近衛 真王 太平録

塩爺

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真王 嫁をもらう

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俺はまた、天守から城下を見下ろした、
ここへ来た時とは、様子がだいぶ変わっている、街道沿いの家は増え、その家を囲むように田畑ができ、田畑で働く人々の表情は明るい。

いよいよ、当初の目標。

子孫繁栄計画を実行する時がきたようだ
俺は拳を握りしめた。

俺は領内の発展に伴う人員不足を補う為、領内から広く人を募集することをかねて、大掛かりなイベントを開催する。

イベントのタイトルは大相撲大会、土俵という縄で囲われた円の中で2人の者が組み合い
足の裏以外が地面に付くか、円の外に出されたら負けになる。
シンプルなルールだ、それでいて心技体を兼ね備える奥の深さがあり、古来から日本人に親しまれる武道だ。

俺もアーカイブで観たことがある、力士の取り組みに多くの日本人が熱狂していた。
2010年に記録された映像だ。

競技方式は男子の部と女子の部に分かれて行う、健康な働き手を探すのが目的だが、もう一つの目的、子孫繁栄計画の健康的な女性を探す意味でも女子の部は重要だ、あまり力強い女子ばかりでは困るのだがな。

なるべく沢山の人が参加できるよう農作業がすこし暇な時期を選んで、予定日を2月の吉日に決めた、遠方から来る参加者のために幾ばくかの路銀も用意する、人員募集の布石として俺が気前の良い男だと思わせるのは良いことだ、もちろん上位者には賞品をだす。

優勝者には農耕用の馬🐴に加え米を1表、
準優勝には米を1表を進呈しよう。

開催場所は東金城の第一曲輪、ここならば数百人が集まれる。

イベント奉行の任を佐野 弘綱に申し付けた
佐野は義明の家臣で才能のある男だ、
今のうちからいろいろ任せておくのも後々の為になる。

やはり優秀な男だ、各村への通達に始まり、参加希望者の確認、土俵の製作、果ては出店の準備とそこで販売する品の用意、2月の吉日に向け計画通りつつがなく進んでいく。

そして、その日を迎える。
霜が降りるほどの寒さの冬の朝、日が昇る前から集まり出した人々は開催前には曲輪の広場を埋め尽くし、立ち昇る熱気でその意気込みがわかるほどだ。

観客の中には近隣の村々の子ども達までいる、イベントの開催まで一刻を切ったところで参加者に受付をすませてもらう、皆、われ先にと受付に並び、半刻で終了した。

受付で名前と、村に家があるなら村の名前を言うだけだ、この時代は、まだ文字が書けない人も多くいる、文字が書ける兵士に受付を担当させてスムーズにいく様にした。
この受付名簿を元にして大会上位者に募集をかけていく。

参加者が受付に殺到した理由は、参加料が出るからだ、普通なら参加費を貰うものだが、俺は参加者全員にお金を出した。

何故そんな事をしたか?
領民にお金に慣れ親しんでもらう為だ、いままでは国が貧しかった為、せいぜい物々交換程度しかしてこなかった領民も、国が富だした今からなら物の売買をはじめる筈だ、その時の為には慣れている方がいい。

出店まで用意したのもここでお金を使って貰い売買を経験させる為、早速、貰ったばかりの参加料を使う者もではじめた。

俺はイベント奉行の功績を高く評価して、大相撲大会の一切を佐野 弘綱に仕切らせた。
佐野は高らか大会の開幕を宣言すると、行司役で土俵に上がった、呼び出し役は受付の兵士に任せて、俺は後ろの席にて観ている。

取り組みは順調に進んでいく、中には微妙な判定もあったが、俺は口を出さない、行司の佐野の判定は絶対なのだ。

男女共に優勝者が決まったところで、弘綱が土俵に上がり大会の閉幕を宣言して相撲大会は大成功で終了した。
自分の村に帰る者、その場に残って余韻を楽しむ者、賑わいは夜遅くまで続いた。

