追放同然で遠国に献上された古代種の姫を王太子が溺愛しているらしい

nanahi

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15 恋煩い

私はこの国に連行されてから、自暴自棄になっていた。

マハ王家は、気が遠くなるほどはるか昔からこの地を守ってきた一族だ。
その祖国を攻められ、国を蹂躙された衝撃と憎しみが、私を投げやりな気持ちにさせていた。

【 翡翠、自決などと恐ろしいことを言わないで頂戴。我が王家は、最後まで民の命を守る務めを負っているのですよ 】

羽虫が伝える母上のお言葉は予想通りのものだった。


ですが、母上、恩も忘れ果てたルヒカンドの者たちまで救わねばならないのですか?


【 マハ王となる者ならば当然です。しかと心得なさい。そして、自分の命も大切になさい。あなたの命は、大事な者の危機を救う時に必ず必要になるのですから 】


大事な者か……そんな者、この国には。

私の涙を隠してくれた王太子の姿が、なぜか頭に浮かんだまま消えなかった。


∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵


恋煩こいわずらいですね」


ガネシュがマール家当主アンダルケにそう報告した。


「なぜあの王女なのだ……!!」


うなだれているブランカを横目に、アンダルケは苦々しく吐き捨てる。


「一等星の間に入ったということは、ブランカが王妃と半ば決まったようなものであるのに、王太子はただの一度も、ブランカを訪ねて来ていないとは!!」


「お前も色仕掛けくらい覚えよ!!」と、アンダルケは貴族らしからぬ提案を涙目の娘にしている。
ブランカは両の拳で破れそうなほどドレスを強く握り、父の言葉に必死に堪えている。

生まれてきてこれ以上の屈辱はなかった。
ブランカは誰もが羨む名家の生まれだ。ブランカの方から話しかけただけで、大抵の男子は舞い上がるほど喜んだ。

それなのに……周囲からの期待を一心に受け、王妃候補として厳しい教育にも根を上げずに頑張って来たというのに。
努力が実らない虚しさと悔しさとが、ブランカの頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。

そうして、その憎悪は王女に鋭い矢のように向けられる。


「ガネシュ、なんとかして頂戴」


屈辱で震える声でブランカは声を発した。


「条件があります」


ガネシュのその言葉にアンダルケとブランカが同時に目を釣り上げる。


「家臣の分際で、と思ってるのでしょうが。こちらにも相応のリスクがありますので」


アンダルケはしばし無言のあと、「言ってみよ」と応じた。


「計画がうまく運んだら、あの王女をください」


アンダルケはあんぐりと口を開けたが、すぐに愉快そうに笑い出した。


「それは傑作だな。魔道の者の妻にでもするのか? お前の好きにするがよい」


ガネシュは一礼すると、空気に溶けるように消えた。


「お父様、よいのですか? あの娘、いっそ殺した方が」

「よいのだ。後になってその方がいいのなら、どうとでもなる」


ブランカはにたりと笑みを浮かべる。


「さすがマール家当主のお父様ですわ」


二人は目を合わせ、示し合わせるように笑い合った。
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