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# 40ー記憶ー
しおりを挟む望はリビングへ入ると、大きく息を吐き、ソファに体を預けた。
一日の疲れがどっと押し寄せてくる。
「お前も少しは休んだらどうだ? 疲れてるんだろ?」
望の言葉に、雄介は笑みを浮かべながら首を振る。
「俺の方は全然平気やから、気にせんでええよ。それに、ほら――飯の方も作らなあかんしな」
「そうか……」
望はそう答えながらも、雄介が慣れた手つきで台所に立つ姿を見ているうちに、
自分だけソファで休んでいるのが申し訳なく思えてきた。
結局、望は立ち上がり、雄介のもとへと歩み寄る。
「なんか、手伝うことあるか?」
「あー……今のところはないんかな。とりあえず、飯の用意は俺がするし、望の方はお風呂に入ってきたらどや?」
「あ、ああ……じゃあ、悪いけど、そうさせてもらうな」
望はそう告げてお風呂場へと向かった。
その背中を見送りながら、雄介はふっと優しい表情になる。
――ほんま、頑張り屋やなぁ。
そう心の中で呟くと、雄介は包丁を手に取り、夕飯の準備に取りかかった。
手際よく野菜を切り、フライパンの音が心地よくリビングへ響く。
やがて望がお風呂から上がる頃には、テーブルの上には湯気を立てる料理がずらりと並んでいた。
「おっ! マジかぁ!? 今日は久しぶりに“手料理”って感じがするんだけど! しかも、マジに美味そうだしさ!」
望はまだ髪が濡れており、首にタオルを巻いたままの姿でリビングに現れた。
その様子を見た雄介は、呆れたようにため息をつく。
「そんなに濡れた頭でおったら、風邪引くで」
「いいんだよ。もう暑いんだし、すぐ乾くだろ?」
「……ったく。しゃーないな」
そう言うと、雄介は望の首にかかっていたタオルを取り、そっと頭を拭きはじめた。
タオル越しに伝わる髪の柔らかさに、雄介の手の動きが少しだけ優しくなる。
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