俺はその日の晩、義明と弘綱を東金城に招待し、盛大に宴を開いて、その労をねぎらった。
義明に弘綱は大した男ですなアピールをすると、誇らしげにまんざらでもない顔をして弘綱の肩を叩いた。
俺は弘綱に相撲大会を毎年開催し、場所は各村の持ち回りにする事を申し付けた、弘綱はおまかせくださいと返事をして盃の酒を飲み干した。

国が豊かになるほどにイベント(政治)が増えていく、このまま兵士を仕事に就かせたままでは、いつか無理がでる。
先の戦でも兵士不足で苦しめられ、頼成に貸しまで作ってしまった。
また、他国が攻めてくるとも限らない、

俺は兵士の改革に着手する。

兵士達を兵士職に専任させるに辺り、今の仕事に残りたい者は役職を付けて、見合う報酬を約束する。
破格の報酬だ、ほとんどの者が残るだろう、当然、兵士不足になるが、俺には考えがある。

ある男達を雇う為だ、ある男とは俺が戦国に来て初めて戦った男、野盗の大将と部下達だ。
2メートルを超す巨躯に俺が作った防具を装備させ、巨大な武器を振るわせる、
そのインパクトたるや、見ただけで相手は戦意を失うだろう。

正に俺の理想の戦い方、戦わずして勝つ少数精鋭部隊の完成だ、兵士が多く居る中で彼等を雇うと兵士の不満がでるが少なくなった時を見計らってならば、不満も少ないのではないか。

俺は彼等を探す事にした、仮に彼等を騎兵と呼ぼう、俺の武装を装備した姿を想像し、その勇壮さから西洋の騎士を連想させる、だから騎兵、ピッタリの呼び方だろう。

俺は彼等の痕跡を探して領内を衛星画像と偵察ドローンを使い隅々まで探し回った。
しかし、この世界にはいなかったかの様に痕跡が見つからない、まるで異世界から来たかのような有様だ。
彼等も俺同様、転移災害の被害者なのか?

何の手がかりもないまま、探し始めて1か月が過ぎた頃、彼等が発見される、

衛星の監視システムが近衛領から遠く離れた小田領内での異常を知らせていた、
その画像を見て俺は目を丸くした。

彼等が映っているではないか!
このままでは小田の兵と戦闘になる
俺は飛空艇で彼等を掻っ攫うことにする
無茶な作戦だが、見返りは大きい、理想の部隊ができるのだ。

飛空艇で現場に向かいながら彼等をどう説得しようか考える、拒否されたら無理やりにでも連れてくるつもりだが、そんな事はしたくない。

できれば合意の上で我が近衛家に来てもらいたいのだ、しかし、悠長なことは言っていられない、戦闘が始まってしまう、俺は飛空艇を彼等の目の前に降ろし
大将の前に進み出る。

揉めるかと思われた交渉だったが、すんなり片付いた、彼等も俺のことを覚えていて、この世界での居場所を探している最中だったのだ、俺は今は近衛家の領主で、領内にある村を住みかとして提供することを約束した。

飛空艇に乗せ領内に帰る最中に大将に質問した、彼の名は雷重太、村長を務めている。
俺は雷重太に今までの経緯を聞いた、

俺       「雷重太殿は、今までどの様にして?」

雷重太「話せば長くなりますが、我が村はここより暖かい地にあり、皆、穏やかにに過ごしてきました。」

雷重太「それが、最近、村の周辺で不可思議な怪異が頻発する様になり、皆で集まり話し合っていた所、」

ここで話しを遮り質問する。

俺        「雷重太殿、怪異とは?どんな」

雷重太「昨日まであった木が次の日には消えていたり、さっきまで話していた友人が突然居なくなったり、まるで神隠しにでもあったように前触れも無く物や人が消えてしまい、このままでは子供達や村人に被害が及ぶかと。」

雷重太「その、原因を皆で話し合っている時、光に包まれ気がつくと見知らぬ地に居ました、我々は居場所を求めて彷徨い城を見つけ、此処が何処なのか知ろうと城に近づいたのですが、頼友殿の兵とあのような事に。」

