすぐに告白していただろう。
しかし男性だと、そう簡単には告白できないことを和也は理解している。
それでも、望とずっと一緒にいたいと思っているからこそ、告白できずにいるのだ。
もし告白してしまえば、二人の関係が壊れるかもしれない――
だから、今はただ見守るしかない。
和也は食事を口にしながら、望の横顔をそっと覗き込んだ。
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