【R18】一目惚れされた俺!恋人は俺だけに甘いスパダリだった!

望月 キララ

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# 29ー記憶ー

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 「ほな、あの時、望が俺のこと……拒否した理由って言うのは、なんなん?」

 雄介はわずかに声を震わせながら問いかけた。
 ビール缶を握る手には力が入り、缶の側面がへこんでいく。

 「それはさっき言っただろ? それは本人から直接聞いた方がいいと思うぜ」

 和也は腕を組み、雄介の視線を受け止めながら静かに言った。
 その落ち着いた声音が、逆に雄介の胸をざわつかせる。

 「でもな……今更……できるわけないって……いうんか……」

 雄介の声が、かすれた。
 自分でも情けないと思っているのだろう。
 彼の瞳はテーブルの一点を見つめ、どこか遠くを見ているようだった。

 「望にそこは聞きにくいのか? そこはしょうがないんじゃねぇの?
 お前が望が電話してきた時に無視してなかったら、こんなことにはならなかったんだろ? 自業自得だよ……。
 お前もさ、望みたく一回悩んだ方がいいんじゃねぇの?
 それに、もしもう、お前が望のこと考えてないのなら、俺は望のこと奪いに行くからな!」

 和也はわざと挑発するように、にやりと口角を上げた。
 その言葉に、雄介はその場に立ち上がる。

 「それは絶対にアカン!」

 怒気を孕んだ声が部屋に響く。
 だが和也は微動だにせず、むしろ余裕の笑みを浮かべたままだ。

 「なら、ちゃんと望と話せよ。俺に望のことを奪われたくなかったらな!」

 和也はそこで立ち上がり、雄介と真正面から睨み合う。
 二人の間に、ピンと張りつめた空気が流れた。

 「あぁ! 分かったわ! 俺が望に電話して今回のことを話し合えばええってことなんやな!
 ほんで、もう、お前に望が向かんようにすればいいってことやな!」

 雄介の声には、怒りと決意が入り混じっていた。
 その様子を見て、和也は鼻先で笑い、軽く息を吐いた。

 「じゃあ、後はお前に望のことは任せたぜ」

 「……へ?」

 雄介は拍子抜けしたように間の抜けた声を上げる。
 和也はそんな雄介を見て、満足そうに微笑んだ。
 玄関の方へ向かう背中には、どこか達成感のような余裕が滲んでいる。

 ――きっと、ここまでのやり取りも全部、雄介を奮い立たせるための演技だったのだろう。
 現に、和也は振り返りざまに笑顔を見せていた。

 そして最後に、雄介に向かって言い放つ。

 「絶対にメールなんかで済ませようと思うんじゃないからな! 最低でも電話で話し合えよ! じゃなきゃ、望に気持ちを伝えることなんかできないからな!」

 その言葉は、まるで兄が弟に託すような力強さを持っていた。
 和也は望にも同じことを言っていた。
 ――だからこそ、これは“二人へのメッセージ”でもあるのだろう。

 和也は笑顔を浮かべたまま、玄関のドアを開けて出ていった。
 残された雄介の手には、潰れかけたビール缶だけが残っていた。
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