俺  「俺と戦った後、突然行方知れずになったのは?」

雷重太「城から逃げ延びた後、我々は隠れる場所を探しました、その時またあの光に包まれ元の村に、それ以来、また飛ばされることに備えて、武器やら食料を身につけていましたが、3年間は何事もなく過ぎたので、もう大丈夫だろうと安心したのですが、その矢先、今度は村ごとこの場所に。」

雷重太「我々はあの時お世話になった頼友殿を頼りに移動中、あの兵士達に囲まれどうしたものかと、思案していた最中、頼友殿が目の前に降り立った次第で。」

雷重太の話しを総合すると、彼等はこの世界の何処か、または異世界から空間転移して、この世界にやって来た、居場所を探して彷徨っていたところ東金城を発見し近寄ったらパニックた城の兵士と争いになり、頼継を含む兵士のほとんどを倒してしまった。

まぁ彼等の仁王像のような姿を見れば誰でも混乱するだろう、彼等は投げたり、殴ったりと武器は使わなかったそうだが、あの怪力だ、雷重太のパンチなぞ衝撃吸収インナーがなければ即死レベルだ。

話しを戻そう、俺は雷重太に気になる質問をした。

俺       「何故、城を奪ったのか?」

雷重太「奪ったのではなく、城から出られなかったのです、出ればまた争いに巻き込まれる、そう思い城に閉じこもっておりました。」

これで礼儀正しき彼等が何故、城にろう城したか、その理由がわかった。
しかし、俺が彼等と最初に会ってからまだ一年半しか経っていない筈だ、それが彼等の世界では3年の月日が流れているとは、空間転移ではなく時空転移に巻き込まれたのか?
それに気になる事を雷重太は言っていた、家族がどうしたと。

俺 「先程、村ごとと申されたがこの飛空艇に乗っている以外にもこの世界に飛ばされた者はおいでか?」

雷重太「仰るとおり、私の家族を含み村人全員がこの世界に来ております。」

彼等に家族は、今、隠れているそうなので彼等を安全な場所に降ろし迎えに戻ろう、彼等の村が我が領内に有ればそのまま住んでもらうのだが、領内に代替え地の村を用意する。

彼等が住んでもらう村の元村長には無理なお願いをするが城下に近い場所に土地を用意してやり、住居を建て、更に数年は年貢を減額する。

領主権限で退かしたのでは、何処かの暴君になってしまう、これだけの条件を出した俺に村長は喜んで応じてくれた。

彼等の人数は男ー50人、女ー50人、子供ー15人とかなりの人数だ、
俺は東金城から絶妙な距離の村に彼等を住まわせ、当面の食料を置いてきた。

後は頼成を含めた家老達にどう説得するかが問題だが、今や家老のほとんどが俺側だ、中には俺との繋がりを目的に自分の娘との縁談まで願いでる者までいる。

特に義明は熱心に縁談話しを薦めてくる、頼成とビミョーな距離感のある義明は、あわよくば自分の娘と俺の子が近衛家を継いでくれれば幸いと考えているのか?
二十三才になる頼友(この世界の頼友はまだ二十三才だそうで、実際の俺は三十一才なのだが)に未だ嫁がいないことが心配なのか、義明の屋敷を訪れるたびに世話を焼いてくれる、彼女の名前は( 彩 )、笑顔が可愛らしい、優しい女性だ。

本来の頼友という男は顔だけでなく振る舞いまで優れる、余程良い男だったのだろう、家臣の娘達から相当にモテたらしく、俺も城でやたらチョッカイをだされた。

ここらあたりで嫁をもらうのも悪くない、子孫繁栄計画の第一歩だ。

この時代の大名は一夫多妻が普通だそうだ、正室と側室がおり、
正室はひとりだが、側室は何人でもオッケーらしい。
俺の倫理観ではアウトだが子孫繁栄計画的には都合が良い、俺は家老の娘の何人かを迎えようとした矢先、頼成が先手を打ってきた。

