【R18】一目惚れされた俺！恋人は俺だけに甘いスパダリだった！

# 49ー記憶ー

「そうやったんかぁ。それやったら、めっちゃ嬉しいわぁ。な、ほんなら、望のこと抱いてええ？」
「はい？ それは流石にダメに決まってるだろ？」
「ほら、汗かいたら熱下がるって言うやんかぁ」
「それは間違った知識だな。そんなことしたら余計に熱は上がるんだよ。それに体力も使うだろうが。だから、風邪の時にも安静が必要なわけ。体が調子悪いって訴える時は、体が休みたいって言ってるんだから、体を動かしてどうするんだよ」
「そうやったんか？ ほなら、俺が治ったら？」
「まぁ、そん時は抱かせてやるからさ」

　望はそう言うと、照れ隠しのように小さく息を吐きながら、雄介の身体を抱き締めた。
　雄介は安心したようにその胸の辺りへ顔を埋める。望の体温が自分の熱を少し和らげてくれるような気がした。

「ほんなら、おやすみ」
「おやすみ」

　二人はそれ以上の言葉を交わさず、静かに眠りについた。
　外では夜風がカーテンを揺らし、時折カーテンの隙間から月の光が二人を淡く照らしている。
　ただ寄り添うだけの夜が、こんなにも穏やかで温かい。

　──そして翌朝。

　望は目を覚ますと同時に、慌ただしく仕事の支度を始めた。
　部屋の隅には、昨夜使った氷枕と薬の包みがそのまま残っている。

「望は行ってまうんか？」
「ゴメン！ 本当は雄介の側にいてやりてぇんだけど……手術が入ってるからさ」
「そりゃ、確かに無理やんなぁ」
「ああ、そういうことだから」

　望は両手を合わせて雄介に向かい、軽く頭を下げる。
　そのまま部屋を出ようとしたが、ふと足を止め、振り返って言った。

「あのさ……雄介が良かったらでいいんだけど……ここに一緒に住まないか？」

「……へ？ 今なんて？」

　雄介は思わず上体を起こし、もう一度聞き返そうとする。
　だが、すでに望の姿はそこにはなかった。

　残された部屋の静けさの中で、雄介は呟く。

「今、確か……『一緒に住まへんか？』って言うてなかったか？ 望がそれでええって言うんやったら……それが一番嬉しいんやけどなぁ。それだけ、望も俺のこと好きやっていうことやろうし」

　雄介の頬には自然と笑みが浮かんでいた。
　高熱に浮かされた夜を越えた朝は、彼にとって何よりも優しい朝になっていた。