14 / 24
14 ハウエル殿下
しおりを挟む
ロバート様が私に駆け落ちを持ちかけたことを誰かに知られてしまったようです。
そしてそれが問題となりました。隣国の王族が婚約を申し込もうとしている相手に駆け落ちを持ちかけるなどテート王家に楯突く行為と見なされたのです。
隣国テートに配慮したリーデルン王家から厳しい叱責を受け、ロバート様とお父様のシュタット伯爵が難しい立場に立たされているという噂が私の耳にも入って参りました。
あれからロバート様も謹慎を命じられたのか学園に姿を見せていませんでした。
そんな中、ハウエル殿下が閉店後、店に立ち寄られました。
「あの。こんなことを申し上げて畏れ多いのですが……ハウエル殿下に折り入ってお願いがございます。」
「何だい?初めてだね。君からお願いをされるのは。」
殿下は何故かうきうきしながら私の言葉を待っておいでです。
「ロバート様の件です。わたくしに駆け落ちを持ちかけたことでシュタット伯爵家が難しい立場に立たされていると聞いております。どうか穏便に済ませることはできないでしょうか?」
私は過去に辛い思いをさせられたとはいえ、最近のロバート様はそのことを反省されておりました。私はそのような方を追い落とすようなことは望んでいませんでした。ハウエル殿下は私のお願いを聞いてすっと真剣な顔に戻られました。
「僕が許せなかったんだよ。君をないがしろにした男がまた君に言い寄るなんて。」
え、私はハウエル殿下を見上げました。
「事を大きくしたのは僕なんだ。ロバートをこらしめてやりたくてね。」
ハウエル殿下は私に茶目っ気たっぷりにウインクをされました。
「でも君がいいのならこの件は引っ込めよう。」
「感謝いたします。」
私はほっといたしました。テート王家の力は強大です。リーデルン王家と軍事同盟を結ぶ仲で、テート王家に睨まれた者はリーデルン王国でも肩身狭く生きなければならないといわれておりました。
「ただし条件がある。」
「条件?」
ハウエル殿下は私の目を覗き込むようにしておっしゃいました。
「今度の日曜、僕とデートをすること。」
「デート!?」
つい大きい声をあげてしまい私は慌てて口を塞ぎました。離れた場所で控えている殿下の従者に聞かれてしまったのではと心配になりました。
「えと……あの……。」
戸惑う私に殿下は「え、嫌だったかな?」と益々私の顔を覗き込んで参ります。殿下の美しい銀の髪がさらりと揺れました。
「いえ、その、わたくしはかつて婚約破棄をされておりますし。」
「そんなこと問題ではないよ。僕は全く気にしないし、君が退学処分になってしまった理由についても僕は信じていない。君はそんなことをする令嬢では決してない。」
口籠る私に殿下は強い目を向け、はっきりとそうおっしゃいました。
殿下とお話するようになったのはつい二ヶ月前からです。殿下からコラボを持ち掛けられ提携の打ち合わせを重ねたとはいえ、私のことを昔からご存じなわけではありません。
それなのに殿下は”君はそんなことをする令嬢では決してない。”と強いお言葉をくださいました。
「わたくしを、信じてくださるのですか……?」
「数回会えばわかる。僕は将来テート王国の王になる身だ。人を見る目は持っているつもりだよ。」
私は感極まり目から涙が溢れ始めました。辛かったあの日々を思い出し、涙を堪えることができませんでした。
誰もが敵で、誰もが私を笑い、誰もが信じてくれなかった──
「うう……。」
私は久々にこんなに涙を流しました。
「おいで。」
ハウエル殿下は私をそっと抱き寄せ背中をポンポンと優しく叩いてくださいました。私は涙が止まるまでの間、殿下の胸の中でただ肩を震わせていました。
そしてそれが問題となりました。隣国の王族が婚約を申し込もうとしている相手に駆け落ちを持ちかけるなどテート王家に楯突く行為と見なされたのです。
隣国テートに配慮したリーデルン王家から厳しい叱責を受け、ロバート様とお父様のシュタット伯爵が難しい立場に立たされているという噂が私の耳にも入って参りました。
あれからロバート様も謹慎を命じられたのか学園に姿を見せていませんでした。
そんな中、ハウエル殿下が閉店後、店に立ち寄られました。
「あの。こんなことを申し上げて畏れ多いのですが……ハウエル殿下に折り入ってお願いがございます。」
「何だい?初めてだね。君からお願いをされるのは。」
殿下は何故かうきうきしながら私の言葉を待っておいでです。
「ロバート様の件です。わたくしに駆け落ちを持ちかけたことでシュタット伯爵家が難しい立場に立たされていると聞いております。どうか穏便に済ませることはできないでしょうか?」
私は過去に辛い思いをさせられたとはいえ、最近のロバート様はそのことを反省されておりました。私はそのような方を追い落とすようなことは望んでいませんでした。ハウエル殿下は私のお願いを聞いてすっと真剣な顔に戻られました。
「僕が許せなかったんだよ。君をないがしろにした男がまた君に言い寄るなんて。」
え、私はハウエル殿下を見上げました。