縁談話しは家老達と同じだが、縁談相手が問題だ!
同じ近衛家から嫁をもらえということだ

同じ近衛家と言っても、本家の近衛家からである、我が近衛家は分家にあたり
本家は京都にある権力者を守る由緒正しい家柄だ。
頼成の先祖にあたる者の話しではあるが
京都でひとつだった近衛家は権力者の後継者争いに巻き込まれ、兄と弟に分かれて戦った。

戦国時代にはよくある話しで一族の血を絶やさないようにする為、どっちが勝つか分からない戦では、親と息子、兄と弟に分かれて戦いどちらか一方を残すそんなやり方だ。

負けた側に付いていた、頼成の先祖にあたる兄は弟の助命で生命は助けられるが
関東の外れまで流され、この地に居を構える事になる。

その本家の姫を嫁にもらえという話しだ
応方、頼成は家老の娘との縁談話しを聞きつけ家が乗っ取られるとでも思ったんだろう、俺は頼友本人ではないのだから同じ近衛家と言っても血縁関係はない、倫理的には問題ないが何となく納得いかない話しだ、しかし、チャンスでもある。

彼等、騎兵の話しを切り出す絶好のタイミングだ、頼成さえ納得させれば家老達はこちらの味方だ、
俺は先の千葉家との戦のおり頼成に助力された借りた返す意味でこの話しをお受けする旨を伝えた上で騎兵の話しを切り出す。

彼等は城を奪いに来たのではなく、ただここが、何処か知りたかっただけで、戦闘になったのは城の兵士の不幸な勘違いからおきた事故で、彼等に敵意はもちろん無く、その証拠に怪我した兵士達を手当てし看病までしております。
これは信用に値する行いであり。

尚且つ、
兵士達は槍や刀を持って戦ったのに対して彼等は素手にて戦っておりその強さと言ったら比類なきものかと思われます。

彼等が如何に強いかを伝えて、彼等が味方になった時の利益と彼等が敵になった時の害を熱心に説く。

頼成は俺の話しを黙って聞いていたが、俺と姫との息子に近衛家を継がせる事を条件に承諾する、そこまでは考えていなかったが今を逃すと後が面倒だ、俺もその条件で折り合った。

近衛家の姫、名を華姫という、いかにも貴族らしい名だ。
歳の頃は13才、13才‼︎ まだ子供ではないか、この時代の慣習とはどこか現代とは違っている。

13才という若さで結婚が決まり、親元を離れ嫁ぎ先が京都とは比べるべきもない関東の貧しい国では、余りに不憫だ。

俺は華姫との結婚を彼女が16才になる3年後にしてもらう事を願いでる。
16才なら倫理的に問題ないだろう、3年後と決めたのにはもちろん理由がある。

俺は3年でこの国を京都にも負けない城下にして見せる。

京都に似せて創るのでは芸が無いが、華姫が落ち着いて暮らせる様、建物や様式は京風にする。
太平洋に面した東金の地に大型船が停泊できる港を作り、そこから城まで一直線に石畳みの道を通し、その道には一定間隔に街灯を配置して道を照らす。

道のまわりには京風の建物が並び、建物に付けた電灯を使って街中を照らす、石畳みの路は馬車が走れるように整備して
人と馬車の区分を設ける。

約15メートル幅のメイン通りを中心に放射状に道を伸ばしていく、そこに商業施設、住宅街、産業地区を配置する。

ここで、問題がある、資材や人員の事ではない。
それらは充分用意できる、問題は隣国だ、隣国と言っても千葉家や真里谷家の話しではなく、我が国を挟む東西の大国、西の里見に東の佐竹だ。

いままでは小国の戯れ事と、見過ごしていたものが、我が国の繁栄は彼等を刺激するには、充分な出来事だった。

特に問題は先の戦で揉めた千葉家と主従関係にある佐竹家だ、佐竹家大名、佐竹 義昭は勇猛で知られる武将で、太田城を拠点に石塚城、府中城を有し、佐竹 義重、岡本 禅哲など優秀な家臣が沢山おり、常磐を支配する大国だ。

