捨てられた私が今度はあなたを捨てる

nanahi

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6 妊娠発覚

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失意のエルザが実家に戻って一月ほどが経った。エルザはいつ屋敷を出て行くように言われるかわからない不安の中、日々を頼りなく過ごしていた。

そんなある日のことエルザは食卓に運ばれてきたスープの匂いでうっと口を塞いだ。

「どうしたのだ、エルザ。嫌いな野菜でも入っていたか」
「いえ、そういうわけでは……」

込み上げるような吐き気にエルザは困惑した。むしろ今日のスープはエルザの好物でいつもならお代わりをするほどだった。思い当たったポーラがあっと急に立ち上がった。

「エルザ……あなたまさか」

「ん?」と侯爵が妻を見上げる。

「お腹に子どもがいるんじゃ……」
「なにっ!?」

ふたりがエルザを凝視した。スープをさげようとしていたメイドがびくっとその手を引っ込めた。

「……え、子ども……?」

エルザは先日15になったばかりでまだ幼かった。エルザはまさかと思い同時にもし本当に子どもができていたらどうしようと不安でたまらなくなった。

すぐに医師の診察を受けた結果エルザがやはり妊娠していることが判明した。医師から結果を聞かされたエルザは突然泣き出した。

きっとこの屋敷を追い出される。
私は身重の身体でどうやって生きていったらいいのだろう。

グレイの腕に頼って生きてきた自分には何の技術も取り柄もない。そう思うと恐怖で頭がいっぱいになりエルザの目から大粒の涙が次々と溢れていた。

「あなた……」

結果を知ったポーラは侯爵を見つめ固まったままだ。侯爵は視線を落としたまましばらく押し黙っていたが顔を上げてエルザを見た。

「授かった命だ。この屋敷で産みなさい」

エルザは父の意外な言葉に驚いた。ほっと胸を撫で下ろしつつも産んだ後赤ちゃんはどうなるのかは怖くて聞けなかった。

侯爵とポーラにとってエルザがみごもったことは戸惑いであった。だが同時に姉夫婦の死により失ってしまった初孫への悲しみに対する慰みにもなっていた。

それに本来侯爵はエルザを可愛がっていた。それなのに家のことや常識を考えず平民との愛にこだわる娘を厳しく突き放したのは深く愛するがゆえの反動だった。みごもり途方に暮れ泣く愛娘を侯爵が放っておけるはずもなかった。

「これも運命だろう」

そう言って侯爵はエルザの子を守ろうとそっと妻に告げた。




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