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5 スケートデート
毛皮のコートに毛糸の手袋と帽子という完璧な防寒姿でクラリスとアルスターは屋敷そばの湖の前に立った。
「天然のリンクができてる!さすがアルスター様のお力だわ!」
大きな湖は見事に凍っていた。メイドに手伝ってもらいながらクラリスはスケート靴を履いた。隣を見ると、アルスターはスケート靴をメイドから受け取ったあと、自分で器用に靴紐を結んでいた。
アルスター様はメイドに支度を手伝ってもらわないのかしら。
クラリスがふとそう思っていると、支度の終わったアルスターが慣れた動きで氷の上に立った。
よし、私も!
……あれ?
「きゃー!!」
クラリスは氷の上に立った瞬間、勝手に進んでいってしまうスケート靴に驚き、手を振り回しながら大慌てしている。
「だ、大丈夫か……」
手を繋いであげたい。
でも凍ってしまうかもしれないし。
スケートが達者なアルスターは何度もクラリスに手を差し伸べては引っ込める、を繰り返していた。
──<触れるものは凍りつき、息を吐けば雪原が生まれる>──
アルスターは幼い自分に告げた魔女の呪いの言葉が頭から離れなかった。
手袋ごしなら大丈夫なのかな。
アルスターがそう思いついた時。
「きゃーーあああ!!」
「危ないっ!」
ついに転びそうになったクラリスの腰を反射的にアルスターが支えていた。
クラリス──!
すぐ眼前にあるアクアマリンの双眸に釘付けになる。クラリスも目を見開きじっとアルスターを見つめたままだ。
クラリスの両の頬にアルスターの息がかかった。
まずい!!
霜が生まれパリパリとクラリスの頬を霜が駆け上っていく。
ところがクラリスは怖がるどころか、ふっと微笑んだ。
すると驚くべきことに、すうっと霜が溶け消えていった。
え!?
アルスターは目を疑った。触れても、自分の息がかっても、人は凍りはじめ、お湯や火であたためなければ凍死してしまうのだから。
なぜだ!
どうして凍らない??
いや、凍らないわけではなかった。息がかかった瞬間、クラリスの頬は凍ろうとしていた。
だがその後、呪いの力が何かによって押し返されるように消えていった。
アルスターが驚愕していると、クラリスが静かに目を瞑った。
え。
クラリスはそっと顎を上げた。
え。
これって。
クラリスは口付けを待っているようだった。
ええええええ!!!!
目を瞑っても一向に何も起こらない。クラリスはうっすらと目を開けた。
「あれ?誰もいない──ええっ!」
アルスターは顔を真っ赤にしたまま、氷の上に倒れていた。
「アルスター様、アルスター様しっかり!」
目の前のアルスター様が素敵すぎて、ついチャレンジしてみたんだけど。
積極的過ぎたかしら……。
冷や汗をかきながらクラリスは倒れたままの赤い顔の夫を眺めた。
こんなに美丈夫なのに、もしかしてウブなのかしら?
クラリスはついアルスターを「可愛い」と思ってしまい微笑んだ。
「天然のリンクができてる!さすがアルスター様のお力だわ!」
大きな湖は見事に凍っていた。メイドに手伝ってもらいながらクラリスはスケート靴を履いた。隣を見ると、アルスターはスケート靴をメイドから受け取ったあと、自分で器用に靴紐を結んでいた。
アルスター様はメイドに支度を手伝ってもらわないのかしら。
クラリスがふとそう思っていると、支度の終わったアルスターが慣れた動きで氷の上に立った。
よし、私も!
……あれ?
「きゃー!!」
クラリスは氷の上に立った瞬間、勝手に進んでいってしまうスケート靴に驚き、手を振り回しながら大慌てしている。
「だ、大丈夫か……」
手を繋いであげたい。
でも凍ってしまうかもしれないし。
スケートが達者なアルスターは何度もクラリスに手を差し伸べては引っ込める、を繰り返していた。
──<触れるものは凍りつき、息を吐けば雪原が生まれる>──
アルスターは幼い自分に告げた魔女の呪いの言葉が頭から離れなかった。
手袋ごしなら大丈夫なのかな。
アルスターがそう思いついた時。
「きゃーーあああ!!」
「危ないっ!」
ついに転びそうになったクラリスの腰を反射的にアルスターが支えていた。
クラリス──!
すぐ眼前にあるアクアマリンの双眸に釘付けになる。クラリスも目を見開きじっとアルスターを見つめたままだ。
クラリスの両の頬にアルスターの息がかかった。
まずい!!
霜が生まれパリパリとクラリスの頬を霜が駆け上っていく。
ところがクラリスは怖がるどころか、ふっと微笑んだ。
すると驚くべきことに、すうっと霜が溶け消えていった。
え!?
アルスターは目を疑った。触れても、自分の息がかっても、人は凍りはじめ、お湯や火であたためなければ凍死してしまうのだから。
なぜだ!
どうして凍らない??
いや、凍らないわけではなかった。息がかかった瞬間、クラリスの頬は凍ろうとしていた。
だがその後、呪いの力が何かによって押し返されるように消えていった。
アルスターが驚愕していると、クラリスが静かに目を瞑った。
え。
クラリスはそっと顎を上げた。
え。
これって。
クラリスは口付けを待っているようだった。
ええええええ!!!!
目を瞑っても一向に何も起こらない。クラリスはうっすらと目を開けた。
「あれ?誰もいない──ええっ!」
アルスターは顔を真っ赤にしたまま、氷の上に倒れていた。
「アルスター様、アルスター様しっかり!」
目の前のアルスター様が素敵すぎて、ついチャレンジしてみたんだけど。
積極的過ぎたかしら……。
冷や汗をかきながらクラリスは倒れたままの赤い顔の夫を眺めた。
こんなに美丈夫なのに、もしかしてウブなのかしら?
クラリスはついアルスターを「可愛い」と思ってしまい微笑んだ。
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