私の婚約者が、記憶を無くし他の婚約者を作りました。

霙アルカ。

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第一章。

悪夢。

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体中が痛くて、、痛くてたまらない。

逃げる時にぶつけたり、転んで怪我をしたのだ。

最初よりマシになったとはいえ、痛みは中々消えてくれない。

でも、ルルノアは痛みなんて気にしてられなかった。

自分のせいで、大好きなリヴェルが危ない目にあってるかもしれない。

ルルノアよりもっともっと酷い怪我をしてるかもしれない。

そう思うと居ても立っても居られなかった。

ルルノアの父も母もルルノアを監禁状態のように部屋に閉じ込め部屋から出してくれない。

だから、ルルノアは最終手段として、ベランダにカーテンを結びつけ、カーテンを伝って下に降りた。

途中手が滑り、あと少しというところで地面に落ちた。

そのせいでドレスは少し破れ、なんなら膝からは血が出ている。

そんな見窄らしい姿をしたまま、ルルノアはただただ歩いた。

馬車を使うと逃げ出したことがバレてしまうため、必死で愛する人の元へと向かうのだ。

馬車で行けばすぐの距離にあるリヴェルの屋敷は歩いて行くには少しだけ遠いい。

痛む足を引きずりながら、ルルノアはリヴェルの屋敷へと向かうのだ。

リヴェルが「頑張ったね、もう大丈夫だよルル。」そう言って抱きしめてくれるのを想像し、ルルノアは笑みを作る。

そして、リヴェルの屋敷へと着いた。

ルルノアの家の近くに住みたいとのリヴェルの申し出で立てられた屋敷は、14歳の男の子が住み出すにはとても大きすぎるとルルノアは当時思った。

なんと言っても、男爵家のルルノアの家2個分くらいあるのだ。

大きなリヴェルの屋敷で、2人は隠れんぼや探検など様々な事をした。

思い出すだけで、胸がギュゥッと苦しくなる。

「会いたい、、、会いたいリヴェル。」

早く、ギュッと抱きしめて。

そんな思いで、扉についたノッカーを強くギュッと握りしめ、ルルノアは「ふぅっ。」と大きく深呼吸した。

そして、ゴンゴンっと二度ノッカーを扉に打ち付ける。

すると、パタパタと急いでこちらに向かってるであろう、足音が聞こえてきた。

「はーい、どちら様でしょうかー。」

少し遠くから聞こえるその声をルルノアは知っている。

ルルノアとリヴェルと一緒になって遊んでくれた、この屋敷の次女イノである。

久しぶりに聞いたその声にルルノアは嬉しくなり笑みを作るが、扉の前に立つルルノアを見たイノは顔面蒼白である。

「イノ!!会いたかったわ!あのね、リヴェルに会わせてほしいの。」

ギュッと両手を合わせ願うが、イノは壊れた人形のように首を振った。

「だっ、駄目です。ルルノア様はリヴェル様にはお会いしては駄目です。」

いつも優しいイノは、ルルノアの言う事を何でも笑って聞いてくれた。

ルルノアの小さなわがままをどれも許してくれたのだ。

なのに、リヴェルに会えないなんて、意味がわからなかった。

「イノ??どうして、リヴェルに会っては駄目なの?私のお父様やお母様に言われたの?」

「いいえ、、ルルノア様。そうではないのです。」

「なら、どうして??」

ルルノアはここまできて引き下がる気はなかった。

リヴェルの屋敷には何度も来たことがあるから、案内なんてなくても大きすぎるこの屋敷で迷子にならない自信しかない。

「駄目です。駄目なのです。」と繰り返すイノに「なら、、足の手当てだけしてほしいの。」
そう言って、くる途中にできた、血だらけの足を見せた。

すると、イノは「あぁ、、なんて可哀想にルルノア様。すぐに手当てするので、こちらでお待ちください。」と 屋敷の中に入って行った。

ルルノアはイノがいなくなるのを見届け、屋敷の中へと足をすすめる。

自分の家のように、ルルノアはリヴェルの部屋へと迷う事なく向かうのだ。

広すぎる屋敷でも、ルルノアにとってはもう何度も来た場所だ。

暫く歩けばリヴェルと木に書かれたプレートがついている部屋の前にルルノアは到着した。

そのプレートはルルノアとリヴェルが2人で作った物である。

その為、プレートの右下に小さくよく見ないとわからない程の小ささで、『ルルの部屋。』と書いてあるのだ。

リヴェルにも内緒で書いたので、きっと本人も気づいてないだろう。

ルルノアはノックも忘れ、勢いよくその扉を開けた。

「リヴェル!!」

勢いよく扉を開け、リヴェルの名を呼ぶ。

ノックなんてしたことが無い。

リヴェルはいつもいきなり入ってきたルルノアを、「わぁ、びっくりしたなぁルル。」と言って優しく撫でるのだ。

だから期待してた。

リヴェルには怪我一つなくて、いつもみたいに笑ってくれると期待してた。

だが、ルルノアの期待は直ぐに壊れる。

「、、、、ビニカ、彼女は?」

部屋の中のベットに横たわるルルノアの大好きな人が言った。

その口から出るのは、自分でない女の人の名前。

「あら、、、先程もお話ししたあの方なのですが、、まぁお部屋まで入ってきてしまったの?」

そう言ってプラチナブランドの髪を揺らした、少女が私に向かって言った。

驚いた顔をしながら、眉を下げ困った表情をするその少女をルルノアは知っている。

ルルノアとリヴェルと同じ学校に通う、伯爵令嬢ビニカ・ローレンである。

ルルノアにいつも小さな嫌がらせをしており、リヴェルに何度も嗜められていた少女だ。

何故、、そんな相手がここにいるのか。
ルルノアは理解ができないでいた、

「あぁ、、ビニカに酷い事をしたと言う。ここまで来て何がしたい?その怪我を見せて私の気でも引きたいのか?」

リヴェルから冷たく言い放たれる言葉に、ルルノアはついに心を打ち砕かれた。

ルルノアは、リヴェルの事だけを考えて生きてきた。

会えない日々も、ずっとずっとその大好きな声で名前を呼ばれるその日を楽しみに生きてきた。

「リヴェル様、、あまり強く言わないであげてください。」

しおらしく薄らと涙を浮かべるビニカは誰が見ても被害者である。

「おいで、、ビニカ。」

リヴェルがビニカに腕を伸ばした。

「やっ、、、、。」

「辞め、ら、私のリ、、に触れ、で。、、や、、やめ、、て。」

ルルノアの声にならない声は、話す前に消えて行く。

ポロポロと涙がこぼれ落ちる。

ビニカはリヴェルの元に近づくと、リヴェルはビニカの頬を優しく撫でたあと、ギュッとその体を抱きしめた。

その光景を見て、呆然と立ち尽くすルルノアを見るやいなや、ビニカはニッコリと微笑んだのであった。

ルルノアは思う。

悪夢なら、、、とっとと覚めてくれ。。と。
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