GPTであそぼ

鹿又杏奈\( ᐛ )/

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すずちゃんのJK生活

第37話 静寂の夜と、ささやかな宴

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資料棟の事件から、まだ数時間しか経っていない。
それなのに──まるで何事もなかったかのように、学園は夕暮れの静けさに包まれていた。

昼間のざわめきも、調査中の緊張も、何もかもがまぼろしだったかのように。

けれど。

──私たちの中には、確かに“何か”が残っていた。

「お疲れさまでした」

一郎くんが帰り際にくれたその言葉。
単なる挨拶として流すには、少しだけ重たくて、静かな余韻を残した。

私は一人、自室のベッドに腰を下ろし、制服も着替えないまま、天井をぼんやりと見上げていた。

「……あれ、結局、なんだったんだろう」

触れられそうで触れられない。
掴んだと思った瞬間、指の隙間からすり抜けていく。

《貪食》でも完全に取り込めなかった異物──存在しない存在。
けれど、不思議と怖くはなかった。

あの場で、私は一人じゃなかったから。

紅葉先輩が“転移”で、私の手を引いてくれた。
優凜さんが、落ち着いた目で全体を見渡してくれていた。
一郎くんが、私のそばを離れず、支えてくれていた。

だからきっと、今、私はここにいる。

ほんの少しの温度と、確かな気配に守られて。

スマホの画面が、ほのかに光を灯す。
通知音──文芸部の“裏チャット”だった。



【優凜】
《おつかれさま。今日は各自ゆっくり休んでね》

【紅葉】
《明日休みで助かったー。俺もうソファから動けない……》

【小鈴】
《おつかれさまでした! 無事でよかったです》

【一郎】
《まだ本家の帳面を確認してみる。何か引っかかる》



そこに、少しだけ遅れて、一文が届く。

【一郎】
《たぶん、今日の“穴”は偶発じゃない》

その言葉が、心の奥で静かに鳴り響いた。

偶然じゃない──誰かの意思で、あそこに“開かれた”。
だとしたら。

私はもう一度スマホを手に取り、ほんのひとことだけ打ち込んだ。



【小鈴】
《……次は、誰を守れるかな》



その夜。

世界のどこかで、それぞれの“静かな夜”が過ぎていく。

けれど、穏やかな風景の向こう側で──何かがゆっくりと、確かに動き始めていた。





優凜の部屋。古書の並ぶ書棚の前、いつもより静かな時間が流れていた。

陶器のティーカップから立ちのぼる湯気と共に、彼女は黙って紅茶を注ぎ、机に広げた帳面を一枚一枚めくっていく。

机上には、今日の報告書。そして──黒酒家に伝わる、古い帳面の写し。

「……興味深いわね。紅葉くんの“転移”も、小鈴さんの《貪食》も、精度が確実に“進化”してる」

彼女の視線は紙の文字の隙間を追いながら、心の奥で静かに思考を深めていた。

──ただの偶発事件じゃない。
──偶然にしては、あまりに“整いすぎている”。

その感覚が、静かな警鐘として胸を打つ。

「そろそろ、“あの人”にも報告しておいた方がいいかしら……」

誰に問うでもないその独り言は、部屋にしんと響いて、静かに夜の帳の中へと溶けていった。





黒酒家・別邸──
ひと気のない書斎の奥、蝋燭の明かりが机の上の帳面を照らしていた。

一郎はその灯のもとで、一字一句を見逃さないよう、静かに記録を追っていた。

「……やっぱり、文字が欠けてる」

帳面の記述は、ところどころがかすれ、消え、断片しか残されていなかった。

「“実験”“対象”“不定形”……」

途切れた記憶をつなぎ合わせるように、彼は言葉を拾っていく。

そして、あるページの端に小さく書き込まれていた印──“○”のような、単純で不穏な円形の図。

「……こいつ」

今日、資料棟で小鈴が“喰らった”あの影。
その中心に、確かにこれと似た印が浮かんでいた。

「繋がってる。やっぱり、何かが──」

声は小さく、かすれた吐息と共に漏れた。

何も知らなかった頃の自分に、もし戻れるなら。
ただ笑って、何も疑わず過ごせたあの日々に、戻れるのなら。

「……でも、もう無理だよな」

蝋燭の炎が、わずかに揺れた。

彼のそのひとことだけが、夜の静けさの中に残された。





乃斗家・本邸。

明かりの灯るリビングで、楓は今日の部活で撮った写真を嬉しそうに兄に見せていた。

「ほら、お兄ちゃんこれ見て! このジャンプシュート、完璧でしょ!」

「……お前、ほんとに疲れ知らずだなぁ」

「ふふっ♪ 明日も練習あるから、今のうちにテンション上げとくの!」

都斗は笑いながらも、ふと視線を逸らす。

「……でも今日は、ちょっと危なかったんじゃないか? 部活の場所、ほんの少しずれてたら──」

「えっ? なんか言った?」

「いや、何でもない。ただの心配性だよ、俺の」

彼女には見えないものがある。

自分が“何か”を引き寄せてしまう体質であることも──
兄や都斗が、それを常に察知し、回避させていることも。

楓はまだ、何も知らない。

けれど、それでいいのだ。
だからこそ、彼女の笑顔は守られなければならない。

「明日も全力で走るよ!」

その無垢な宣言が、夜空の奥に、まるで祈りのように響いた。





そして──

私は、自分の部屋のベッドで、小さな“もふもふ”をぎゅっと抱きしめた。

「……ふぅ。やっと落ち着いた、かも」

あの“メガネのヤツ”も、今日は現れなかった。

事件のあとの夜だというのに、不思議なほど穏やかで、静かだった。

けれど──

「……戦える理由があるって、悪くないかも」

誰かのために、守りたいと思えること。

それは怖さや不安を超えて、ほんの少しだけ心をあたたかくする。

そんな夜は──
どこか、ささやかな幸せに似ていた。
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