GPTであそぼ

鹿又杏奈\( ᐛ )/

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すずちゃんのJK生活

第17話 黒い雫と、夏のはじまり

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朝の陽射しがまぶしくて、思わずカーテンを手で押さえた。

(……暑い)

グリフィンチ学園は夏休みに入ったが、私たち裏文芸部は完全にオフというわけではない。
むしろこの時期は、“奴ら”の活動が活発化する可能性が高いらしい。

(夜の通知……一郎くんが何か感じたんだよね)

カーテンの隙間から入り込む光に、まぶたがきしむような感覚を覚えながら、私はゆっくりと起き上がる。
制服はすでに不要。今日は“私服で部室集合”という連絡が来ていた。

私は麦わら帽子と、涼しげなミントグリーンのワンピースを選んで身支度を整える。
冷たい麦茶をひと口飲んで、扇風機の風に後ろ髪を撫でられながら、私は鞄を肩に掛けた。

グリフィンチの裏門から抜け、図書館棟を通り過ぎて部室のある別棟へ向かう。

誰もいない廊下。夏の空気はそこでも熱を帯び、扉を開ける瞬間だけが救いのように感じられた。

部室の扉を開けると、既に数人の姿があった。

「おはよう、小鈴ちゃん。涼しそうな格好だね、夏の少女って感じ」

「優凜さん、おはようございます」

テーブルにはアイスティーと、読まれかけの文庫本。
彼女は相変わらずの優雅さで椅子に腰かけていた。
本の栞の位置は、昨日のままだろうか。彼女の指が軽やかにページをなぞるのが見えた。

「一郎くんはまだだけど……」

「あ、来たよ」

ドアのすぐ外から、足音とともに姿を見せたのは、黒酒一郎くん。
手にはあの“記録帳面”を抱えていた。

「昨夜、都心の地下鉄でちょっとした事故があったんだ。人の気配のない車両で急に照明が全部落ちて、誰もいないのに金属音が響いたって」

「異能力者……?」

「いや、これは……“生まれ損ね”の類かもしれない」

「生まれ損ね……?」

紅葉先輩が、いつになく真面目な表情で補足する。

「普通、異能力ってのは持ち主と共に“形”を得る。でも時々、誰にも選ばれないまま意志だけ残ってしまうことがある。未確定の能力が、宿主なしにこの世にこぼれ落ちる──黒い雫みたいにね」

「……それが、暴走する?」

「そう。意思を持たずとも、無差別に接触者へ影響を与えることがある。悪夢、幻覚、衝動の暴走……あまり近づくべきものじゃない」

私は、無意識に両腕を胸の前で抱いていた。
まるで肌の奥に、冷たい水を垂らされたような感覚。

「小鈴ちゃんの《貪食》なら……そういう未確定の力を“取り込む”こともできるかもしれないんだ。もちろん、危険もあるけど」

「やってみます。……私にできる可能性があるなら、やります」

心臓が早鐘のように鳴っていた。
けれどその言葉に迷いはなかった。

「場所は地下鉄構内……人の少ない時間帯を狙って行く」

紅葉先輩が机の上に路線図を広げた。

「都斗と楓は?」

「楓は今日は部活の合宿準備、都斗もそれに付き添ってる」

「……よかった。楓ちゃんが巻き込まれるのは、何としても避けたい」

そう言った紅葉先輩の声は、真剣そのものだった。
楓ちゃんにだけは、“その先”の世界を知られたくない――それがこのチームの、たぶん唯一の共通意識だ。

──

そして数時間後。

地下鉄の構内は、昼下がりだというのにひどく静かだった。
駅の蛍光灯の光が鈍く揺れている。風がないのに、どこか潮の匂いがした。

私たちはホームの端に立ち、耳を澄ます。
遠くでレールが軋む音がして、それが人の息遣いのように聞こえた。

「……いる」

一郎くんの声が落ちる。
誰もいないはずのトンネルの奥で、“何か”が呻いていた。

「気をつけて。これは……意識だけが取り残された力だ」

その言葉の先に現れたのは、黒い霧のような塊だった。
まるで夜の水が逆流してくるかのように、うねるように空間を歪ませながら、ゆっくりと近づいてくる。

それは“生きている”というより、“存在している”という感じだった。

「来ます……!」

私は足元に力を込め、能力を展開する。
《貪食》の半透明の球体が現れ、ぴたりと私の指先の動きに追従する。

「誘導する。紅葉、転移頼む」

「任せて」

一郎くんが指を鳴らすと同時に、霧が私たちに襲いかかってきた。
瞬間、紅葉先輩が空間をねじ曲げる。歪んだ空気の層が盾のように出現し、霧の進行方向をわずかに逸らした。

その隙に私は、全力で《貪食》を打ち込む。

「……っ、取り込め……!」

球体がぐぐっと膨張し、霧をまるごと吸い込んでいく。
内側に何かが砕けるような音がして、空間が軋む。

ギュゥゥゥン、という耳鳴りのような音。

やがてすべてが収束した。

静寂のホームに、私たちの呼吸だけが残された。

「……終わった?」

「うん、完全に沈静化したみたい」

優凜さんがそっと確認してくれる。
私はうなずきながら、大きく息を吐いた。

「小鈴ちゃん、安定してきたね」

「……ありがとうございます!」

自然に出たその言葉の奥に、自分でも気づくような誇りがあった。
ほんの少しだけでも、ここに“いていい”と、思えた。

──

帰りの電車。

誰もが少し黙って、車窓の外を眺めていた。
窓に映る自分の表情が、いつもより少しだけ大人びて見える。

その沈黙を破るように、一郎くんが呟いた。

「……最近、“自我を持った未確定能力”が生まれてる気がする」

「それって、敵がいるってこと……ですか?」

「まだ確証はない。でも、偶然が重なりすぎてる。何かが裏で起きてると考えた方が自然だ」

誰もが目を合わせることなく、その言葉の重みを受け止めた。

──この夏は、ただの休暇では終わらない。

何かが始まっている。
私たちだけがまだ、それに気づき始めたばかりだ。
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