許したと思っていたのかしら?──学園に精霊のアイス屋さんを開いた伯爵令嬢

nanahi

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14 ハウエル殿下

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ロバート様が私に駆け落ちを持ちかけたことを誰かに知られてしまったようです。

そしてそれが問題となりました。隣国の王族が婚約を申し込もうとしている相手に駆け落ちを持ちかけるなどテート王家に楯突く行為と見なされたのです。

隣国テートに配慮したリーデルン王家から厳しい叱責を受け、ロバート様とお父様のシュタット伯爵が難しい立場に立たされているという噂が私の耳にも入って参りました。

あれからロバート様も謹慎を命じられたのか学園に姿を見せていませんでした。


そんな中、ハウエル殿下が閉店後、店に立ち寄られました。

「あの。こんなことを申し上げて畏れ多いのですが……ハウエル殿下に折り入ってお願いがございます。」
「何だい?初めてだね。君からお願いをされるのは。」

殿下は何故かうきうきしながら私の言葉を待っておいでです。

「ロバート様の件です。わたくしに駆け落ちを持ちかけたことでシュタット伯爵家が難しい立場に立たされていると聞いております。どうか穏便に済ませることはできないでしょうか?」

私は過去に辛い思いをさせられたとはいえ、最近のロバート様はそのことを反省されておりました。私はそのような方を追い落とすようなことは望んでいませんでした。ハウエル殿下は私のお願いを聞いてすっと真剣な顔に戻られました。

「僕が許せなかったんだよ。君をないがしろにした男がまた君に言い寄るなんて。」

え、私はハウエル殿下を見上げました。

「事を大きくしたのは僕なんだ。ロバートをこらしめてやりたくてね。」

ハウエル殿下は私に茶目っ気たっぷりにウインクをされました。

「でも君がいいのならこの件は引っ込めよう。」
「感謝いたします。」

私はほっといたしました。テート王家の力は強大です。リーデルン王家と軍事同盟を結ぶ仲で、テート王家に睨まれた者はリーデルン王国でも肩身狭く生きなければならないといわれておりました。

「ただし条件がある。」
「条件?」

ハウエル殿下は私の目を覗き込むようにしておっしゃいました。

「今度の日曜、僕とデートをすること。」
「デート!?」

つい大きい声をあげてしまい私は慌てて口を塞ぎました。離れた場所で控えている殿下の従者に聞かれてしまったのではと心配になりました。

「えと……あの……。」

戸惑う私に殿下は「え、嫌だったかな?」と益々私の顔を覗き込んで参ります。殿下の美しい銀の髪がさらりと揺れました。

「いえ、その、わたくしはかつて婚約破棄をされておりますし。」
「そんなこと問題ではないよ。僕は全く気にしないし、君が退学処分になってしまった理由についても僕は信じていない。君はそんなことをする令嬢では決してない。」

口籠る私に殿下は強い目を向け、はっきりとそうおっしゃいました。

殿下とお話するようになったのはつい二ヶ月前からです。殿下からコラボを持ち掛けられ提携の打ち合わせを重ねたとはいえ、私のことを昔からご存じなわけではありません。

それなのに殿下は”君はそんなことをする令嬢では決してない。”と強いお言葉をくださいました。

「わたくしを、信じてくださるのですか……?」
「数回会えばわかる。僕は将来テート王国の王になる身だ。人を見る目は持っているつもりだよ。」

私は感極まり目から涙が溢れ始めました。辛かったあの日々を思い出し、涙を堪えることができませんでした。

誰もが敵で、誰もが私を笑い、誰もが信じてくれなかった──

「うう……。」

私は久々にこんなに涙を流しました。

「おいで。」

ハウエル殿下は私をそっと抱き寄せ背中をポンポンと優しく叩いてくださいました。私は涙が止まるまでの間、殿下の胸の中でただ肩を震わせていました。



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