一方、里見家は大名、里見 義堯が支配する国で義堯は名前どおり義に厚い人物で久留里城を拠点に館山城など3城を有し、里見 義弘、正木 時茂、土岐 為頼などやはり優秀な家臣を有する西の大国だ。

我が国近衛家と同盟国の真里谷家と大変仲が良く同盟関係まで結んでいる。
近衛家と変わらない小国の真里谷家をそこまで大事にするのには理由がある、
里見家の宿敵、北条家の存在だ、里見家と北条家は領土を巡って長年に渡り争っており、東京湾を船で攻めるにしても、陸伝いに攻めるにしても、その進軍ルート上に真里谷家が存在している。

真里谷家は代々、里見家に協力的な立場をとっており、里見 義堯は真里谷家の大名、真里谷 信隆を対等な立場として扱っている。

里見家の攻略には真里谷 信隆に仲介役になってもらうのだが、攻略と言ってもどうして良いのか?全く糸口が見つからない。
里見家ほどの大国、金銭では動かないだろう、では?安全安心ならどうだろう、足利 義明の時はハイパースチール製の小袖や大口袴を進呈して攻略した。

里見 義堯ならばどうだろう、多分逆効果。
訳の分からない物を渡して、これは丈夫な物ですと言っても信用しないだろう、
そもそも、丈夫さを義堯にわからせるか方法がない。
義明にとったように酔った振りは使えない、面会を願い出るのはこちら側、親しくもない初対面の相手に酒なぞ出さないだろう、交渉が終わった後ならあるいは宴があるかもしれないが、それでは遅い。
信隆の顔を潰すことになるし、義堯を刺激するだけだ。

では、どうする?

いっそのこと港が完成したあかつきには、近衛家、里見家での共同使用を約束するのはどうだろう、大型船が停泊できる港だ、関東がこの先発展すれば間違いなく海洋貿易の拠点になる、もしかしたら異国の船も来るかもしれない、
里見家にとって、とてつもない良い話しだろう。

だが、港を里見家に使わせてしまっても良いものだろうか?
我が近衛家と里見家がこの先ずっと仲が良いとは限らない、争いになった時、港が我が国攻略のカギになるかも知れない、俺は思案した結果、今は里見家とは味方関係でありたいとの理由で共同使用案をもって里見家と交渉することに決めた。

さて、仲介役の信隆に誰が頼むかだが、やはり俺自身で動かなくては成るまい、
前のように頼成に頼むのではまた貸しを作りかねない。
しかし、俺では信隆に信頼がない、頼成の息子で近衛家の当主だから、話しぐらいは聴いて貰えるだろうが、里見家との仲介役をかってもらえるだろうか?

そもそも家と家との信頼関係は長い付き合いの中、助け合って築いていくものだ
ましてや戦国時代とあっては尚更だ。
一朝一夕になるものではない。

俺は義明にこの時代の作法を教えてもらい、些細な手土産を持参して信隆を尋ねた、唄に茶会にほぼ毎日通い詰め、1か月が過ぎた時、信隆が笑いながら俺に言ってきた。

信隆「頼友殿、何やらご存念がお有りか」

存念とは、何か思うところがあるのかと言う意味合いだ。

俺はすかさず切り出す。

頼友「流石は、信隆殿、隠せませんな、
不躾なお願いかと思いますが」

頼友「信隆殿に里見家との仲介役になってもらえないでしょうか?」

信隆は真顔になると、

信隆「近衛家には恩もあり、これからも良好な関係を築く意味で、お引き受けしましょう。」

信隆「しかし、頼友殿も頼成殿に負けずできるお方の様だ、末永くお付き合いをしたいものですな。」

里見家との面会には更に1か月の時間を要する、その間に信隆に言われた、持参の品を用意した。
海産物に米や麻織物、どの品も里見家にある物だが此方の誠意を見せる意味での持参品だ。

