近衛 真王 太平録

塩爺

文字の大きさ
2 / 5

真王 国を富ます

しおりを挟む
翌朝、夜明け前に起きた俺は城の天守に上がり城下の町を見下ろした、2階櫓の小さな城だが山の頂上に立つ山城なので見晴らしはいい、貧しいこの国、街道沿いに藁葺き屋根の荒屋が点在するだけだが、俺は高揚感で震えた、
戦国ライフの始まりだ俺は拳を握りしめた。

目標を決めよう。

タイムスリップした原因を突き止め現代に帰る事、当面の目標としては充分である、その為には拠点がいる。

その日の内に、天守を拠点化すべく動き出す
俺はアマテラスと連絡を取りツクヨミに必要物資を送るよう指示した。
運搬は無人ドローンで空から天守に直接、運び込む、この時代でドローンを見た者はいない、まず気が付かれないだろう。

それに伴い、いままで打ち上げるのを躊躇っていた衛星を打ち上げた。
これにより通信可能範囲も格段に広がり、画像データーも鮮明になる、なによりロケーションソナーの分析範囲が広がるのが何より便利だ。

ロケーションソナーは軍事目的で開発された技術で建物の中の敵の詳細を知る為に開発された。
それが民間に広がり火災現場や災害現場で活用されるようになり、俺の時代では
更に進化してニュートリノを使い物質の分析をすることでそれがどんなものか判るまでになった。


話しを戻そう、最初にモニターをつける、これで音声だけだった情報が映像でも確認出来る、これは思った以上に便利だ。
地形を映し出せば地図にもなるし、なにより状況が目で確認出来るのがありがたい。
設置から配線までは俺が行う、お手のものだ当然訓練は受けているし、物作りも好きだ、
現代に居た時は何から何までAIロボットがやっていた為、ある意味新鮮である。

次は、空調設備と防衛設備。
この城という建物、やたら隙間が多い、この先精密機器を設置した後の故障に繋がりかねない。
なにより快適なほうが良いに決まっている、窓に当たるこうしを、ガラス戸に変え壁には断熱材を取り付けよう。

そして天守に通じる通路には動体センサーとパラライズガンを城の回りにはカメラを取り付ける。

重要な事に気がつく、これだけの設備を稼働させるだけの電力が無い、ポータブル電源で運用しようと考えていた俺の考えの甘さに嫌気がさした。

しかし、ツクヨミが答えを出してくれる
流石AIである、この城の瓦に擬態したソーラー発電パネルの設置を提案してきた。
たしかに瓦に擬態すれば目立たないだろう、俺の時代、ソーラー発電パネルの性能もたいぶ向上している、設置予定の設備の数倍の稼働が可能なだけのパネルの製作をツクヨミに指示した。

工事は夜間に無人ドローンで行う、ドローンなら闇夜は関係ない、俺はツクヨミに工事にどのくらいの時間がかかるか聞いた。

(パネル製作と工事を並行して行おう為、約164時間必要です。)

約一週間、その間にアマテラスを戦国時代に来た時に最初にいた場所に戻らせ、大気から海水まであらゆる分析をさせた、俺は俺で演習の記録映像を送ってもらい、手がかりがないか探った。

瞬く間に一週間が過ぎたが、未だ手がかりは無い、工事の方は順調に進んで後2日有れば終わるところ迄きた。

これで、いろいろな事が出来る!・・・

いろいろって、いったい俺は何が出来るんだ?

タイムスリップの原因がわからない以上、現代には帰る方法がない。
一か八かで粒子加速砲を撃つという選択肢もあるが、100パーセントツクヨミに拒否されるだろう。
かと言って、このまま戦国時代で頼成の手先となり他国を侵略する選択肢もない!

俺は海岸で見た活気ある人々を思い出した、
この時代の人達と多くの子供を創れば、
その子供達やその子孫が500年かけて世界中に広がって未来の地球を救えるのではないか?

西暦2050年に世界の人口を120億から僅か1億人にまで減らし人類を滅亡寸前まで追い込んだ未知のウイルス!
そのウィルスは若者の多くを殺し、若者を失った人類の人口は回復することなく減り続けている。

未熟児で生まれた俺はその時は隔離室に入っていた為、難を逃れた。
その後 各国はウィルス対策として開発されたばかりのナノマシーン技術に希望を託して生き残った者達に施術したが、適合率の低さから、更に人口を減らす結果になった。

俺は数少ない適合者の1人だ、ナノマシーンは人体に入った後、遺伝子そのものを改良してウィルスにかかりにくく、かつ感染しても回復しやすい身体に変えた。
いわゆる強化人間と言うやつだ、その改良された遺伝子は俺の子供にも受け継がれるだろう。
元いた時代では手遅れだったがこの人口の多い戦国時代なら!

