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18 恋
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今日もルアージュが図書館にいるシャロンを迎えに来て、ふたり一緒に帰ることになった。
ルアージュに手を引かれながら歩くシャロン。
とくんとくんとくん──
なぜだ。
心臓がうるさい。
シャロンはルアージュの手の温もりを感じ、ルアージュのよい香りに包まれながら、心臓の早い鼓動に戸惑っていた。
ときおりルアージュがこちらを見て、微笑む。
シャロンは気恥ずかしくて、ルアージュをまともに見れない。
どうなっている。
シャロンの頬がだんだん紅潮してきた。
「ルアージュ様!」
シャロンはたまらず立ち止まった。
「どうした、シャロン?」
ルアージュが振り返る。
「ちょっと、息苦しくて……」
「ごめん、歩くスピードが早かったかな」
「いえ。その」
ルアージュがシャロンの言葉を待つ。
「顔も熱くて。もしかしたら、風邪かもしれません。今日は私のそばにいないほうが」
「それは大変だ」
ルアージュはシャロンの前髪を手で上げて、自らの額をつけた。
「!?!?」
シャロンの顔が火を吹いた。
「ほんとだ、ちょっと熱いな。すぐに医務室に行こう」
ルアージュは心配そうにシャロンを医務室へと送り届けた。
治療が終わったら一緒に帰る約束をし、医務室はシャロンと養護員のサンディ女史だけになった。
「風邪みたいって言ってたけど、痛いところや苦しいところはある?」
サンディ女史がシャロンの額を手で確認したが、平熱のようだった。
「あります。心臓がどくどくと」
「いつから?」
「さっきから」
「さっきって?」
「ルアージュ様が私と手を繋いでから」
サンディ女史は「あら、それって」と微笑んで、口元を手で覆った。
なんてかわいんでしょう。
急にだまってしまったサンディ女史に、
「やはり何かの病気なのでは!」
と、前のめりで聞いてくるシャロンにサンディ女史は言い聞かせるように言った。
「心配しないで。それは病気ではないわ。そうね。まだちょっと理解するまで時間がかかるかもしれないけど」
「??そうなんですか???」
シャロンはそのはっきりしない返答に首を捻るばかりだった。
医務室に迎えに来てくれたルアージュと廊下を歩きながら、シャロンは先ほどサンディ女史に言われたことをルアージュに説明していた。
「病気ではないって?」
「そうなんです。でも最近私の体、おかしいんです」
「大丈夫か?どんな感じに?」
「ルアージュ様に手を繋がれていると、やけに心臓がうるさくなるし、顔は熱くなるし、息も苦しくなるし、どうにも変なのです」
ルアージュはポカンとしている。
「そ、それってつまり、つまりシャロンは僕のこと、す、す、」
「す?酢といえばビネガーですが」
「そっちのすじゃなくて、す、好いて、」
「推定?何を推定すればよいのですか?」
全く噛み合わない。
でも自分の口で説明するのもルアージュは気恥ずかしい。
「ああ、いいんだ、君は何も気にしなくて。今のままで」
「こんな変な私でいいと?」
「うん」
そのままの君が好きなんだ。
ルアージュは心の中で、そうシャロンに語りかけた。
シャロンはルアージュにじっと見つめられ、まただんだん頬を赤らめ、耐えられなくなって下を向いた。
ルアージュに手を引かれながら歩くシャロン。
とくんとくんとくん──
なぜだ。
心臓がうるさい。
シャロンはルアージュの手の温もりを感じ、ルアージュのよい香りに包まれながら、心臓の早い鼓動に戸惑っていた。
ときおりルアージュがこちらを見て、微笑む。
シャロンは気恥ずかしくて、ルアージュをまともに見れない。
どうなっている。
シャロンの頬がだんだん紅潮してきた。
「ルアージュ様!」
シャロンはたまらず立ち止まった。
「どうした、シャロン?」
ルアージュが振り返る。
「ちょっと、息苦しくて……」
「ごめん、歩くスピードが早かったかな」
「いえ。その」
ルアージュがシャロンの言葉を待つ。
「顔も熱くて。もしかしたら、風邪かもしれません。今日は私のそばにいないほうが」
「それは大変だ」
ルアージュはシャロンの前髪を手で上げて、自らの額をつけた。
「!?!?」
シャロンの顔が火を吹いた。
「ほんとだ、ちょっと熱いな。すぐに医務室に行こう」
ルアージュは心配そうにシャロンを医務室へと送り届けた。
治療が終わったら一緒に帰る約束をし、医務室はシャロンと養護員のサンディ女史だけになった。
「風邪みたいって言ってたけど、痛いところや苦しいところはある?」
サンディ女史がシャロンの額を手で確認したが、平熱のようだった。
「あります。心臓がどくどくと」
「いつから?」
「さっきから」
「さっきって?」
「ルアージュ様が私と手を繋いでから」
サンディ女史は「あら、それって」と微笑んで、口元を手で覆った。
なんてかわいんでしょう。
急にだまってしまったサンディ女史に、
「やはり何かの病気なのでは!」
と、前のめりで聞いてくるシャロンにサンディ女史は言い聞かせるように言った。
「心配しないで。それは病気ではないわ。そうね。まだちょっと理解するまで時間がかかるかもしれないけど」
「??そうなんですか???」
シャロンはそのはっきりしない返答に首を捻るばかりだった。
医務室に迎えに来てくれたルアージュと廊下を歩きながら、シャロンは先ほどサンディ女史に言われたことをルアージュに説明していた。
「病気ではないって?」
「そうなんです。でも最近私の体、おかしいんです」
「大丈夫か?どんな感じに?」
「ルアージュ様に手を繋がれていると、やけに心臓がうるさくなるし、顔は熱くなるし、息も苦しくなるし、どうにも変なのです」
ルアージュはポカンとしている。
「そ、それってつまり、つまりシャロンは僕のこと、す、す、」
「す?酢といえばビネガーですが」
「そっちのすじゃなくて、す、好いて、」
「推定?何を推定すればよいのですか?」
全く噛み合わない。
でも自分の口で説明するのもルアージュは気恥ずかしい。
「ああ、いいんだ、君は何も気にしなくて。今のままで」
「こんな変な私でいいと?」
「うん」
そのままの君が好きなんだ。
ルアージュは心の中で、そうシャロンに語りかけた。
シャロンはルアージュにじっと見つめられ、まただんだん頬を赤らめ、耐えられなくなって下を向いた。
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