そんなに義妹がいいのですね?さようなら、あなた。

nanahi

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35 最後の鉄槌

夫やモニカ母娘に見事打ち勝ったルイーゼだったが、ダミアンにはさらなる転落が待っていた。

家族会合の後、ルイーゼが書斎で淡々と離縁の手続きを進めていた時のことだった。

「離縁するのはわかった……。けれど俺にも財産分与はあるんだろう?夫婦で共同事業を営んできたんだから」

ダミアンはお金の心配に突き動かされ、不安げにルイーゼの顔を覗き込んだ。

「ええ。養鶏場の建物の権利はあなたにありますわ」
「そっ、それならお前がいなくなっても、養鶏場の利益は俺に入るということだな!?」

ダミアンは現金なほど急に活気づき、だらしなく顔をほころばせた。

本当に、調子のいい人ね……。

「ええ、そうですわね。建物を売れば、いくらかのまとまったお金にはなるでしょう」
「は?いや、売るわけないだろう。あそこには鶏がいるんだからな」
「まあ……!あなたったら」

ふふふ、とルイーゼはおかしくなって、つい吹き出してしまった。

「な、何がおかしいんだ!?」

夫は何もわかっていない。
受勲式の際、陛下から賜った文書には極めて重要な条文が記されていた。
あんなに「読んでほしい」と頼んでも、見向きもしなかった夫は知らないのだ。
そこに、どれほど残酷で、かつ慈悲深い決定が記されていたかを──

ルイーゼは妻が笑った理由がわからず呆然と立ち尽くす夫へ真実を突きつけた。

「以前、昇爵の折に陛下から頂いた文書には、こう記されております。『養鶏場の建造物は夫ダミアンに。だが、ブランド鶏そのものは妻ルイーゼにその全所有権を認める』と」
「建物は俺……ブランド鶏はお前に……? ということは、まさか」

ここでようやく、ダミアンは事態の致命的な意味に気づき血の気が失せた。

「嘘だろ!?つまり、ブランド鶏から生じる収益は、俺には1リルも入らないのか!?」
「そういうことですわ」
「ひいっ……!」

ダミアンは泡を食ったように取り乱し始めた。

ブランド鶏は、ルイーゼが五年もの歳月をかけ、何百通りもの交配実験を経てようやく生み出した奇跡の結晶だ。国王夫妻はその献身を正当に評価し、無能な夫には「器(建物)」を、功労者である妻には「中身(鶏)」を与えるという、これ以上ないほど公平な裁定を下してくださっていたのだ。

ルイーゼは実家の領地に新たな鶏舎を建て鶏を移管しさえすれば、明日からでも事業を再開できる。

この取り決めは王妃様が強く陛下に進言してくださったと聞いているわ。
王妃様は私たちがいつかこうなることを予見されていたのかしら。
本当に畏るべきお方だわ。感謝申し上げないと──

「ルイーゼ!俺はお前なしでどうやって生きていけばいいんだ!?あの天国のような日々はもう二度と戻ってこないというのか!」

愚かな夫。
私はこんな男のために尽くしてきたのか。

頭を抱えて震える夫を見下ろし、ルイーゼは冷ややかにため息を吐いた。もはや同情の欠片もない。これからは自分の力でせいぜい地を這って生きていけばいい。



翌日、ダミアンにはさらなる鉄槌が下った。

「ダミアン・パシー侯爵!貴様を実の両親に対する殺人未遂容疑で逮捕する!」

王都警察の紋章が押された令状を掲げ、兵たちが屋敷へとなだれ込んできたのだ。

「は?な、なんのことだ!?知らない、俺じゃない!あんなに暗かったんだから顔が見えるはずがないだろう!!」

語るに落ちるとはこのことだ。自ら犯行現場にいたことを証明するような喚き声を上げ、ダミアンは無様に暴れた。

「無駄な抵抗はやめろ。目撃者が複数出ているんだ!」
「離せ! ルイーゼ、助けてくれ!ルイーゼ──ッ!!」

やはり、あなたが犯人だったのね……。

連行されていく哀れな男の背中をルイーゼは虚無感とともに見送った。優秀な王都警察は、緻密な捜査によってダミアンが両親を棒で殴打した決定的な証拠と証言を掴んでいたのだ。

その後、ダミアンは爵位を剥奪されて平民へと落とされ、重労働五十年という事実上の終身刑に処された。

「ルイーゼに会いたい……。俺はなんて馬鹿だったんだ。宝のような妻を、自ら手放してしまった……」

ダム建設の現場で、毎日重い石材を運ぶ苦役に喘ぎながら、ダミアンはかつて慈しんでくれた美しき妻を想って涙を流した。

しかし、どれほど悔いても全ては後の祭りである。愛すべき人を蔑ろにした罪は、あまりにも重かった。

ダミアンが万に一つの可能性にかけ、血を吐くような思いで綴った懺悔の手紙は一度として開封されることなく、ルイーゼのもとから送り返され続けた。ルイーゼはもう二度とダミアンの元には戻らなかった。



同じく共に悪だくみをしていたモニカとローラ母娘も屋敷を追放され、借金まみれの生活へと転落した。実家も没落しており、二人はかつての傲慢な姿を失い、多額の慰謝料返済のため荒れ果てた農地で奴隷のようにこき使われる日々を送っている。

「お母様が悪いのよ!?私を不貞するようにけしかけたからっ!」
「おだまりっ!男にだらしないお前が悪いんでしょうが!!」

手を豆だらけにしながら固い赤土を耕していた二人はストレスから喧嘩を始めた。互いに髪を引っ張り合い、髪を振り乱し、かつての美貌も見る影もない。

「おい、やめんかっ!仕事をサボるな!!」

雇い主の農夫に叱り飛ばされ、無理やり二人は引き剥がされた。

「お母様のせいでまた叱られたじゃない!」
「私のせいじゃないでしょう、このバカ娘がっ!」

それでもまだ二人は口汚く罵り合っている。

「はー。ほんとお前らのような女とだけは結婚したくないな」

無骨な農夫さえ嫌悪するような女に二人は成り下がったのだった。

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