確証はない、が、僅かな希望に賭けるだけの価値は大いにある。

その確率は?くだらない疑問だがツクヨミに問う。
途方もない数字だ、およそ2000万人、それだけの子孫がいれば人類は救われる。

しかし例がない訳ではない
かつてヨーロッパ大陸を支配したモンゴルの王 チンギス・ハーンは多くの子供を成し
その子孫は世界に1600万人居るとさえ言われた。

目標が決まった!

この国に多くの人達を集め適合者を探し子供を作る。

今のこの国は貧しい、人を集めるのは難しいだろう、まともに人がいるのは海岸部だけだ、貧しい理由は食べ物が無いから
食糧を増やせば人が集まり、人が増えれば作る人も増え更に食糧が増える、食糧が余ればそれを売る商人が訪れる。
国に商人が訪れれば他国の品が国に出回り、人々の暮らしも豊かになり、
そして国が富む。

食糧、主に農産物であるがそれができない原因、
年 数回降る大雨でおこる洪水が原因だが、なぜ?この地域に頻繁に洪水が発生する?
他の地域にも雨は降る、俺は洪水のおこる場所の地形データーを見比べる。
地形データーはドローンで空撮した映像データーとロケーションソナーの地質データーを用意した。

これからはツクヨミを頼るのはなるべくやめよう。
自分で考えるんだ。
これは俺の物語、歴史に挑戦する以上
決断を他者に預けたくない。

我が近衛家の領地は山を挟んで海側と内陸側に分けられる、耕作可能な土地は、ほぼ内陸側にあり、その農地を囲むように2本の川が流れている、川幅はそれぞれ40メートル、水の流れている部分は普段は15メートルほどだが、増水時には満杯になる。
2本の川は合流して一つの流れとなり内海に流れつく、問題は合流部の川幅だ、2つの川幅に対して狭いのだ、これでは、山に降った雨は急激な流れのまま合流地点で行き場を失い溢れ出し洪水となる。

やる事は決まった。

合流地点の川幅を拡げて水捌けを良くし尚且つ2本の川の上流に貯水池を設置して急激な流れを抑える、これで洪水は無くなる筈だ。
並行して農地の改良も行おう、しかし、これだけの工事 近衛家に秘密のまま出来る訳がない。
知られた時、揉めるのも面倒くさい、ここは近衛家の家老の何人かを味方にしよう、

味方になってもらう為には人情に訴える方法か欲望に訴える方法、このふた通りだ。
人情は頼友という立場を利用して情に訴える策は使えない、なぜなら家老達は俺が偽者だと知っているのだから。

ならば欲望だ、この時代の人間はなにを好む
一般的には金だが、家老ならある程度の金は持っているだろう。なら安全を提供するか
防御力のある服を提供し自分だけは助かりたいという欲望を刺激し俺と居れば安心なのだと印象づける。

その上で、この時代の日本には少ない外国の品々、例えばギヤマンいわゆるガラス細工の製品だ、これならば金に変えられない価値があるだろう。

俺はこの時代にウケそうなデザインのガラス細工を品質を下げていくつか製作した。
渡す相手は決まっている、頼成の屋敷に勝利を伝えに行った時、刀に手が入っていなかった家老達だ。

未だ家老達は頼成の屋敷に通っている、実質的な権力が頼成にあるのだから当然なのだが
俺は家督を継承した祝いと家臣の様子伺いの名目で家老の屋敷を訪れた。
祝いならば家臣側が来るのが筋なのだが、大名の面子など目的の為なら小さな事だ、タイミングを逃さず実行だ。

家老の名は足利 義明(あしかが よしあき)、本来なら小弓公方こと小弓足利家の大名だ、それがどう歴史が変わったのか今は頼成の家来になっている。
義明は俺の不意の訪問に警戒しつつも、俺を迎え入れた、
かなりの広さの部屋に俺と義明の2人だけでのささやかな祝宴の中、たいした会話もない中、時間だけが過ぎていく。
どう切り出すかタイミングを計る俺は、酔った振りで立ちあがると足がもたれたふりをして部屋に飾ってある槍に倒れ込んだ。

