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13 初めての口付け
なんて素敵なの……。
クラリスはこれまで以上になぜかアルスターが眩しく感じ、ときめきが止まらなかった。
一緒に食事をとっている時も、ついアルスターをじっと見てしまっていた。アルスターと目が合うたびにクラリスは恥じらって頬を赤らめた。
しばらく離れていたことでクラリスの心は一途にアルスターを求めていた。アルスターもそのことを心のどこかで感じ取っていた。
二人は深く想い合っていた。けれども氷の壁がアルスターを臆病にしていた。
悲しいことに、アルスターは家族や使用人以外で、他人である誰かとこれほど長い時間を一緒に過ごしてきた経験がなかった。
クラリスは優しいが、何かの拍子に私を嫌いになってしまうかもしれない。
ずっとそばにいたいはずなのにアルスターはそんな考えに囚われていた。
結婚して二ヶ月が経っていたが、二人の寝室は未だ別々だ。
「おやすみ、クラリス」
「おやすみなさい、アルスター様」
おやすみの挨拶のあと、それぞれの部屋に入りベッドで眠りにつく。だがクラリスの心は叫んでいた。
一人は嫌……!
いつものように扉を閉めようとしたアルスターの手をクラリスが止めた。アルスターが驚いてクラリスを見た。
硬く結ばれていたその小さな薔薇の唇が開かれた。
「どうか、このままご一緒に……」
「え……!?」
クラリスの気持ちを察したアルスターは目を見開く。クラリスのかすかに震える手がアルスターの手を離すまいと力を込めている。
「だ、だが私は──────」
月の光に照らされ瞳を伏せたままのクラリスが、とてもか細く、いじらしく見えた。
クラリスは精一杯の勇気を振り絞って、自分に声をかけてくれたのだ。
この手を離してはいけない。
強烈な引力を感じ、アルスターは思わずクラリスを扉の中に引き入れた。
ぱたん。
扉を閉じるとアルスターは無言でクラリスと向かい合った。
* * * * * * *
月夜の静寂にふたつの影。
ネグリジェ姿の私とアルスター様が静かに向かい合う。
アルスター様の星屑をたたえたような銀眼が真っ直ぐに私を見つめる。
私はうっとりとアルスター様の瞳を見つめ返す。
アルスター様が私の頬に恐る恐る触れる。とたんに私の頬に霜が生まれ、ピキピキと凍り始める。
はっとしたようにアルスター様はその手を離そうとする。
「怖がらないで……」
私は懇願するように囁く。
私がふうーっと長く息を吐くと、凍り始めていた私の頬から徐々に霜が消え去っていく。
アルスター様は決意した瞳で、もう一度私の頬に手を添える。
私たちは互いに惹かれあうように少しずつ近づいていく。
私は目を閉じる。
私の唇にアルスター様の唇が、静かに重なった。
クラリスはこれまで以上になぜかアルスターが眩しく感じ、ときめきが止まらなかった。
一緒に食事をとっている時も、ついアルスターをじっと見てしまっていた。アルスターと目が合うたびにクラリスは恥じらって頬を赤らめた。
しばらく離れていたことでクラリスの心は一途にアルスターを求めていた。アルスターもそのことを心のどこかで感じ取っていた。
二人は深く想い合っていた。けれども氷の壁がアルスターを臆病にしていた。
悲しいことに、アルスターは家族や使用人以外で、他人である誰かとこれほど長い時間を一緒に過ごしてきた経験がなかった。
クラリスは優しいが、何かの拍子に私を嫌いになってしまうかもしれない。
ずっとそばにいたいはずなのにアルスターはそんな考えに囚われていた。
結婚して二ヶ月が経っていたが、二人の寝室は未だ別々だ。
「おやすみ、クラリス」
「おやすみなさい、アルスター様」
おやすみの挨拶のあと、それぞれの部屋に入りベッドで眠りにつく。だがクラリスの心は叫んでいた。
一人は嫌……!
いつものように扉を閉めようとしたアルスターの手をクラリスが止めた。アルスターが驚いてクラリスを見た。
硬く結ばれていたその小さな薔薇の唇が開かれた。
「どうか、このままご一緒に……」
「え……!?」
クラリスの気持ちを察したアルスターは目を見開く。クラリスのかすかに震える手がアルスターの手を離すまいと力を込めている。
「だ、だが私は──────」
月の光に照らされ瞳を伏せたままのクラリスが、とてもか細く、いじらしく見えた。
クラリスは精一杯の勇気を振り絞って、自分に声をかけてくれたのだ。
この手を離してはいけない。
強烈な引力を感じ、アルスターは思わずクラリスを扉の中に引き入れた。
ぱたん。
扉を閉じるとアルスターは無言でクラリスと向かい合った。
* * * * * * *
月夜の静寂にふたつの影。
ネグリジェ姿の私とアルスター様が静かに向かい合う。
アルスター様の星屑をたたえたような銀眼が真っ直ぐに私を見つめる。
私はうっとりとアルスター様の瞳を見つめ返す。
アルスター様が私の頬に恐る恐る触れる。とたんに私の頬に霜が生まれ、ピキピキと凍り始める。
はっとしたようにアルスター様はその手を離そうとする。
「怖がらないで……」
私は懇願するように囁く。
私がふうーっと長く息を吐くと、凍り始めていた私の頬から徐々に霜が消え去っていく。
アルスター様は決意した瞳で、もう一度私の頬に手を添える。
私たちは互いに惹かれあうように少しずつ近づいていく。
私は目を閉じる。
私の唇にアルスター様の唇が、静かに重なった。
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