婚約破棄よ、こんにちは─妹に婚約者と後継の座を奪われた私は氷の辺境伯に溺愛され幸せになりました

nanahi

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3 アルスターの気持ち

信じられないことが起こった。

私に年下の妻ができたのだ。

縁談を探し始めて数年。陛下直々に探してくださっていたのに、これまで手を挙げる者は誰もいなかった。

私の身にまとわりつく氷の呪いが原因だろう。皆私を恐れ、滅多に領地を訪れることもない。そんな私に娘を嫁がせようと考える貴族など見つかる方が奇跡といえた。

諦めて久しかった春、縁談を承諾してくれる家がようやく見つかった。

送られてきた見合い相手の肖像画には、聡明な薄氷色うすらいいろの瞳と白磁のように白い肌の愛らしい令嬢が描かれていた。

断られないだろうか……。

肖像画にときめきながらも、私を不安が襲った。

だが心配は杞憂に終わった。断られることもなく、すんなりと婚礼が執り行われた。私が触れることで花嫁が凍ってしまうと大変なので、お互い時間差で別々に教会に入り、神に結婚を誓うことにした。

そしてついに今日、妻が我が屋敷にやって来ることになった。

「く、クラリス。クラリス……」

私は何度も妻の名前を呼ぶ練習をした。

玄関扉が開き、クラリスがホールに姿を現した。

「……!」

冷気を押し分けるように入ってきたクラリスは白い光を纏って見えた。毛皮のコートに身を包み、朝日のように輝くブロンドの髪が肩に一房かかっていた。アクアマリンのように静かに輝く瞳がどこか神聖に感じられて、しばらく私は妻に見惚れていた。

クラリスと目が合って私は急に恥ずかしくなった。自分に自信がなく、嫌われる前にここから立ち去りたい気持ちになった。

私はねぎらいの言葉をかけたあと、いたたまれなくなってクラリスの言葉を待たずにその場から去った。

初夜など考えられなかった。憧れはあるが、私が触れたものは凍りついてしまうのだ。

大切な妻に直接触れることはできない。ただ、”おやすみ”だけは言いたかった。

執事のロイに伝言を頼んだ。ロイは「かしこまりました」と従順に頭を下げ、クラリスの寝室へと向かった。

代理人を向かわせたとたん、私もクラリスの顔が見たくなってしまった。だって私の妻なのだから。

扉の隙間からこっそり見つめているとクラリスに見つかってしまった。

クラリスはきっと理解に苦しんだだろう。私の行動に怒って「早くこっちに来て」と私を呼んだ。

行きたいけど行けない。
行けるはずがない。

大切な君のそばには。

私は急いで寝室を去りながら、辛い気持ちを押し殺した。



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