驚く義明をよそに何事もなかったように立ちあがると義明の前に歩みよる、義明は目を丸くして槍と服を交互に見ている、俺に怪我がなく服にも傷がないのを確認させると、この隙を逃さず持ってきた荷物の蓋を開け、大丈夫なのはこの服のお陰だと言いながら荷物を指差した。

荷物の中は着ている服と同じ服とギヤマン数点が入っている、これを置いて俺は黙って部屋を出る、ここで突き返されれば失敗、義明が受け取れば脈があるだろう。
どうやら成功のようだ、俺は深追いはせず城に帰った。
効果は直ぐにでた数日後、数名の家臣を引き連れ義明の方から俺の城を訪れた。

服の凄さとギヤマンの価値に気がついたのだろう、すっかりこちら側だ。
俺が家督を継いでいるのだから名目はたつ、家臣が城を訪れた、ただ、それだけの事だ。
それでも俺は家老の義明を立てて工事の計画を相談という形をとって話す。

義明とその家臣数名を囲んで俺は地図を広げ治水工事の全容を説明する。
まず、2つの川の合流地点の川幅をそれぞれ幅、1段づつ全長10町に渡り拡げるものだ。
今の長さの単位に直すと1段は10.9メートル
1町は100.9メートル、つまり幅を22メートル
長さを1000メートル掘削した後、石組みにより護岸を作り直す。

それと同時進行で川の上流で川を堰き止め山を削って貯水池を作る。
その内容に義明と家臣達は驚き本当にそんな事が出来るのか話し合っている、俺は話しを遮り兵士をすこし貸してもらえば工事はこちらで行おう旨を伝えた。

義明がこちら側になった事で、あとの家老はかんたんに落ちた、義明が口添えしてくれる事で9名いる家老の4名まで味方にする事に成功した。

そろそろ工事を開始する、家老4名が貸してくれた兵は約100名、約と言ったのは一度に100名ではなく時折り兵が入れ替わる為だ。
その兵を2つに分けそれぞれの現場に投入する、工事はAI無人工作機で行なうのだ、人の力は必要としない、しかし、AIでは対処仕切れない場面も出てくる、例えば問題が発生した時、AIは最良の選択肢を探し実行する、裏を返せば最良の選択肢を探すのに時間がかかるのだ、計画された工事現場で力を発揮する無人機も突発的におこる災害現場には弱い、
無人機は人間の安全を最優先で考える為、
人が入り乱れる災害現場では動けなくなってしまうのだ。

俺は分けた兵の中からリーダーになり得る者を各現場に1人づつ選び他の兵士を指揮させる、指揮の内容は無人機が運んできた資材の位置をなおすことと、兵士を無人機に近づけさせないこと。
これで効率が大幅に向上する。
その為の兵士達だ。
この先、いろいろな工事を行おう時の布石として兵士達には頑張って勉強してもらおう。

投入する無人機の数は川幅拡張工事で掘削機6台と資材運搬機が15台、護岸壁製作機を2台、貯水池の工事で堰き止め用石組み機が3台と資材運搬機を4台投入する。

川の両岸にそれぞれ3台の掘削機を100メートル・100メートル・300メートルの間隔で配置する、掘削機の作業スピードは1日で約20メートル掘削する、最初に終わった掘削機を次の区間に投入すれば
格段に早くなる。

石組みが完了した箇所にバイオコンクリートを流し込む、バイオコンクリートは
強度もあり耐水性に優れているが、ある年月を経過すると土にかえる性質があり
隙間の多い構造から植物も育ち自然に優しいコンクリートだ。
耐久年数は、200年と短いがその頃には西洋の技術が日本に伝わるだろうから心配はいらない。

貯水池の工事は簡単にはいかない、作る場所が山の中だからだ、何故、山の中かというと理由がある。
一つ目は後で水路を作るから、水路を作る理由は後で述べるが、貯水池を山に作るのは落差を利用して水路の水が隅々まで行き渡る様にする為だ。
二つ目は水力発電を行うから、城の電力はソーラーパネルでなんとかなっている今は必要ないが、この先、城下や、国が富めば必ず必要になってくるはずだ、その時、作り直すのでは非効率的なので最初から落差式発電のタイプの貯水池を製作する。