品の準備が完了して数日後、面会の日時が決まったとの知らせを真里谷城の使いが持ってくる、面会は今から5日後、支城の万熹城で執り行うとの事。

俺は弘綱を伴って、護衛として二十名の兵を率いて里見領に向かう。
行くのに2日、そこで身なりを整えて面会に臨む。
流石に大国だ里見領の広い事、未だ手付かずの土地が沢山ある、まぁ、城下町は我が国の方が遥かに発展しているが。

兵士を城の外で待機させ、弘綱と2人で面会する、里見側は義堯を筆頭に息子の義弘ほか数人の家老が居並ぶ中、面会を受けたことへの御礼を述べる。

義堯「で、頼友殿、此度はどの様な用向きか?」

俺は本題を切り出す。

頼友「この度、我が国は東金に港を設け東金城も改築したく、それに伴い佐竹家がチョッカイを出してきた際の援軍を賜りたく。」

我が国の領内を我が国が開発するのに他国の許可は必要ないが、無用な争いは避けるに越したことはない。

義堯「味方の国が発展することはやぶさかではないが援軍とな、我が国は今のところ佐竹家とは事を構えていない、里見家として兵を出すことは叶わないだろう」

頼友「万事、うまくいきましたら港を義堯殿にも使っていただく用意があります。」

義堯「港とな、まぁ、信隆の顔を潰す訳にもいくまい、兵を貸す程度のことはできよう。」

義堯は港には興味がないようだ、大方、小舟が数隻留められる港を想像しているのだろう。

義堯は後の事は義弘と詰めるように家老に申し付けると席を立った、俺は弘綱を前に出して詳しい取り決めを話し合った。

これで里見家の攻略は完了した。

あとは佐竹家だが、俺はしばらくの間ほっとく事にした。
話し合いは無理そうで、アマテラスを使って叩き潰す訳にもいかない、下手に手を出して眠った子どもを起こす必要もないだろう。

佐竹家が行動を起こすまで待とう。

開発は順調に進み大分 街並みらしくなってきた、街を照らす電力は貯水池の水力発電で賄えるがそれを送る送電線が足りない。

アマテラスに積んである資材では貯水池から東金城周辺を整備するだけで精一杯だ、ロケーションソナーを使えば鉱脈を探すことは可能だが今から銅山を開発するには時間がかかる。

俺はマイクロ波による送電網の構築を試みる。
貯水池に送電アンテナを設置して、電気をマイクロ波に変換して送ったものを、
各地に設置したマイクロ波受電アンテナで受けて、電気に変換し使用する。

大した技術ではない、山の上の貯水池から送れば大掛かりな設備も要らないだろう、受電アンテナは1メートルほどのもので済む。これなら、例えば各村の村長の住まいの屋根に取り付けるなんて方法もとれる。
この方法なら領内全てに電力が行き渡る筈だ、まずは城下から始めるが更にその先もある。

城下の再開発が始まって2年、ついに佐竹家との直接対決の日が訪れる。

彼等、佐竹家は従属国 千葉家から常に最新の情報を得ているはず、我が国が里見家と手を結んだことは既に知っているだろう、が、それでも佐竹は動いた!

それほど近衛家を脅威に感じたのだろう
監視システムが千葉家の兵士の数には不釣り合いな量の物資を佐竹家が千葉家に運び込むのを確認した。

今度は千葉家だけでなく佐竹家も攻めてくる、前回の様に水路で防ぐ作戦は通じないだろう、なんらかの対策を講じてくるはずだ。

佐竹家の居城、太田城を出た佐竹 義昭率いる約四千の兵が霞ヶ浦を抜け森山城の兵五百と合流、計四千五百が海岸線を通って真っ直ぐに東金城を狙ってきた。

こちらの兵は近衛家と里見家から借りた兵、合わせて二千、これだけの数の兵がまともにぶつかれば、相当な死者がでる
これでは俺の理想とする戦とはほど遠い

ならば相手を一方的に攻撃するか、方法ならいくらでもある、アマテラスからの地対艦ミサイルでの攻撃!掃海艇のガトリングガンによる機銃掃射!虐殺方法ならいくらでも。

最悪な結果を招かない為に策を講じる、掃海艇を使うことは同じだがもたらす結果は天と地の差。
この時期の房総半島は南岸前線の影響で海側から陸地に向かって風が吹く、その風に乗せて船から医療用の麻酔ガスを撒く、撒く量は風速、範囲、効果、空気密度をツクヨミに割り出させ決める。

