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十一
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お昼休み。
今日は朝に買っておいたパンとおにぎりを持って、僕は4階から屋上に続く階段へと上る。
「こんにち……わっ!?」
驚いた。いや、柊さんは長椅子に座っていてもぐもぐしていただけだけど。驚いたのは、昨日はいなかった男子が床に足を伸ばして座っていて、僕はその足に引っかかりそうになったから。
ごめんと謝る前に、男子がすくっと立ちあがり、僕を睨む。
「ここ、立ち入り禁止だけど。あんたなに?この人のストーカー?」
彼のブレザーに付いてる校章は僕と柊さんと同じ学年の色をしていた。
柊さんにも一緒にお昼を食べる人がいたんだ。よかったと僕は思う。一人でのんびり食べるのもいいけど、誰かと食べるのは美味しさが増すような気がするから。
「僕はストーカーじゃなくて……。」
僕は言葉を止める。はたして鬼の世界のことを彼は知っているのだろうかと。
奥にいる柊さんを見ると、こちらを気にすることなく、もぐもぐしている。
なんか、ここにいる時の反応薄いような気がする。
「えーっと、柊さんに用があって。立ち入り禁止なのは知ってるけど、それはうん、ごめんなさい。あと、足、大丈夫?それもごめん。」
立ち入り禁止の場所にいるのはお互い様じゃないのかなというのはひとまず心の中に留めておいた。
「なんの用?具体的に。」
「それは……。」
僕が言い淀んでいると、「昨日の。こちらに」と柊さんは彼の後ろからひょっこり顔を見せ、ちょいちょいと手招きをした。その拍子に、彼女の使っていた箸が弁当の蓋からカラッと転がり落ちた。
「あ。」
「あっ。」
「あー。」
柊さん、僕、彼は同時に声を発した。
「ストップ。透様。俺が拾うので。そのまま。動かず。」
彼は柊さんに手の平を向け、ステイとまるで犬の待てを指示しているかのようにしてそろそろと箸を拾う。
柊さんも、飼い主の指示を従順に待つ忠犬のごとく止まっていて、彼が椅子の下にある箱から出した新しい箸を受け取るまでピクリとも動かなかった。
その間、僕はなんとなくじっと待っていて、妙な緊張が主に彼の方から感じるなと思いつつ見ていた。
「透様、それはなんですか?」
彼は柊さんの膝からおかずの入ったお弁当箱を椅子に移動して、制服のお腹の辺りにソースやケチャップが付いてないかどうかを確認しながら尋ねる。
椅子に座る柊さんに対して彼は跪いていて、犬と飼い主と言うよりは、主と従者、いや、小さな子供と保護者のようだった。
「言わなかったっけ。」
「聞いてませんが。」
「じゃあ後で話すよ。とりあえず彼に危険性は全くないから。もういい?」
「……分かりました。」
渋々と彼は引いた。
「これ、どうぞ。」
柊さんは立ち上がり、僕に紙切れを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
柊さんから受け取った半分に折られた紙をカサカサと開く。
そこには僕の字で佐藤唯人としっかりあった。
「夢、じゃないんだ。」
鬼の世界があるという現実が手の中にある。夢のような現実が。
やっと一つはっきりしたことで、また別のはっきりしないことが現れる。終わならない、繰り返しだ。
「あの、柊さん……。」
既に柊さんはとっとと椅子に座っていて、エビフライをパクッと頬張っていた。
「用が済んだならさっさと帰れ。」
また彼に睨まれて、僕は素直に帰ることにした。
階段を下る。
今日は一緒に食べようと思ったんだけどなぁ。どこで食べよう。というか、彼は一体。柊さんを透様と呼んでいたけど。
「小谷は知ってるかなぁ。」
黒髪につり目、だけじゃ特定は難しいか。あとは……そうだ、ピアスをしていた。あの形は勾玉っていうんだっけな。