最初、簡易的に石組みを組み川を堰き止め、本格的に石組みを積み上げる。
組み上がった石組みを特殊シートで覆い
更にバイオコンクリートで補強する、

特殊シートで覆うのは壊れないようにする為だ、作った物が壊れないのは当たり前の話しだが、ここで言う壊れないとは200年後の世界での話しだ。
護岸壁とは違い貯水池は壊れた時の被害が格段に違う、200年後でも壊れましたでは済まない。
その対策としての特殊シートだ、そのすごさは計り知れない、シートの名前はアラミド繊維シート!
ハイパースチール製には劣るもののコストパフォーマンスと使い易さで市場のほとんどを独占している。

アマテラスに積んであるほとんどを使い切ってしまうが、最重要施設になるだろう貯水池だ、俺は躊躇わず使用した。

俺は日替わりで各現場を訪れ進行状況をチェックした、最初の大雨に間に合うように、工事は急ピッチに進み、合流地点の拡張を2週間で、貯水池の工事を2ヶ月で終わらせた。

合流地点の拡張工事が終わった時点で農地改革に着手する、耕作機は投入するが、化学肥料や品種改良(遺伝子組み換え)は止めておこう、自然に逆らうのは良くないだろう。
この地に合う作物はなんだ?

千葉県房総半島は良質な麻(あさ)が取れる、この時代の服、麻織物の原料だ。
貿易の品としては優秀な作物ではあるが
今はとにかく食料が欲しい。

自分で作った食料で自分が満たされる、
初めて生きていると感じる瞬間だろう

では何を作ればいいのだろう、理想は米、やはり日本人なら米食だろう、稲作を行うなら水田が必要だ。
その為の水路の建設、しかし、今から取り組んでも収穫まで一年半はかかる、それでは間に合わない。

耕作期間が短い作物候補は?
大根、根岸、枝豆、キャベツ、さつま芋、・・・さつま芋!

中南米原産のヒルガオ科サツマイモ属の多年草植物、栄養価が高く腹もちも優れている作物だ。
耕作期間が大根などに比べると多少かかるが、試す価値はある。
農地改良が終わるまでに、一度、アマテラスに戻る必要がありそうだ、なぜなら
さつま芋の種イモを手に入れる為、九州か中南米まで行かなければならないからだ。

途中で他国の船と遭遇するかもしれないが、
アマテラスに乗ってさえ居れば後は大した問題ではないだろう、この時代でアマテラスに敵うものなぞ、なにも無いのだから。

1600年ごろ中国から琉球(沖縄)を経て薩摩(鹿児島県)に伝わり、全国に広まったさつま芋。

1560年の今は、どの辺りを流通しているだろうか?
俺は伝来したコースを遡って訪れた、
最初に訪れた薩摩は島津 義弘(しまづ よしひろ)が治める地で、海流の関係から琉球との貿易も盛んに行われており、度々異国の船も訪れていた。

俺は高速艇を木造船に擬装した商船で乗り込む、商人のふりをするのが1番自然で良いのだが、1人だけというのはいただけない、兵士達をアマテラスに乗せる訳にもいかない。
アマテラスは生涯、この時代では秘密にするべきだ。

俺はそれとなく港に船を停泊させると、さつま芋の情報を求めて商人を中心に聞いてまわった。
さつま芋が琉球(沖縄)から薩摩に伝わったのなら、農民ではなく商人が関わっているはずだ、俺はこの時代の紙に子供が描いたようなさつま芋の絵をみせ、身振り手振りで聞いてまわった、しかし、聞けども聞けどもそれらしい情報はない。
なかば諦めかけたとき、やっとさつま芋の情報を得る、商人の話しでは、しばらく前に薩摩を訪れた異国の船が作物ではなく食料として持っていた物を商人が買い取って、皆で食したと。
どうやら薩摩には作物としてのさつま芋はまだ入って来ていないらしい。
俺は琉球に向かい速やかに薩摩を後にした。

琉球王朝が支配する琉球は今、薩摩と微妙な関係にある、それ故に商人とて自由に行き来しにくい状態になっていた、
俺は農民を装って潜入する、港を使って琉球の兵士に見つかりたくない。

ここは最初にやった潜水での上陸を試みた、兵士に見つかれば危険なのに、俺は海の美しさと熱帯の魚の鮮やかさに時間を忘れて見入ってしまった。

そんなこんなで朝がた潜入を開始したのに琉球の農民と会う頃には夕方ちかくになっていた。
農民は3人いて、農作業が終わったのだろう一息ついているところだった。
俺はまた絵を見せて聞く、
「はいさん、まーさん、芋」(こんにちわ、美味しい芋)知ってますか?
農民は3人いるのでA.B.Cとしよう、