効果に多少の誤差がではだろうが構わない、少し麻痺させるだけでいい、要は相手のやる気を削ぐ目的だ。

両軍が睨み合ってニ刻(約4時間)が過ぎる
麻痺ガスの影響で佐竹の兵の指揮は低い、我が軍の倍の兵にも関わらず攻めあぐねている。

俺はその様子を本陣で眺めながら、別働隊の連絡を待つ、そう、こちらの兵は陽動だ、今の我が国の国力ならば兵士の数は五千は用意できる、各城の防衛に当てた五百の兵を残し、三千の兵を率いた足利 義明と佐野 弘綱が千葉家の本佐倉城の攻略に動いている。

その中には雷重太率いる騎兵50騎も含まれる。
義明が行動を開始して6時間、そろそろ始まる時刻だ、作戦では騎兵50騎による正面からの先制攻撃した後、三千の兵をジリジリ進軍させ、千葉家に降伏を促す、千葉家は東金攻略に大半の兵を出している、本佐倉城を守る兵はせいぜい100~300、騎兵に驚き三千の兵を前にしては成す術なく降伏するに違いない。

更に2時間、まだ連絡が来ない、通信機の使い方がわからないはずはない、まさか失敗したのか?
可能性がない訳ではない、計算通り行かない事なんて、世の中には幾らでもある

その時、小弓城から本佐倉城の攻略に成功した旨の通信が入る、どうやら通信障害により連絡が取れなかったそうだ。

俺はこの時、通信障害を天候の所為か何かと軽く考えていた、この考えがのちに大変な事態を招く事になるのだが、今の俺は知る由もない。

本佐倉城の攻撃を早馬にて知った佐竹、千葉軍はその日の内に退却を開始した。

本佐倉城の捕虜は人質とはせず、我が軍に残りたい者を除いて解放した、本佐倉城を手に入れた意味は大きい、佐竹家への牽制に成るし、関東平野への道も開ける。

あっという間に三年が過ぎ、遂にその日が来た。
俺は港に停めた馬車の中で華姫の到着を待つ、京都への迎えは頼成自身が大型木造船で向かった。
その木造船は伊豆沖を過ぎ到着しつつある、俺は身なりを整えて馬車をでた。

大勢のお付きを連れて船の中から現れた華姫は十六才とは思えない程、名前通り、いや名前以上に華やかで、俺は見惚れてしまった。

華姫を乗せた馬車を先頭に5台の馬車が東金城を目指し動き出す、時刻は夕刻、
俺は狙ってこの時間帯に船が到着するように頼成と打ち合わせた、演出の為だ、

辺りが暗くなり道が街灯で照らされるなかを走る馬車、京風の街も花を添えるライトアップされた五層造りの東金城は闇の中浮かび上がる。

馬車の中、喜んでくれると思った華姫は
予想に反してただ一言、「これだけの物を作るのに、どれだけの人がエライ思いをしたのやろ、」そう言って黙ってしまう。

しかし、城下に入ると華姫の表情は一変する、道を埋め尽くす人、人、人、領内の全ての人が集まったような人並みは華姫を表す花を撒き、俺と華姫の結婚を祝福してくれる。

華姫は、初めて笑顔を見せ「貴方様は家臣だけでなく、領民にも慕われるお方様なのですね」そう言って俺の手に自分の手を添え「末永くよろしゅうお願いします」と深くお辞儀をした。

城から観た城下の風景は雅そのものであり、夜景を彩る家々の電灯はさながら無数の蛍が乱舞している。

照明を落とした部屋でその光景を二人で観ながら、俺は子孫繁栄計画を華姫に話す、華姫は目を丸くしながらも、黙って俺の話しを聴いてくれた、月明かりの中その頬は少し赤らんで見えた。













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