ぐぐーっと伸びをする。
食堂は人が多いし……。そうだ、中庭に行ってみよう。今日は天気がいいから日向ぼっこができそうだ。
今日は朝に買っておいたパンとおにぎりを持って、僕は4階から屋上に続く階段へと上る。
「こんにち……わっ!?」
驚いた。いや、柊さんは長椅子に座っていてもぐもぐしていただけだけど。驚いたのは、昨日はいなかった男子が床に足を伸ばして座っていて、僕はその足に引っかかりそうになったから。
ごめんと謝る前に、男子がすくっと立ちあがり、僕を睨む。
「ここ、立ち入り禁止だけど。あんたなに?この人のストーカー?」
彼のブレザーに付いてる校章は僕と柊さんと同じ学年の色をしていた。
柊さんにも一緒にお昼を食べる人がいたんだ。よかったと僕は思う。一人でのんびり食べるのもいいけど、誰かと食べるのは美味しさが増すような気がするから。
「僕はストーカーじゃなくて……。」
僕は言葉を止める。はたして鬼の世界のことを彼は知っているのだろうかと。
奥にいる柊さんを見ると、こちらを気にすることなく、もぐもぐしている。
なんか、ここにいる時の反応薄いような気がする。
「えーっと、柊さんに用があって。立ち入り禁止なのは知ってるけど、それはうん、ごめんなさい。あと、足、大丈夫?それもごめん。」
立ち入り禁止の場所にいるのはお互い様じゃないのかなというのはひとまず心の中に留めておいた。
「なんの用?具体的に。」
「それは……。」
僕が言い淀んでいると、「昨日の。こちらに」と柊さんは彼の後ろからひょっこり顔を見せ、ちょいちょいと手招きをした。その拍子に、彼女の使っていた箸が弁当の蓋からカラッと転がり落ちた。
「あ。」
「あっ。」
「あー。」
柊さん、僕、彼は同時に声を発した。
「ストップ。透様。俺が拾うので。そのまま。動かず。」
彼は柊さんに手の平を向け、ステイとまるで犬の待てを指示しているかのようにしてそろそろと箸を拾う。
柊さんも、飼い主の指示を従順に待つ忠犬のごとく止まっていて、彼が椅子の下にある箱から出した新しい箸を受け取るまでピクリとも動かなかった。
その間、僕はなんとなくじっと待っていて、妙な緊張が主に彼の方から感じるなと思いつつ見ていた。
「透様、それはなんですか?」
彼は柊さんの膝からおかずの入ったお弁当箱を椅子に移動して、制服のお腹の辺りにソースやケチャップが付いてないかどうかを確認しながら尋ねる。
椅子に座る柊さんに対して彼は跪いていて、犬と飼い主と言うよりは、主と従者、いや、小さな子供と保護者のようだった。
「言わなかったっけ。」
「聞いてませんが。」
「じゃあ後で話すよ。とりあえず彼に危険性は全くないから。もういい?」
「……分かりました。」
渋々と彼は引いた。
「これ、どうぞ。」
柊さんは立ち上がり、僕に紙切れを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
柊さんから受け取った半分に折られた紙をカサカサと開く。
そこには僕の字で佐藤唯人としっかりあった。
「夢、じゃないんだ。」
鬼の世界があるという現実が手の中にある。夢のような現実が。
やっと一つはっきりしたことで、また別のはっきりしないことが現れる。終わならない、繰り返しだ。
「あの、柊さん……。」
既に柊さんはとっとと椅子に座っていて、エビフライをパクッと頬張っていた。
「用が済んだならさっさと帰れ。」
また彼に睨まれて、僕は素直に帰ることにした。
階段を下る。
今日は一緒に食べようと思ったんだけどなぁ。どこで食べよう。というか、彼は一体。柊さんを透様と呼んでいたけど。
「小谷は知ってるかなぁ。」
黒髪につり目、だけじゃ特定は難しいか。あとは……そうだ、ピアスをしていた。あの形は勾玉っていうんだっけな。
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