農民A「まーさん、芋、唐芋?」
農民B「唐芋、唐芋!」

幸先良く1組み目でさつま芋の情報を得る。

そう、さつま芋は薩摩芋、琉球芋、甘藷、唐芋とさまざまな呼び名がある、ここでは唐芋で通じるようだ。

俺は農民達に「唐芋、まーさん、カミブサイビーン」(からいも、美味しい、食べたい)と伝えた。

ここからは標準語でいく、俺と農民の会話はツクヨミを通してそれぞれ変換されているのだ。

農民Cの話しでは「唐芋の収穫期はとうに終わって、今は一家が食べる分しか残っていない、畑の掘り残しだったら持って行っても良い」との事だ。

俺はすでに中国まで行く事を決めているが現物があったほうがいいだろう、畑の隅からゴボウのように、しなびたさつま芋を拾うとお礼をいい琉球を後にした。

中国にはアマテラスから飛空挺で直接 
乗り込んだ種イモを相当量持ち帰る為だ
中国にはもう行く事はないだろう、騒ぎになるのは構わない。

さて、種イモをどうやって手に入れよう
騒ぎになるのは構わないからと言って、盗んだり、奪ったりでは争いになる。
やはり買い付けるのが正しいやりかただ
買い付けるのには何がいる、代金だろう
しかし、俺は中国の貨幣を持っていない
偽造するのは、俺のプライドが許さない
では、美術品ならどうだろう。
この時代の中国は唐物という陶器を珍重している、陶器かぁ~、俺はため息をついた。
アマテラスの自動製作機はガラス細工のような規格品はいいが、作者の個性が色濃くでる陶器には向かない、すぐに三流品だと見抜かれてしまうだろう。

俺はもう一つの宝、宝玉に目をつけた、
玉ならば、所詮は自然石、人工の宝石を作るのと同じだ。
これならばアマテラスに積んである材料でいくらでもできる。
騙すようで心がいたいが人口玉と言っても自然玉より品質は遥かに高いのだから問題はない筈だ。
俺はとりあえず巾着袋いっぱいの玉を用意した。

飛空挺はさつま芋のある場所にまっすぐ向かっている、さつま芋の現物が手に入ったことで、それをスペクトル分析した結果を元にロケーションソナーでさつま芋がある場所が判明しているからだ。

まわりに比べて明らかに大きな家の空き地に飛空挺を降ろして門をくぐる、この家の主人はここら辺りの農地の地主で、収穫された作物はここに集まるそうだ。

俺は中国の作法をまもり丁重に挨拶した後、種イモを譲って欲しい旨を伝える。

代金はこれで支払うと巾着袋から玉を取り出すとテーブルの上に置いた、地主は玉を手に取るとまじまじと眺め、玉と俺の顔を交互に見比べている。
俺は巾着袋ごとテーブルに置くと地主は好きなだけ持って行っていいと一言だけゆうと、俺の事はそっちのけで巾着袋の玉を眺めている。

俺は飛空挺に積めるだけの種イモ、約2トンを積んで中国を後にした。

日本に帰った俺は家老達を集め試食会を兼ねた会議を開いた、さつま芋の特徴や収穫できるまでの期間、一つの種イモがどれだけ増えるか説明した後、料理人に作らせた蒸し焼きイモと油であげたスライスイモを皆に出した。

皆、さつま芋を食べるどころか見るのも初めてでなかなか箸がでない、皆、俺の方をチラチラ見ている、俺が一口食べると意を決したかの様に食べ、その後は満足の声を挙げた。

翌日から兵士を使って種イモを各農家ごとに分配したが、いままでが貧しかっただけに圧倒的に農民の数が少ない、俺は耕作機で耕した畑を兵士達に任せることにした、この時代の兵士は農家の次男や三男坊が、食い扶持を求めて兵士なるパターンがほとんどなので、農作業の経験者ばかりだ。

俺は兵士の報酬の他にさつま芋の収穫の一部を渡し、更に一定量の収穫を一定期間あげた者には畑を譲る約束を交わした。

兵士の中には見たこともないさつま芋の栽培に渋る者もいたが兵士の報酬の他食料が貰えるならばと納得して働き出した。

さつま芋は種イモに生えた芽の部分を分割して畑に植える、収穫までは約6ヶ月
温暖な房総半島なら少しは早く採れるだろう。種イモを配る兵士に管理の仕方を理解させ、農家に配る際に良く教え込みよう申し渡した。

