【R18】一目惚れされた俺!恋人は俺だけに甘いスパダリだった!

望月 キララ

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# 75ー記憶ー

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「ここが……ケホッ! ……火事になって……はぁ……はぁ……なった……みたいで……ゲホッ! その……防火シャッター……が……閉まって……」

「分かったって……もう! 喋らんでええからっ!」

 望の息が荒い。
 焦げた煙の向こうから聞こえるその声に、雄介の胸は締めつけられる。

 雄介は望のいる方を睨むように見つめながら、目の前の防火シャッターに両手をつく。

「これ……かいな……? これを開けたら、他の所にも火が回ってしまうからって……勝手に閉まるなんてな。 まだ、中に人が居るっていうのに……!」

 怒りと悔しさが混ざった拳が、金属のシャッターを何度も叩く。
 だが、厚い鉄板はびくともしない。
 カン、カン、と空しい音だけがデパートの通路に響いた。

 火事が発生すると自動で降りる防火シャッター。
 被害の拡大を防ぐための仕組み――だが今、その仕組みが雄介の前に“壁”となって立ちはだかっている。

 シャッターの向こう側には、助けを求める恋人・望がいる。
 だが雄介の手には何の装備もない。
 また――坂本親子のときと同じだ。

「このままじゃ……坂本の時と一緒やんけ……」

 拳を握りしめた雄介の指先が震える。
 悔しさと恐怖と、あの時の後悔が蘇る。
 もう、あんな思いは二度としたくない――。

 その時、シャッターの向こうから再び望のかすれた声が聞こえた。

「今……はぁ……はぁ……スプリンクラーが……ゲホッ! 作動……してる……」

「スプリンクラー!? それ、ホンマか!?」

 雄介は反射的に顔を上げ、目を見開く。
 喉の奥から絞り出したような望の声に、胸の奥が少しだけ軽くなった。

「良かった……! それなら、少しは時間が稼げるはずや……!」

 雄介はシャッターを睨みつけたまま、必死に考え始める。
 ――この鉄の壁をどうすれば越えられるのか。
 望を救うために、何ができるのか。
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