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# 25ー友情ー
しおりを挟む夜中か、あるいは夜明けか。三時頃になると、望たちが働く春坂病院では、救急車のけたたましいサイレンが響き渡る。しかし、望たちにとっては日常茶飯事のことであり、患者が到着するまでには準備を整え、待機していなければならない。
その中で、当直中の望と和也は救急隊からの受け入れ要請を受け、病院内で受け入れ態勢を整えた。ほどなく、救急車が夜間救急入口に到着する。
「救急車が来たみてぇだな」
「ああ」
夜中に救急車が来るのは決して珍しいことではないが、その緊急性を示すサイレンは、現場での事態が深刻であることを意味する。望と和也は、ストレッチャーから降りる患者の表情や動きに目を光らせる。その対象が誰であれ、彼らにとっては同じ真剣さである。
しかし、救急隊員が名前を告げた瞬間、望の顔色は一変する。それが知り合いならなおさらだ。
「名前は……桜井雄介さん」
望は思わず目を見開き、次の瞬間にはストレッチャーに乗る患者の顔を確認する。やはり救急隊員の言う名前と、望が知る人物は一致していた。
「え? あ……う、嘘だろ!? ちょ、桜井さん! 桜井さーん!!」
周囲の救急隊員が次々と症状や搬送状況を伝えているにも関わらず、望はひたすら雄介の名を呼び続ける。親しい者の身を案じる自然な反応だ。しかし、雄介は意識がないらしく、望の問いかけに答えることはない。
その瞬間、雄介の消防制服の内ポケットから何か紙のようなものが落ちる。望はそれを拾うと、思わず手に取り、内容を読み始めてしまう。自分でも読んではいけないと思いながら、自然と目が止まったのだ。
一瞬目を通しただけの手紙だが、今は内容を理解している余裕はない。望は深呼吸し、気持ちを落ち着けてから、看護師たちに冷静に指示を出す。
手術は無事終了し、雄介は望のおかげで一命を取り留めた。現在はICUで経過観察中である。望はひと息つくと、自分の部屋へ戻る。そして、先ほど落ちた手紙を改めて手に取り、真剣な眼差しで読み始める。
「……マジかよ!?」
さっきは一瞬しか見ていなかったが、今度は内容に目を通す。
『桜井さんが誰かに命を狙われているだと!? しかも、初めて桜井さんがこの病院に来てから……犯人を見つけないと、例え回復しても再び危険にさらされることになるのでは? 今回は一命を取り留めたが、次に運ばれてきたとき、もし俺の手で救えない状態だったら……』
手紙の内容を理解した望の手は、思わず震える。誰もがそうだろう。現実に目の前で起こっている事態に対して、脅迫めいた手紙が加われば、心が揺れるのは当然だ。
一瞬取り乱した望だが、すぐに冷静さを取り戻す。そしてふと、あることを思い出したかのように、ICUにいる和也のもとへ向かう。
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