これで6か月後にはまとまった食料が確保できる、が、当面の食料が無い。

やはりここは、アマテラスに積んである携帯食料を放出するか?
しかし、今回の作戦は実戦でなかった為
食料はそれほど積んでない、住民に配る量にしてはとても足りない。

俺は不意に義明の屋敷を訪れた際の祝宴で出された魚を思い出した、鯵(アジ)と呼ばれるその魚は生のまま、刺身というかたちで出された。
現代では、食べられない鯵の刺身を俺は
たいへん美味だと感じた。

そうだ!当面の食料として魚を供給しよう、今の漁獲量では無理だが、俺が手を貸して漁獲量を上げれば可能だ。

この時代のこの地方では小さな小舟に1人か2人が乗り込んで粗末な手竿にて釣り上げる形で魚をとっている。
縄による網がないことは無いが、重く小さな小舟での漁は無理があった。

俺は漁村出身の兵士が乗り込む事とその漁で獲った魚の半分を近衛家に上納することを条件に中型の木造船とナイロン製の網を提供した。
俺は兵士に密かに魚探を持たせ、使い方をレクチャーして、それとなく漁民にアドバイスするよう申し渡しつけた。

魚は乾燥すれば保存食になるし、内臓なども肥料になる、さまざまな利用方法が有りまさに棄てることのない万能食材だ。

うまくいけば漁の次の日から一定量の食料が確保できる、自然相手だから確証はないが試す価値はある、直ぐに実行に移した。
漁村は領内に3村程ありそれぞれの村に船を2艘と網を三反を貸し与えた。

効果は直ぐにでた、船を貸した次の日から兵士を通じてさまざまな魚が城に届くこの時代に一部を除いて冷凍技術はない。
一部とは俺の城には冷凍倉庫がある、
城で消費する分を除き、乾燥させて住民に配る、高タンパクの魚を食べれば活力もでる筈だ。

ここまでに戦国時代に来てから3か月の時間を要したが富国の下地は完成した。

更なる富国を目指し、衣食住を3つの柱とする。
麻の増産で衣を、食は今のさつま芋と魚をメインにして今後は稲作を充実させて米の増産にシフトさせる、食料としても優秀だが、やはり他国との取引では米は代金がわりになるのが嬉しい。
問題は住だ、建物の材料、木材の調達が今は難しい領内の山に杉を植林しても
木材として使用できるまでになるのには少なく見積もっても10年はかかる。
俺はアマテラスに早世樹の苗木が積んでないことを悔やんだ、早世樹なら2年で使用できる太さになるからだ。
将来を見据え植林は行い、当面の木材は他国との取り引きで得ることにする、取り引きするものは麻織物と魚の干物だ、
麻織物は需要があり、魚の干物は冷凍技術のない今の内陸部では貴重な品で高値で取引される、木材との交換の品としては釣り合うだろう。

わが近衛家も、順調に富だした。
しかし、順調な時ほど、その先には落とし穴が待っている。
その時はいきなりやって来た、敵が攻めてきたのだ!

敵の名は、千葉家。
我が近衛家と国境を接する隣国だ、当主の名は千葉 昌胤。

我が近衛家をとりまく状況を説明しよう、本来の歴史では、1560年の現在、近衛家(小弓 足利家)はなく、真里谷家、千葉家も北条家の領地になっている筈だ。

千葉 昌胤に至っては、とうに60才を過ぎて
この時代の寿命では亡くなっているか、
隠居している筈である、それが現役バリバリで存在しているとは。

小弓 足利家ではなく近衛家がこの地にあるからなのか?
俺がアマテラスと共に戦国の世に飛ばされて来た事が原因かは判らないが、この辺りの時間軸がずれて本来の歴史とは異なり3家は1560年の現在も存在している。

話しを戻そう、千葉家は現在、佐竹家と同盟関係にあり力を蓄えている。
その千葉家が豊かになりだした我が国を狙って攻めてくる、資源を狙ってか、領土を広げる為かはわからないが、本佐倉城に集結した兵士が今、国境付近まで迫って来ている事を衛生の監視システムが伝えてきたのだ、監視システムはある程度の人間が一箇所に集まると警戒アラームを発信させ、その後の行動をモニタリングするシステムだ。

