【R18】一目惚れされた俺!恋人は俺だけに甘いスパダリだった!

望月 キララ

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# 86ー記憶ー

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 だが、今の雄介にはもう望のことを見守ることしかできない。
 ここから先は、完全に救急隊員たちの仕事の領域――それを、雄介自身が一番よく理解していた。

 だからこそ、祈るしかなかった。
 ただ、神にすがるように。

 救急車の車内は、サイレンの音と機械の作動音が混ざり合い、張りつめた空気が漂っている。
 隊員たちが慌ただしく動き回り、心電図モニターのランプが小刻みに点滅していた。

 雄介は、ただ黙って望の方を見つめていた。
 手を握りたい――その衝動を、必死に抑える。
 いくら恋人でも、今は「男同士」という現実がその行動を縛る。
 せめて心の中で、望に呼びかけるしかなかった。

(頼む……望……目を覚ましてくれ……)

 その時だった。
 車内に、機械音が「ピッ、ピッ」と鳴り響く。

 さっきまで沈黙していたモニターが、反応を示したのだ。
 その音に救急隊員たちの動きが一瞬止まり、すぐに表情が変わる。

 俯いて祈っていた雄介も、その音にハッと顔を上げた。
 耳に届いたのは、誰もが知っている――心拍が戻った音。

 胸の奥が一気に熱くなり、雄介は思わず両手を強く握りしめる。
 息を呑むような静寂の後、救急隊員の一人が小さく安堵の声を漏らした。

 そして、次の瞬間。
 望のまぶたが、ゆっくりと震え、重そうに開かれる。

 その微かな動きを見逃さず、雄介は我を忘れて隊員たちを押しのけるように望の傍へ駆け寄った。

「大丈夫か? 望……!」

 その声は、震えていた。
 周りの目なんて、もうどうでもよかった。
 雄介は望の手を両手で包み込み、ギュッと握りしめる。

「……え? あ……うん……?」

 望はまだ意識が朦朧としているのか、焦点の合わない瞳で天井を見つめながら、ぼんやりと返事をする。

「そっか……ほなら、良かったわぁ」

 胸の奥がじんわりと熱くなり、雄介はようやく息をつく。

「なぁ、ここはどこだ?」
「ああ、ここか……ここは救急車の中やで」
「ふーん……」

 望は天井を見上げたまま、かすかに頷いた。
 そして、少し間を置いてから、ぽつりと尋ねる。

「じゃあさ、君は?」

「………!?」

 その問いに、雄介の瞳が大きく見開かれる。
 望の声は確かに彼のもの――けれど、その言葉の意味を理解した瞬間、雄介の胸に冷たいものが走った。
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