上 下
17 / 24

二人の会話

しおりを挟む
「あっ」

 ふと窓を見た男は青い目をしていた。女も窓を見る。あぁなるほどと女は思った。

「晴れましたね」

「晴れましたね」

 二人とも同じくらいの年のように見えた。友達か、はたまたカップルか。

「あっ、そっか。晴れた空と同じなんだ」

 女は窓の外と男の目を交互に見てからそう言った。男は口を閉じたまま少し動かした。まるで笑みを堪えるかのように。

「……変わってないですね」

「やっぱりよく言われますか?」

「2回目です」

「それ変わってません?」

「変わってませんよ」

 ちぐはぐな会話に女は首を傾げる。変な人と。

「……現代人は空を見ないのでしょうか。こんなに綺麗なのに」

「現代人ですがよく見ますよ。空、好きなので」

 空という単語に女は先程の男とは反対に隠さず微笑んだ。

「照れちゃいますね」

「空が?」

「空が」

 男は微笑んだ。

「空が照れると夕焼けになるんでしょうか」

「世界で一番美しい照れ顔だと思います」

 男はそう思うと夕方も寂しくないかもなといつかの夕焼けを思い出していた。

「雨も止んだのでそろそろ私はこれで」

「はい。なんか勢いで相席になってしまってすみませんでした」

「いえ。お互い様ということで。お話できて楽しかったです」

「俺も楽しかったです。ありがとうございました」

「では」

「では」
しおりを挟む

処理中です...