GPTであそぼ

鹿又杏奈\( ᐛ )/

文字の大きさ
18 / 55
すずちゃんのJK生活

第16話 夏の入り口と二つのチャット

しおりを挟む
夏休みの朝。蝉の声が壁のように響く中、私は静かな机に向かっていた。

「……よし、これで終わり」

テスト明けにも関わらず、気がつけば全教科の課題が片付いていた。学校から配られた厚めの冊子は、すでに綺麗に綴じて本棚に収められている。

──つまり、暇だ。

(やっぱり早く終わらせすぎたかも……)

確かに、早めに終わらせれば心にも時間にも余裕ができる。母には「小鈴らしい」と褒められたし、自分でも悪い選択じゃなかったと思っている。けれど、これほど見事に何も予定がないと、さすがにちょっと虚しくなってしまう。

特に、出かける予定もなければ、誘いをかける相手もいない。思わずスマホを手に取り、既読がついたまま更新のない文芸部チャットを開く。

【文芸部📚】
紅葉《生徒会長》:夏休みも元気に活動していきましょう!(遊びに来るのも歓迎!)
楓:わーい!毎日でも行くー!!
優凜:冷房あるし、本読むには快適な環境です。
都斗:………(既読)

(……あ、そうだ)

私はスワイプして、非公開グループへ切り替える。

【裏文芸部🕶️】
紅葉《生徒会長》:今日の昼、少し集まれる?
優凜:構わないけど、場所はいつものとこ?
一郎:了解。異常感知はまだ弱め。ただ、兆しはある。
小鈴:暇してるので、全然大丈夫です!

(こっちは活発……)

そう、文芸部には“裏”がある。正式な部活動とは別に、異能の力を使って秘密裏に事件へ対処する小さなユニット──“裏文芸部”。

もちろん、表のチャットには裏の話は一切しない。特に、乃斗楓ちゃんには絶対に知られてはいけない。彼女のまっすぐな優しさが、異能の世界の闇に触れてしまわないように。

(……それに、楓ちゃんにバレたら紅葉先輩が死ぬ)

シスコンとしての名を欲しいままにする紅葉先輩にとって、妹に内緒で裏活動をしているという事実はまさに綱渡り。裏チャットの通知音すら、表と変えてある。

(通知音、設定してくれてほんと助かってる……)

そんな中、裏チャットに再び通知が届いた。

紅葉《生徒会長》:小鈴ちゃん、暇なら本部で待機しててくれる?何かあればすぐ連絡する
小鈴:了解です!



昼。文芸部の部室──裏文芸部の活動拠点。

正面玄関からではなく、図書室の奥にある古びた扉を抜け、階段をひとつ下る。コンクリートむき出しの廊下を進んだ先にある、静かな地下室。それが、私たちの本拠地だった。

一人で入るのは少しだけ緊張する。でも、もう慣れた。ふかふかのソファ、木目の本棚、少しガタつくけど愛着の湧く机と椅子──

全部が、落ち着く。

(エアコンが効いてるだけで、幸せ……)

そんなささやかな幸せを感じていたとき、入口からひょこっと顔を出した人物がいた。

「おーっす。小鈴ちゃん、一人? なんか暇そうな雰囲気」

軽い調子で入ってきたのは紅葉先輩。外の暑さのせいか、いつもよりラフな雰囲気だ。

「はい。課題も終わっちゃったので……」

「真面目だなあ、ほんと。あ、ところでちょっとした動きがありそう。夜にまた連絡入れるから、スマホの通知だけは気を付けてて」

「了解です」

「それと……一郎から、“記録帳面”の読み解きが少し進んだって。後で見せるってさ」

「記録帳面……」

黒酒家に代々伝わる、異能と異変の記録。厚い和綴じの帳面に、数十年分の災異が記されている。触れるたび、私はそれが“ただの記録”ではないと実感する。書かれた情報が、時に“予兆”のように重なることがあるのだ。

一郎くんは、それを注意深く読み解いてくれている。彼の洞察力と冷静さには、時々怖いほどの信頼感がある。

「じゃ、何かあったらまた」

紅葉先輩はそう言って部屋を出ていく。ほんの一瞬、彼の背中が頼もしく思えた。



夕方。空が薄い茜色に染まりはじめた頃、私は自宅のベッドに寝転びながらスマホをいじっていた。少し仮眠をとろうか迷っていたその時、通知音が震える。

【裏文芸部🕶️】
一郎:動いた。
紅葉:明日、出動の準備を。

短く、静かな言葉。

でも、それだけで、胸の奥がきゅっとなる。

(……いよいよ)

私たちの、夏の冒険が始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...