俺は戦闘体制を取るべく動き出す、悪い事に城の兵士は農作業や植林や工事にほとんどの者が出払ってしまっている。
ここはアマテラスに積んである武器で殲滅するか?
俺はその考えを直ぐに否定した、俺の目的はなんだ、人を増やして国を富ます事ではないのか、今、敵を殺してしまっては戦いの連鎖は止まらず、国が騒がしくなり人々は国を去ってしまうだろう。

ここは防戦だ、味方の兵はもちろんのこと、相手の兵も傷つけない、死傷者をなるべく出さず戦を終わらせる。
絵空事の理想論に聞こえるがさまざまなシステムを使える俺になら可能だ!
いや可能にしてみせる。

では、戦わず敵の戦意を削ぐにはどうするか?
一つは兵士の数だろう、圧倒的な兵力差が
あれば相手も戦いを躊躇う筈だ。
しかし、その作戦は今の近衛家には無理だ
兵士が出払っているからではない、全ての兵士を集めても、千葉家の兵と五分かそれ以下なのだ。
ここは、味方の隣国、真里谷家に援軍を願い出て見るのはどうか?

真里谷家は近衛家と川を挟んで隣国どうしにあり、お互い貧しかった為、頼成の頃より助け合っている関係から、両家の仲は良い。
助けてくださいと言えば、援軍を送ってくれるだろうが、俺だけの力だけでは叶わないだろう、両家の仲は良く、俺が家督を継いでいるとはいえ、両家の関係を築いてきたのは頼成なのだ。

悔しいが頼成に助力の願いを書いた文を兵士に託し早馬にて小弓城の頼成に届けさせた。

文の内容は千葉 昌胤の兵が本佐倉城より我が国に進軍中!
兵の位置関係から我が山城、東金城より頼成様の小弓城が目標の模様、頼友も我が兵と共に急ぎ向かいます故、頼成様は真里谷様に助力をお願いして頂けないでしょうか?
と、あくまで頼成を立てた物言いの内容だ。

俺はある策を弄した後、僅か50の兵と共に向かった。
千葉家の兵と遭遇したのは東金城を出て一刻(約2時間)後、領内に張り巡らせた水路を挟んで対峙している。
こちらの兵は50、対する千葉家の兵は200!
兵士の数は圧倒的に相手の方が有利だが今は膠着状態にある。
何故か?俺が弄した策のおかげだ、策とは城から出陣する際、貯水池の調整弁を開放して
水路を水で満たす事、これにより水路のところどころに架けてある木製の橋は流されて渡れなくなる、更に水が溢れない対策の盛り土が馬の飛び越えを阻んでいる為だ。

相手も馬鹿ではない、数を頼りに橋を架けようと試みるが、こちらも黙って見ている訳がない弓にて妨害する。
対峙して3刻が過ぎた頃、援軍がやって来た、援軍の数は約200、頼成の兵と真里谷の兵だ。

兵士の数がほぼ同数になった事で諦めたのか
千葉家は撤退を始めた、撤退の際、腹いせからか田畑に火を放って行ったが、大した被害ではない。

こうして俺の戦国時代での初めての戦は終わった、怪我人は多少でたが、理想通りの大勝利だ。

時は過ぎ、あっという間に1年の月日が過ぎた。

領内には水田があちらこちらにでき、それに伴い水路も網の目のように張り巡られている。
さつま芋の初めての収穫も終え沢山の芋が城の倉庫に蓄えられて、杉の植林もほぼ完了した。
魚も獲りすぎは良くないが、日々の食卓を豊かにしている。

俺はまた、天守から城下を見下ろした、
へ来た時とは、様子がだいぶ変わっている、街道沿いの家は増え、その家を囲むように田畑ができ、田畑で働く人々の表情は明るい。

いよいよ、当初の目標。
子孫繁栄計画を実行する時がきたようだ
俺は拳を握りしめた。



















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

古書館に眠る手記

猫戸針子
歴史・時代
革命前夜、帝室図書館の地下で、一人の官僚は“禁書”を守ろうとしていた。 十九世紀オーストリア、静寂を破ったのは一冊の古手記。 そこに記されたのは、遠い宮廷と一人の王女の物語。 寓話のように綴られたその記録は、やがて現実の思想へとつながってゆく。 “読む者の想像が物語を完成させる”記録文学。

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

処理中です...