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十九
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綾目さんが「私、お茶用意してきますね!」と言って、干鰯谷くんも「手伝います」と連れ立って部屋を出ていった。
僕も手伝おうと思ったのだけれど、「お客様は座ってて」と3人から口を揃えて言われてしまったので、ふわふわのソファを大人しく堪能させてもらっている。
一方、僕と同じく部屋に残った柏那さんは書類やノートパソコン等、机の上の物を片付けていた。
「さっきの質問だけど」と、手持ち無沙汰な僕に柏那さんは話しかけてくれる。
「代わりに答えさせてもらうと、透ちゃんは現在生きている人間の中で唯一、一切なんの影響も受けずに2つの世界を行き来できる存在だよ。彼女は、選ばれた人間だからね。」
柊さんは選ばれた人間……。
誰に?というのは多分、目には見えない、僕には分からないなにかなのだろう。神様とか天とかそういう感じの。
それならじゃあ、学校での反応の遅さは?と考えると……。悲しくなってきたなぁ。
「透ちゃんは学校に興味が無いから校内にいる時は大抵いつもやる気のスイッチを切ってるんだよ。佐藤くんが疑問に思ったのはここかな?体調が悪いわけじゃないから安心して。紛らわしくてごめんね。」
柏那さんは僕の思考を読んだかのようにして答えた。
「……あはは。」
僕は気が抜けて笑ってしまった。まさかやる気がなかっただけとは……。
僕はまだまだ柊さんのことを知らないらしい。当然か。とにかく柊さんに嫌われているわけではないようでよかった。
「お役目の時はしっかりしているんだけどね。僕としては授業はともかく、友達を作ったり、行事に参加したり、高校生活を楽しんで欲しいのだけれど、私には必要ないと言われてしまって……。」
あんまり言うと学校に来なくなりそうだし……と保護者のようなことを言う柏那さん。
「あぁ……。」
僕はなんと言っていいか分からず濁す。
僕は、柊さんが教室で誰かと話しているところを見たことがない。それは一人が好きだからだと勝手にそう納得していたけれど、それだけじゃなく、彼女が意識的に人との関わりを避けているということもあるのか。
そうなると、僕が鬼の世界に迷い込まなかったら、同じクラスなのに柊さんと話すことは一度もなかったということも有り得る。
柊さんじゃなくても。たった40人。同じ空間で1年過ごしても全員と話すことは難しい。
「透ちゃんは人が嫌いなわけじゃないんだ。本来は人が好きな子で、昔は笑顔で溢れてた。でも……。」
柏那さんはそこで、言葉を切る。
友達は必ずしも必要なものではないし、強制されて作るものでもない。一人が好きなら一人でいてもそれは個人の自由だと思う。
だけど、柊さんは本当にそうなのだろうか。
「優しい子だから」と柏那さんは言った。
多分、もっと他に言いたいことがあったのだろう。しかし、柏那さんは僕には全てを言わず、それらの言葉を優しいに変換して出力した。
「この子は、目に見えるもの全てを救おうとしてしまうんだよ。それが誰であろうとね。」
全く困ったものだよと柏那さんは全く起きる気配のない柊さんを見て、呟く。
誰であろうと全てを救おう、と……。
僕は、自分のことで精一杯で人を助ける余裕なんてなくて、でも、柊さんは人間のいない世界でたった一人、鬼に立ち向かい、人を救けている。
同じ年のはずなのに。僕とは違って、柊さんはとても立派な人だ。
でも。
でも、僕たちは高校生になったばかりで、大人になるまでの猶予はもう少しあるはずの子どもで。それなのに、友達も、楽しむことさえも必要無いと言う、隣で健やかに眠る彼女の笑った顔を僕はまだ、一度も見たことがない。
興味がない。必要ない。本当にそうなのだろうか。
僕から見た教室の柊さんは。窓際の一番後ろの席から、同級生たちを眺める柊さんの表情は、まるで ──。
僕も手伝おうと思ったのだけれど、「お客様は座ってて」と3人から口を揃えて言われてしまったので、ふわふわのソファを大人しく堪能させてもらっている。
一方、僕と同じく部屋に残った柏那さんは書類やノートパソコン等、机の上の物を片付けていた。
「さっきの質問だけど」と、手持ち無沙汰な僕に柏那さんは話しかけてくれる。
「代わりに答えさせてもらうと、透ちゃんは現在生きている人間の中で唯一、一切なんの影響も受けずに2つの世界を行き来できる存在だよ。彼女は、選ばれた人間だからね。」
柊さんは選ばれた人間……。
誰に?というのは多分、目には見えない、僕には分からないなにかなのだろう。神様とか天とかそういう感じの。
それならじゃあ、学校での反応の遅さは?と考えると……。悲しくなってきたなぁ。
「透ちゃんは学校に興味が無いから校内にいる時は大抵いつもやる気のスイッチを切ってるんだよ。佐藤くんが疑問に思ったのはここかな?体調が悪いわけじゃないから安心して。紛らわしくてごめんね。」
柏那さんは僕の思考を読んだかのようにして答えた。
「……あはは。」
僕は気が抜けて笑ってしまった。まさかやる気がなかっただけとは……。
僕はまだまだ柊さんのことを知らないらしい。当然か。とにかく柊さんに嫌われているわけではないようでよかった。
「お役目の時はしっかりしているんだけどね。僕としては授業はともかく、友達を作ったり、行事に参加したり、高校生活を楽しんで欲しいのだけれど、私には必要ないと言われてしまって……。」
あんまり言うと学校に来なくなりそうだし……と保護者のようなことを言う柏那さん。
「あぁ……。」
僕はなんと言っていいか分からず濁す。
僕は、柊さんが教室で誰かと話しているところを見たことがない。それは一人が好きだからだと勝手にそう納得していたけれど、それだけじゃなく、彼女が意識的に人との関わりを避けているということもあるのか。
そうなると、僕が鬼の世界に迷い込まなかったら、同じクラスなのに柊さんと話すことは一度もなかったということも有り得る。
柊さんじゃなくても。たった40人。同じ空間で1年過ごしても全員と話すことは難しい。
「透ちゃんは人が嫌いなわけじゃないんだ。本来は人が好きな子で、昔は笑顔で溢れてた。でも……。」
柏那さんはそこで、言葉を切る。
友達は必ずしも必要なものではないし、強制されて作るものでもない。一人が好きなら一人でいてもそれは個人の自由だと思う。
だけど、柊さんは本当にそうなのだろうか。
「優しい子だから」と柏那さんは言った。
多分、もっと他に言いたいことがあったのだろう。しかし、柏那さんは僕には全てを言わず、それらの言葉を優しいに変換して出力した。
「この子は、目に見えるもの全てを救おうとしてしまうんだよ。それが誰であろうとね。」
全く困ったものだよと柏那さんは全く起きる気配のない柊さんを見て、呟く。
誰であろうと全てを救おう、と……。
僕は、自分のことで精一杯で人を助ける余裕なんてなくて、でも、柊さんは人間のいない世界でたった一人、鬼に立ち向かい、人を救けている。
同じ年のはずなのに。僕とは違って、柊さんはとても立派な人だ。
でも。
でも、僕たちは高校生になったばかりで、大人になるまでの猶予はもう少しあるはずの子どもで。それなのに、友達も、楽しむことさえも必要無いと言う、隣で健やかに眠る彼女の笑った顔を僕はまだ、一度も見たことがない。
興味がない。必要ない。本当にそうなのだろうか。
僕から見た教室の柊さんは。窓際の一番後ろの席から、同級生たちを眺める柊さんの表情は、まるで ──。
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