「事を大きくしたのは僕なんだ。ロバートをこらしめてやりたくてね。」
ハウエル殿下は私に茶目っ気たっぷりにウインクをされました。
「でも君がいいのならこの件は引っ込めよう。」
「感謝いたします。」
私はほっといたしました。テート王家の力は強大です。リーデルン王家と軍事同盟を結ぶ仲で、テート王家に睨まれた者はリーデルン王国でも肩身狭く生きなければならないといわれておりました。
「ただし条件がある。」
「条件?」
ハウエル殿下は私の目を覗き込むようにしておっしゃいました。
「今度の日曜、僕とデートをすること。」
「デート!?」
つい大きい声をあげてしまい私は慌てて口を塞ぎました。離れた場所で控えている殿下の従者に聞かれてしまったのではと心配になりました。
「えと……あの……。」
戸惑う私に殿下は「え、嫌だったかな?」と益々私の顔を覗き込んで参ります。殿下の美しい銀の髪がさらりと揺れました。
「いえ、その、わたくしはかつて婚約破棄をされておりますし。」
「そんなこと問題ではないよ。僕は全く気にしないし、君が退学処分になってしまった理由についても僕は信じていない。君はそんなことをする令嬢では決してない。」
口籠る私に殿下は強い目を向け、はっきりとそうおっしゃいました。
殿下とお話するようになったのはつい二ヶ月前からです。殿下からコラボを持ち掛けられ提携の打ち合わせを重ねたとはいえ、私のことを昔からご存じなわけではありません。
それなのに殿下は”君はそんなことをする令嬢では決してない。”と強いお言葉をくださいました。
「わたくしを、信じてくださるのですか……?」
「数回会えばわかる。僕は将来テート王国の王になる身だ。人を見る目は持っているつもりだよ。」
私は感極まり目から涙が溢れ始めました。辛かったあの日々を思い出し、涙を堪えることができませんでした。
誰もが敵で、誰もが私を笑い、誰もが信じてくれなかった──
「うう……。」
私は久々にこんなに涙を流しました。
「おいで。」
ハウエル殿下は私をそっと抱き寄せ背中をポンポンと優しく叩いてくださいました。私は涙が止まるまでの間、殿下の胸の中でただ肩を震わせていました。
61
あなたにおすすめの小説
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている
歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が
ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が
一人分減るな、と思っただけ。
ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。
しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、
イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。
3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された
ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。
「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」
「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
虐げられた聖女が魔力を引き揚げて隣国へ渡った結果、祖国が完全に詰んだ件について~冷徹皇帝陛下は私を甘やかすのに忙しいそうです~
日々埋没。
恋愛
「お前は無能な欠陥品」と婚約破棄された聖女エルゼ。
彼女が国中の魔力を手繰り寄せて出国した瞬間、祖国の繁栄は終わった。
一方、隣国の皇帝に保護されたエルゼは、至れり尽くせりの溺愛生活の中で真の力を開花させていく。
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に
ゆっこ
恋愛
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。
王太子に婚約破棄されたけど、私は皇女。幸せになるのは私です。
夢窓(ゆめまど)
恋愛
王太子に婚約破棄された令嬢リリベッタ。
「これで平民に落ちるのかしら?」――そんな周囲の声をよそに、本人は思い出した。
――わたし、皇女なんですけど?
叔父は帝国の皇帝。
昔のクーデターから逃れるため、一時期王国に亡命していた彼女は、
その見返りとして“王太子との婚約”を受け入れていただけだった。
一方的に婚約破棄されたのをきっかけに、
本来の立場――“帝国の皇女”として戻ることに決めました。
さようなら、情けない王太子。
これからは、自由に、愛されて、幸せになりますわ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる