バウンティハンター

ペンネームナシケイ

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第3話

バウンティハンター 黒革の手帳

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「気づくのが遅れて申し訳ない」
シーボルトは頭を下げた。
「遅すぎでしょ!!もっと三十年前に来ていたら第三次世界大戦もなかったし、東京オリンピックだって
やっていた。三十億人もの人々が死ななくてもよかった!!」
氷見は目を吊り上げた。
「そうだよな。俺もバカげた契約しないでまっとうに刑期を終えていた」
エレミアが声を荒げる。
「ミュータント化した動物が凶暴化して退治にひと苦労しているハンターを見てみろ。奴らをもっと前に逮捕
していたら生態系は変わらなかった」
「しょせんお役人よね」
リックとジェルは怒りをぶつける。
「ではどうしろと言う!!我々も日々忙しいのだよ。やっと探し出してたどり着いた」
怒りをぶつけるシーボルト。
「ケンカはやめんか!!」
一喝するヨセフ。
振り向くシーボルト達
「ここは協力して戦うべきです。今なら間に合うと思います」
バージルは口を開いた。
「私達はそのためにいる」
ドールが言う。
「ワシはは六十五歳のジジイだが、おまえさん達は若い。現状を受け入れるしかないのだよ。起きた事は
戻せない。タイムマシンがからむ映画を見たことがあるか?ターミネーターでは「審判の日」は避けられ
なかった。なら現状をどうするか考えなければいけない。エレミア。ジジイの節介で悪いがその体を
受け入れるしかない」
重い口を開くヨセフ。
うなだれ船員の座るイスに座るエレミア。
「バージル、ドール。巻き込んで申し訳ないと思っている」
ヨセフは頭を下げた。
黙ったままのバージルとドール。
「時空管理局が追っているのがこの者達だ」
話を切り替えシーボルト。彼はスクリーンに何名かの名前を出した。
「ワシはこいつを知っている」
あっと声を上げるヨセフ。
「え?」
「サムエルと永野だ」
ヨセフは指をさした。
「知り合い?」
氷見とジェルが聞いた。
「ハーバード大学やオックスフォード大学の教授で学会でも一緒になった。ワシは会った事がないが、
この人はダイバーエージェンス播磨工業の創始者で社長のフランクリン」
ヨセフが中年の男性を指さす。
「最近会いましたか?」
バージルが聞いた。
「この二五年会ってない。音沙汰もないからてっきりあの戦争で死んだと思っていた」
ヨセフが首を振る。
「彼らは生きている。この二〇、三〇年、容姿は変わっていない。二人は迷宮機関の幹部で、フランクリンは
二十九世紀からやってきた異星人だ。フランクリンには二人の側近と司令官がいる。ハンナ、クシエル、
ピサロの三人だ」
シーボルトは画像を出した。
映像にさまざまな人種の人物が出てくる。日本人やモンゴル人、デンマーク、ブラジル系の人種もいる。
「バカな。永野とサムエルは若いままだ」
驚きの声を上げるヨセフ。
「ハルベリーみたいに改造しているとか?」
割り込むリック。
「否定はしない。ダイバーエージェンス播磨工業は存続しているうえに迷宮機関がある。そこにタイムスリップ
装置がある施設は別にある。我々も所在がつかめていない」
顔をくもらせるシーボルト。
「いきなり彼らに迫るのは無理ね。協力者から攻めていかないと虎は狩れない」
それを言ったのは氷見である。
「それはそうだ」
納得するジェルとリック。
「これだけの人物がいて武器を売りさばく売人や販売部門からいかないと弁護士がでてきてややこしくなるわ。
証拠を固めないと」
氷見が言う。
「エリオットやオスカー会長に相談した方がよくない?」
リックが割り込む。              
「他のロボットや機械を私は遠隔操作できます。つまり、米軍のイージス艦、駆逐艦でも簡単にシステム
に入れます」
バージルが笑みを浮かべる。
「それってターミネーターのT-Xと同じじゃん」
ジェルが驚く。
「迷宮機関にいろんな機能を加えられたので機械を操るのは簡単です」
言い切るバージル。
「それは心強い。タイムマシン装置を破壊してフランクリンをなんとか捕まえるんだ。時空管理局も
探しているんだ」
うなづくシーボルト。
「じゃあ決まりね」
氷見がうなづく。
「そのドアを抜ければ元の空間に戻れる」
シーボルトは言った。
 
 とあるビルの一室。その部屋には円板があり天井と壁に電磁場を生み出す四角形タイルがは
めこまれている。天井の円盤からつながった二本の支柱がクルクル回っている。浅黒い肌の男は
満足げに笑う。
 支柱の動きと電磁場から稲妻が放出され閃光とともに青白い光球が出現。その光球から現われる女。
女は無言で台から降りる。
 「サムエル博士。ライデッカー技師に装備を受け取るように言われました」
 女は口を開いた。
 「そこの台車に服がある。ライデッカーは市の階にいる」
 サムエルと呼ばれた黒人男性は機器の調整を操作しながら振り向く。
 女はそばにある台車にある服を着た。女は顔色一つ変えずに下の階へ降りていく。部屋でいろんな
機器を組み立てる浅黒い肌の男。
 「ライデッカー技師ですか?」
 女は聞いた。
 「なかなかいい女だ。君の許可証だ。名前はメイ。パスポートがこれだ。やることはわかっているようなので
改めて言わない」
 ライデッカーはパスポートと社会保障番号が書かれた保険証と携帯を渡した。
 メイと書かれた保険証、パスポート、携帯電話をもらうとさっさと出て行く。
 メイは車に乗ると人差し指を出した。その指はプラグに変形。車のカーナビに差し込む。
 カーナビに顔写真が何枚も表示される。第一目標に氷見十六夜、リック・シュルツ、ジェル・トムパッカーン
とヨセフで、もっとも重要な目標はバージル、ドール、エレミアと表示される。第二目標がオスカー、イリーナ、
武藤、エリオット、ホランドである。
 「第一目標と最重要目標はトルコか」
 メイは車から降りた。


イスタンブール市内
「・・・未来人の言うとおりね。元の空間に戻った」
氷見はつぶやいた。
時空船のドアを出るとそこはコーヒー屋の外だった。
とてもすごい技術だ。時間と空間をつなげられるのだから。三十一世紀から来たならそれは簡単
なのかもしれない。
「バージル。探知できなかったの?」
ジェルが聞いた。
「向こうの方がはるかにテクノロジーは上ですね。船外がどうなっているのか探知は不可能でした」
バージルは答えた。
「三十一世紀はすごいテクノロジーが目白押しなんだろうな」
リックはつぶやく。
「ワシも驚きの連続だよ。船内にいる間は携帯は圏外になっていた」
ヨセフが口をはさむ。
「バージル。他に知り合いのサイボーグとか金属生命体はいるの?」
氷見が聞いた。
「終戦後、国連軍に監視下に置かれる前に他の仲間は自由にして逃がしました。今でもどこかに
隠れています」
バージルはどこか遠い目をする。
「でも塚本の依頼を受けたらあなたとドールが仲間になった。そしてハルベリーの依頼ではエレミアが。
今になって集まってきている。敵だって見ているはずね」
氷見が気になることを言う。
自分達は迷宮機関と関わっている。ゆえに迷宮側も警戒している
「オスカー会長はどこにいる?」
リックが聞いた。
「会長達は市内の国連事務所」
ジェルがタブレット操作しながら言う。
「依頼が来るのは時間の問題ね」
あっさり言う氷見。
「え?」
「ライデッカーは武器商人で迷宮機関と関わりがある。彼はよくアフリカに武器を売りに行く。エジプト
から先がつかめていない」
氷見が携帯で写真を出した。
「アフリカは塚本やハルベリー以上に危険よ。アフリカ地域はもっとも復興が遅れている。海に面
している国や都市は復興して基地があるけど内陸部は完全な暗黒地帯よ。もともと政情不安でクーデター
が多い地域もあった。そして核ミサイルと化学兵器の汚染で放射能病や奇形、障害者の発症率が八割、
ミュータント化した動物が野放し、無法者、盗賊、海賊のオンパレード。ライデッカーはそこで闇市場に
横流しにしている。それにアフリカへ行くパスポートはどの国も出していない。無法者、ミュータント化しした
動物を遮断するための高さ三十メートルの砂漠の壁が国境地帯にあって自由に行き来できない」
ジェルはタブレット操作しながら説明した。
「本当に暗黒大陸ね」
氷見がつぶやく。
これでは内陸部がどうなっているのかわからない。
「事務所に戻って考えようか」
ヨセフは言った。


イスタンブール港
メイは港からイスタンブール市内に入った。
彼女はタブレット端末を出した。地図にハンター事務所が表示される。画像に氷見達の写真が添付される。
メイは早足で歩き出した。

食堂でコーヒーを飲むリック、ジェル、ヨセフ。
氷見はお茶を飲んでいた。
バージルは窓の外をのぞいた。
「どうした?」
ヨセフが聞いた。
「迷宮機関のアンドロイドです」
バージルが答えた。
氷見の脳裏になにかよぎった。それは女暗殺者がやってくる映像だ。
「そいつを迎え撃つわ・・・」
氷見は最後まで言えなかった。バルカン砲の銃声が鳴り響き、彼らは身を伏せた。
窓から入ってくる女。
身構える氷見達。
「誰あんた?」
氷見は聞いた。
「メイだ。お前たちを抹殺する」
メイと名乗った女は片腕をプラズマバルカン砲に変形した。せつな、リックの短剣が何度も切り裂き、
ジェルの光球が貫き、氷見の影色の触手が巻きつき射抜く。しかし彼女は何もなかったように立ち、
傷口はすぐに治っていく。
メイとバージルが同時に動いてメイの方が吹き飛び、壁ごと下の道路に落ちた。
続いてドールのパンチ。メイが下の道路ごと三〇センチ陥没した。
エレミアは掌底の発射口から青白い光線が放出。メイが凍った。
事務所から飛び出す氷見達。
氷の塊にヒビが入り割れてメイが動いた。
バージルはその腕をつかみ背負い投げ。その頭をつかんで道路に何度もたたきつける。メイは足払いを
かけて転ばせ、片腕を短剣に変えて突き刺した。
「ぐふっ!!」
バージルは口から青色の潤滑油をしたたり落ち、その腕で彼女の腕をつかむ。
「私の主体コアは空母にある。おまえの主体コアはどこだ?」
バージルはにらんだ。
「おまえのプラグラムを破壊・・・」
メイは最後まで言えなかった。エレミアの腕の短剣で背中を貫かれ、ドールに頭部を突き刺されたからである。
メイは表情を変えずに体の向きを変えてエレミアとドールの胸を突き刺し、心臓をつかんだ。
「ぐああああ!!」
心臓を万力で締め付けられるような痛みに二人は身をよじる。
リックが動いた。通りすがりに爆弾をくっつけた。
メイは背中から金属の触手を出した。せつな閃光とともに爆発。
エレミアとドールを離した。
メイが向かいの壁に激突する。
バージルとドール、エレミアが同時に動く。メイが両腕から短剣を出して動いた。何度も交差してメイがたたき
つけられ、ドールとエレミアは隣りの家に突っ込む。
バージルの速射パンチをかわすメイ。
メイの鋭いキックを受け流しバージルのパンチを放つ。
メイは地面にバウンドして車に突っ込む。
氷見は切れた電線をつかみとっさにメイの首すじに突き出した。
バリバリ!!
瞬時に百万ボルトもの電流が流れた。頭部の部品や体の部品が飛び黒煙が出て倒れた。
バージルは足で踏みつけた。メイの首の背骨が壊れ部品が飛び出す。彼はメイの頭部を力ませに引きちぎる。
メイの体はもがいた。
「その状態では通信もできないようだ。おまえも死なないように改造された」
頭部だけとなったメイの顔を見ながら言うバージル。
「計画にない・・・」
くやしがるメイ。
トルコ軍の車両が接近してくる。トルコ軍のジープにエリオットが乗っている。
拘束ロープでメイの体をしばるドール。
「迷宮機関のアンドロイドを捕まえました。主体コアのある乗り物がどこかにあるハズです。その捜索を
手伝ってくれませんか?」
バージルは言った。

二時間後。トルコ空軍基地。
「ロボットの解体を見せられるとはね」
氷見、リックは声をそろえた。
国連軍も駐留する基地の格納庫でバージルは冷静に片腕をレーザーメスに変えて首元から腹部から
切開してドールが傷口を開く。
エリオット、オスカー、イリーナ、武藤、ホランドは黙ったまま見ている。
メイの頭部は台に固定されて口にガムテープが貼られている。
「メイの主体コアがある船は小型潜水艦だった。小型っても全長は一〇〇メートルでどこから見ても
ロシアの潜水艦らしいよ」
ジェルが写真を見せた。
「あのアンドロイドはどうなるの?」
氷見が聞いた。
「コアと心臓、エネルギー発生装置は俺とバージル、ドールで吸収する。あの小型潜水艦の武器、
主体コアも俺達で仲良く山分けになる。停止したロボットやアンドロイドはそうやって俺達は吸収してきた」
エレミアは説明した。
「合理的なやり方だな。そうすれば復活しないからな」
納得するヨセフ。
「メイの頭脳にあったのは重要人物の抹殺だ。第一目標、最重要目標は氷見、リック、ジェル、ヨセフ、
バージル、ドール、エレミアと私とオスカー、イリーナ、ホランドと国連本部の総長。第二目標が総司令官、
スクードのメンバーだ」
エリオットは資料を見せた。
「でも想定外の事が起こって失敗した」
エレミアが言う。
「まさか君が電線で感電してショートさせるとは思っていなかった」
エリオットは腕を組んだ。
「運がよかっただけと思います。オスカー会長。ライデッカーに依頼書はきていませんか?」
話を切り替える氷見。
「ライデッカーは迷宮機関のメンバーだ。ただアフリカ諸国、インド、中東諸国から賞金がかけられている。
こいつと一緒にね」
オスカーは二枚の手配書を見せた。
「モーロック?」
ジェルとリックが声をそろえた。
「アフリカにある国でソラリス国があった。インド洋に面していて紅海を通過する船舶にとっては要所であると
同時に海賊、盗賊、無法者が跋扈している海域だ。モーロックはソラリス国を乗っ取り自分の王国を築いた」
ホランドが説明した。
「ソラリス国は三十年前から無政府状態で海賊、盗賊が跋扈していた。核ミサイルは落ちなかったが
化学兵器が蒔かれた。終戦後は放置されてモーロックが自分の王国を築く。内陸に砦を築いて
そこにいるみたい」
ジェルはタブレット端末を操作する。
「国連本部もハンター協会もこの依頼はすすめていない。私もこの依頼は進めない」
オスカーは難しい顔をする。
「なんで?」
氷見が聞いた。
「アフリカの現状を知っているかね?三十年前とはまったくちがう。モーロック以外に無法者が縄張り争い
をしている。もっと内陸部へ行けば死の湖、死の沼といった汚染地域がありゾンビもいる。無政府に
なったうえに無法者が群雄割拠している状態なんだ。どこの国の大使館もアフリカへのパスポートは
出していない。やっと復興しているのはエジプト、スーダン、南アフリカといった海側だけ。国境は
高さ三十メートルの壁で隔てられている。通称「砂漠の壁」がある」
エリオットは地図を出した。
「本当に海側だけなんだ」
絶句する氷見、リック、ジェル。
「ライデッカーとモーロックは迷宮機関のメンバーと協力者という関係だ。ソラリス国は海側にあるぞ」
ヨセフが指摘する。
ソラリス国は正式な名前をソラリス民主共和国という。位置的にはアフリカの角と呼ばれた。一九九一年
にそれまでの政権が失脚して憲法が停止になり内戦が始まり、無政府状態になる。それが第三次大戦
では化学兵器が何度も使用され多数の犠牲者が出た。終戦後はモーロックがやってきて自分の王国を
勝手に作り始めた。
「モーロックは横流しされた哨戒船やホバークラフト艇、装甲車、戦車を持っている。その武力で他国や
他の都市を略奪する。かならず襲うときは専用のバンドメンバーを連れていてへヴィメタル音楽を大音響
でならしながら襲撃する。あだ名は「狂気のモーロック」「マッドモーロック」だ」
ホランドは資料を出した。
「国連軍もソラリス国に上陸したが陸上からレールガンで攻撃してくる。非常に強力な武器を持っている
から手が出せない」
オスカーは腕を組んだ。
「それをバージル、ドール、エレミアに行けというのは都合がよすぎませんか?」
けげんそうな顔の氷見。
「今回はヨセフ博士は同行ができない」
ホランドが顔をくもらせる。
「でも誰かが行かないといけない。エジプトがもっとも復興しているからそこで情報を収集しませんか。
止めても私は行きますが」
当然のように言う氷見。
「情報収集は許可する」
オスカーはため息をついてパスポートを渡した。
「それと君達にお客さんが来ている」
ホランドが口をはさむ。
「お客さん?」
聞き返す氷見。
「バージル、ドール、エレミアもだ。基地の応接間だ」
エリオットが言った。
氷見達は互いに顔を見合わせると格納庫から基地の官舎に入った。いくつかの部屋を通り過ぎて
応接間に入る。
そこに三人の自衛隊将校がいた。
「私は防衛省諜報部の高須と宮崎、田辺」
背の高い将校が自己紹介する。
「君らの事は聞いている。そのアンドロイドとサイボーグをチームに入れているとか」
宮崎が資料を見ながら言う。
「なんですか?」
けげんそうな顔の氷見。
「我々自衛隊はこの船の行方を捜している」
田辺は写真と資料を出した。
「護衛艦「あかぎ」?」
氷見が首をかしげた。
「空母?」
リックとジェルが声をそろえる。
「ヘリ空母です」
バージルが答えた。
「もう一隻空母がいたんだ」
声をそろえる氷見、リック、ジェル。
「大戦中に「あかぎ」は空母エスペランサーからの信号で我々を裏切り離脱した。主体コアにこの
日本人とパキスタン人のハーフのサイボーグがいた」
写真を見せる宮崎。
「何が言いたい?}
エレミアが声を低める。
「君のチームにアンドロイドとサイボーグがメンバーに入っている。それに裏切るように信号を出した
空母エスペランサーは目の前にいる。もう一度信号を出せば「あかぎ」だけでなく他の仲間だって出てくる」
高須は机をたたいた。
「なんか勘違いされていませんか?」
声を低める氷見。
「その空母と潜水艦と戦闘機は国連軍の船や戦闘機を次々撃墜、撃沈。ロボット軍団が出てきて我々は
多数の犠牲者を出した。それはロシアや中国、オーストラリア、アメリカも同じ。各国政府はそいつらを
逮捕して解体することをのぞんでいる」
高須は詰め寄る。
「それは出来ないと思います」
ドールが口をはさむ。
「彼らは金属生命体よ。簡単に解体なんてできないわ」
氷見は腕を組んだ。
ようするに自分達に「あかぎ」や他の仲間を連れてきて逮捕したいようだ。しかし彼らは迷宮機関と
戦う貴重な戦力だ。
「空母エスペランサー。「あかぎ」はどこだ?他の仲間もだ」
ドスの利いた声の高須。
「終戦後。私は仲間を自由にした。彼らは隠れている。あなた方には見つからない」
はっきり言うバージル。
「見つけ出してどうされるんですか?彼らを閉じこめるんですか?」
リックが声を強める。
「彼らの能力は電波妨害や他の機械のシステムに入ることは簡単で突破されます」
ジェルが言い寄る。
歯切りする高須、宮崎、田辺
「今、国連本部とハンター協会は迷宮機関を追っている。追い詰めるには彼らの力が必要なの。
あなた方にできますか?」
 鋭い質問をする氷見。
 無言になる三人の将校。
 「空母エスペランサー。ドール、エレミア。各国政府はお前達がスクードやハンター協会を離れた
時点で逮捕できる権限を持っている。それは「あかぎ」や他の仲間もだ」
 高須は口を開いた。
 「それはできないと思うわ」
 氷見が声を低める。
 「なぜかね?」
 キッとにらむ高須。
 「彼らは貴重な戦力よ。また必要になるわ」
 氷見はにらみ答えた。
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