私の婚約者が、記憶を無くし他の婚約者を作りました。

霙アルカ。

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第一章。

困惑。

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最近、ルルノアの靴がよくなるなる。

探せば大体ゴミ箱の中に捨ててあるからいいのだが、誰がやっているかもわからない嫌がらせにルルノアは少し困っていた。

入学して一月経つが、ルルノアはまだ仲が良いと言える友達もいないため、相談できる相手もいない。

友達はいないが、唯一ルルノアが気を遣わずに話せるようになったのは、入学早々失礼な態度をとってしまった、リヴェルとリヴェルの側近として入学したホルンくらいである。

2人は毎日ルルノアの元に飽きもせずにやってきた。
まあ、ホルンに関してはリヴェルに引き連れられ、嫌々という感じではある。

「ルル、最近は生徒達の間でネクタイを交換するのが流行っているらしいよ。ルルはネクタイをつけてないから、私が準備しといたからね。」

そういうリヴェルの手には、緑色と赤色のネクタイが2本握られている。

魔法学校では、学年により決められた色を見に纏う。

新入生は決まって赤色。

それより上の学年は、その年によってどの色になるかが変わる。

新入生のルルノアは勿論赤色、一つ上のリヴェルの今年の色は緑だった。
必ずリボンやネクタイをしないといけないわけではないが、している者の方が多いいのは確かである。

学校から指定で渡される真っ黒なワンピースだけでは、あまりにも地味なため、女子生徒は特にリボンやネクタイを付けるのだ。

ルルノアも他の生徒の首元に着いた、リボンやネクタイを羨ましく思っていたが、ルルノアが家を出る際、用意されたのは教材とワンピースだけだったのだ。

「ほら、ルル。こっちを向いて。」

リヴェルはルルの腕を掴み、自分の方へと引き寄せた、そしてルルノアの細い首にリヴェルの少し冷たい手が触れた。
冷たさからかドキンっと一瞬胸を握り締められるような感覚をルルノアは感じながら、リヴェルの手を掴むと自分の首から引き離した。

「貰えないわ、、リヴェル。」

リヴェルの体を押し返し、首を振ればリヴェルは少し眉を下げ悲しそうな顔をする。

ルルノアはそんな顔をさせたいわけではない。

リヴェルからはあの日、何かよくわからない紙にサインをさせられたあの日から、いくつものプレゼントを貰ってるのだ。
気を遣わずに話せる中になったとはいえ、これ以上物を貰うことにルルノアは気が引けた。

「なら、貸すということにしようルル。」
だが、リヴェルはルルノアの言葉など無視し、ルルノアの首元に緑色のリボンをつけた。

貰うのではなく、かすと言われればルルノアはそれ以上断る事はできない。

深緑色のリボンは新入生が付ける赤よりも、大人っぽさをかもしだしている。
真っ黒なワンピースは、リボン一つ付けるだけで全然違って見えるのだ。

ルルノアは、嬉しくて少し口角を上げた後、戸惑いから少し眉間に皺をよせた。

「どうして、こんなに良くしてくれるの?」

男爵令嬢のルルノアに優しくしても何のメリットもないことくらい、ルルノアにだってわかる。

「ルルが好きだからだよ。」

リヴェルは赤いネクタイを自分の首に巻きながら、それを当たり前の事のように言うものだから、ルルノアは頬を赤らめ、俯いた。

ルルノアには、わからない。

愛情の返し方を。人に愛された事がないため、その言葉をどう受け取ったらいいのかがわからない。

「私には、、何もないわ。私の何がいいかもわからないし、同じだけの気持ちもきっと返せないわ。」

だって、愛された事がないんだもの。。そう続く言葉は、言わないでおいた。

「好きな気持ちを返してほしいなんて私は思ってないよ?ルル。」

「私は男爵家の娘だから、リヴェルに何も上げることだって出来ないわ。」

そういえば、「ルル以外に欲しいものなんてないよ?」と返される。

ルルノアは困った。
ルルノアですら、自分を好きでいるメリットを見つけれないのに、何でこんなにもリヴェルは自分を好きだと言うのかわからないから。

ルルノアを好きでいても、リヴェルには何もメリットがないと分かってるため、その言葉が嘘でないのもわかる。

だから、余計に困ってしまう。

「顔だって可愛いわけでないし、スタイルだって良くないのよ?」

「顔もスタイルもルル程素敵な人はいないよ。」

少しでも自分に対する否定的な言葉を言って欲しいのに、リヴェルからはルルノアを好きだと言う感情しか伝わってこない。

「好きになりたくないの。」

「好きになってルル。誰よりも何よりも大事にするから。」

ルルノアは知っている。

大切な物を奪われる辛さを。大切な者に裏切られる辛さを。

だから、好きになんてなっては駄目。なりたくないと思うのに、ルルノアの胸だけはドキドキと煩く、彼が好きだと伝えてくるのを、必死で気づかないふりをするので精一杯であった。







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