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 ……そう言われてみれば、俺からしてみたらキッチンの横辺りにドアがあるのが分かった。

 ……あーーそこにあったんだ……。

「荷物そこら辺に置いておいていいですからね……。 夜はまだまだこれからですから、お茶でも飲みましょう?」
「ああ……はい……」

   ……って、スイマセン……。 俺の部屋に来た時にお茶1つも出せなくて……。

 そう俺は心の中で謝る。

 俺は春馬に言われた通りにその辺にリュックを置くとテーブルの前にあるソファへと腰を下ろす。

 何気にそれは2人掛けのソファだった。

 ……本当……見た目と部屋って性格出るのかも……。 あ、いやいやいやーー俺の部屋は汚いが見た目は自分では気にしてる方だ。 そこは違う!

 俺がソファに腰掛けていると春馬はお茶を運んできて、そして俺の横へと腰を下ろす。

 一瞬、俺はその行動に目を見開いたのだが、

「スイマセン……生憎、ソファはこれしかないもので……隣に座ってもよろしいですか?」
「あ、え……? でも……ここは春馬の部屋だし……それに……俺達って、もう、そう遠慮する仲では……」

   と俺はそう恥ずかしそうに答える。

 意識してしまうと恋人同士というのは照れるもんだ。

「まぁ、確かにそうですよね……」

 そう嬉しそうに言う春馬。

 そして次の瞬間には俺の腰辺りに腕を回してきていた。

「……え? ん?」
「私達って……どういう仲、でしたっけ?」

   そう「仲」を強調して言ってくる春馬。

 ……確かに今さっき俺が言ったんだったな。 あ、でも……まだ、抵抗があるっていうのか……。

「映画でも見ます?」
「……映画、ですか!?」
「何もそんなに驚かなくてもいいじゃないんですか?」
「あ、まぁ……」
「それとも、そういうDVDにしますか?」

   そう怪しげに聞いてくる春馬。 でもその瞬間きっと俺は顔を真っ赤にしていただろう。 確かに高校生の頃は友達と一緒にそういうDVDを見たことはあったのだけど大人になってからは知り合いとでも友達とでも見たことはなかった。 流石に1人で見たことはあるのだけど。

「……って、そういうDVDって……!?」

   そう俺は恐る恐る聞いてみる。

「昔で言ったら、AVってやつですかね? 今はなんて言うのか分かりませんが……。 ま、ウチにあるのは男性同士のモノばかりですけど……。 ま、今後のお勉強の為に見てみてはいかがでしょうか?」

 ……って、それマジで言ってるのでしょうか?

   俺の頭の中で棒読み状態で質問している。 頭の中でなのだから、勿論、春馬には聞こえていないと思うのだけど。

 ……しかも、春馬の家のテレビってデカイじゃん!   しかも音も気にしているのかスピーカー完備してるし……。

「……って、音とか大丈夫なんですかね?」

   俺はある意味、頭の中がパニック状態なのかもしれない。 もしかしたら、ちょっと外れている質問なのかな?

「……え?   あ、大丈夫ですよ……。 ここは、防音対策はバッチリですから、寧ろ、大音量で聴いても外に音が漏れる心配はありませんからね……」

   ……あ、そう言われてみればそうだったのかもしれない。   もし春馬がグランドピアノを弾いたなら防音設備がなければ確実に近所迷惑だ。

「但し、窓を開けなければの話ですけどね……」
「あ、あーー成る程ね……」

   ……って、納得してる場合じゃないような気がするんだがな……。 だって、この部屋でそういうDVDを見せられるし、大音量で聞かされるだろうし、テレビもでかいし……もう、俺的にはどうしたらいいのか分からない状態だ。 
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